金市場ニュース

ニュースレター(2018年11月2日)米中摩擦激化の懸念で17ヶ月ぶりの高さのドルに押し下げられた金は懸念の後退で下げ幅を取り戻す

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1232.53ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.1%下げ、多少ながら下げたことで、週間での上昇は4週で終えることとなりました。また銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.82ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.9%上昇しています。

今週も17ヶ月ぶりの強さを見せたドルの動きで金相場は動くこととなりました。本日の米雇用統計等イベントも多かった週の相場の動きを日々追ってみましょう。

月曜日金相場はドルが高止まりし、欧州株が反発する中でトロイオンスあたり1230ドル前後を10ドル内で推移することとなりました。

ドルインデックスは96.56と先週金曜日から0.2%上昇していましたが、今月既に1.4%上昇するなど、高い水準を維持していました。

同日アジア株は中国株が引き続き下げることで日経平均や韓国のKOSPIは下げていましたが、欧州株は全般上昇していました。これはイタリアの予算案への懸念が、先週金曜日にS&Pがイタリア国債を格下げしなかったことで同国債利回りが下げドイツ国債とのスプレッドが300を割る等、後退していることも要因の一つとされていました。

そのような中で、市場への影響は限定的であったものの、メルケル首相が州議戦連敗の責任を取り、与党CDU等の党首を退き、2021年に首相及び政界引退することが伝えられていました。

火曜日金相場はドルインデックスが17ヶ月ぶりの高さへと上昇する中、前日の下げ幅の0.7%を広げて一時トロイオンスあたり1220ドルを付けていました。

ドルインデックスが上昇したのは前日ブルームバーグが11月に予定されている米中首脳会議で貿易面での対立を緩和できない場合は、米国が中国からの輸入品で対象となっていないもの全てへ関税を課することを12月初旬までに発表すると伝えたことからでした。

これにより米株が下げ、アジア株も下げて始まりましたが、トランプ大統領がその後フォックスニュースとのインタビューで、対中貿易に関して「素晴らしい取引」を見込むと述べたことから、そして、中国証券当局が市場の流動性を増強する方針を示したことからアジア株価は反発し、欧州株も上昇で始まっていました。

水曜日金相場は世界株価が全般上昇し、ドルインデックスが97を超えて前日の17ヶ月ぶりの高さで高止まりする中で、トロイオンスあたり1212ドルまで2週間半ぶりの低さへ一時下げることとなりました。

株価が上昇していたのは、前日良好な決算が発表されたフェイスブックなどのテクノロジー株が牽引して上昇しているのと、同日発表の米雇用統計の先行指標とも見られているADP全国雇用者数が予想を上回り8ヶ月ぶりの高さとなったこともドルインデックスを押上げ、株価も上昇させていました。

しかし10月は株式市場は月間では大きく下げており、世界株価のインデックスであるMSCI ACWIインデックスは月間で8%下げ、2012年5月以来の下げ幅となっていました。

木曜日金相場は同日ドルインデックスが7月以来の下げ幅を見せる中、今週の下げをほぼ取り戻し、前日の今週の最低値から1.8%上昇と3週間ぶりの上げ幅で、トロイオンスあたり1237ドルへと一時上昇していました。

この間、今週金の頭を押さえていた株価の上昇は継続しており、これは同日トランプ大統領が中国の習近平主席と良い会話ができたとツィートしたことからも、米中貿易摩擦への懸念が後退したことが要因の一つとなりました。

なお、同日は英国のイングランド銀行が金融政策を発表し、政策金利及び資産購入プログラムは維持したものの、今後の利上げペースが多少早くなることが示唆されたこと、また同日英国のEU離脱交渉で金融サービスについて合意されたと主要紙が伝えたことからも、ポンドが対ドル1.5%を超えて上昇していたことも、ドルを弱めることとなりました。

ちなみに、英主要紙が伝えた内容については、EU交渉責任者ミシェル・バルニエ氏がツィートでほぼ否定しています。

本日金曜日は市場注目の米雇用統計が発表され非農業部門雇用者数は25万人と、予想の19万人と前回の13.4万人を上回りました。前回数値は11.8万人へと下方修正しています。また、失業率は3.7%と前回と予想と一致していました。なお、市場注目の平均時給は前年比3.1%と予想と同レベルで前回2.8%から上昇し2009年以来の高さとなっていますが、前月比では0.2%と予想と一致したものの前回0.3%から下げていました。

この発表を受けて金相場はトロイオンスあたり1232ドルへと4ドルほど下げることとなりましたが、影響は限定的となっています。

 

また、金相場を押上げていた株価のボラティリティですが、本日アジアと欧州株は上昇していましたが、米国株は昨日夕方発表されたアップルの決算結果が予想を下回っていたことから、テクノロジー株が下げ、全般下落しています。

 

 

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が今週木曜日までで11.8トン増の760トンと8月24日以来の水準まで増加していたこと。そして、10月は月間で4月以来初めて増加となったこと。

  • 木曜日に米国のベネズエラへの金輸出に対する経済制裁が発動されたこと。

  • 月曜日ロンドン貴金属市場協会が今年11月20日より取引されている貴金属市場のデータを公表するサービスを開始することを発表したこと。

  • 先週末発表されたコメックス金先物・オプションの資金運用業者ポジションは、金相場が中国株の急落による世界同時株安から上昇していた先週火曜日も15週連続でネットショートであったものの、そのポジションは28%減で83トンへと減少していたこと。これは、7月半ば以来の低い水準。また、ネットショートが減少しているものの、ショートポジションは未だ過去10年間の平均の3.6倍で、ロングポジションは過去10年間の平均の69%と、ショートカバーによる価格の上昇していたこと。


  • コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションも先週火曜日に15週連続でネットショートであったものの、そのポジションも36%減の3,298トンと5週連続で2006年6月以来の史上最高値から減少していたこと。


  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者ネットポジションは、先週火曜日に26週連続のネットショートで、そのポジションは43%増の5.8トンとなっていたこと。


  • コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用業者ポジションは先週火曜日にネットロングポジションを22%増加させ、38トンとしていたこと。これは、今年3月18日以来の高い水準。なお、パラジム価格は先週火曜日に前週から5%急騰。


  • 週末のブラジル大統領選では極右ボルソナロ氏が勝利したこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週の最大のイベントは6日に行われる米国の中間選挙となりますが、それと共に7日と8日にはFOMCが行われて8日に米国の金融政策が発表されます。

その他、月曜は日銀の金融政策決定会合の議事要旨、中国のサービス部門のPMI、米国のISM非製造業景況指数、8日木曜日の中国の貿易収支、金曜日の中国の生産者及び消費者物価指数、英国の第3四半期GDP、米国の卸売物価指数とミシガン大消費者信頼感指数等となります。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週英国からのニュースとしては、イングランド・プレミアリーグのサッカーチームのレスターシティ―のオーナーのヴィチャイ・スリヴァッダナプラバ氏が先週土曜日にへリコプターの事故で亡くなったニュースをお伝えしましょう。

ヴィチャイ氏は、レスターシティ―の試合後にスタジアムから離れてすぐに墜落したヘリコプターに乗っていましたが、同乗していた助手二人と操縦士とその友人5人全ての方々の死亡が確認されています。

彼が所有するレスターシティフットボールチームは、2016年に事前予想で優勝の確率は5000分の1とまで見られていた低い前評判を覆してリーグ初制覇をしたことは、ここでも以前紹介させていただきました。

ヴィチャイ氏は、タイの実業家でタイの免税店最大手のキング・パワー・インターナショナルのオーナーで、2010年にレスターシティを3900万ポンド(約57億円)で購入し、2014年にレスターシティーがプレミアリーグへ昇格してからは、3年以内に欧州タイトルを争うチームに強化するために1億8000万ポンド(約264億円)を投入するなどしてレスターシティーをプレミアリーグ優勝へと導いたとのこと。

しかし、レスターシティ―は優勝する前年はプレミアリーグ14位で降格をぎりぎり免れていたことから、また当時の先発チーム報酬合計は推定2200万ポンド(約35億円)でトップチームのマンチェスターユナイテッドの1割以下とも言われていたことから、2016年の優勝は「団体競技の歴史上あり得ない勝利」、「おとぎ話」とまで呼ばれていました。

この優勝に貢献し、現在もレスターシティ―に所属する岡崎慎司選手も今週ツィートで心境をつづり、ヴィチャイ氏の死を悼んでいましたが、ヴィチャイ氏はレスターシティーの地元の多くのチャリティー団体や病院にも寄付をしていたとのことで、サッカーファンのみならず地元の多くの人々が献花に訪れている姿がニュースでは伝えられており、レスターシティ―のスタジアムの周りは花に埋もれています。

レスターシティ―の選手とそのサポーターとそして地元の人々にも、その人柄とチャリティー精神で親しまれ愛されていたヴィチャイ氏のご冥福を心からお祈りしたいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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