ニュースレター(2017年12月15日)1254.60ドル:FRBが利上げしたもののインフレ低迷懸念で上昇し、税制改革法案年内可決観測で戻す
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1254.60ドルと、前週同価格から0.3%と少ないながら2週間ぶりに週間での上げとなっています。
週明け月曜日金相場はトロイオンスあたり1245ドルから1251ドルの狭いレンジで取引されることとなりました。これは、今週市場注目のFOMC後の発表を待つ中の模様眺めの動きからでした。
同日は、ニューヨークの中心部の爆発によって4人がけがをしたことが伝えられていましたが、この市場に与える影響は限定的となりました。
火曜日金相場は、翌日のFOMCを待つ中発表された米生産者物価指数が予想を上回ったことからも、利上げ観測が広がり、ドルが強含みトロイオンスあたり1236ドルと5ヶ月ぶりの低さへ一時下げることとなりました。
しかし、同日ポール米上院議員が「大量の米債務押し上げる歳出法案支持できない」と述べたことが伝えられ、株価が多少上げ幅を失い、金相場も同日の下げ幅を多少取り戻し1240ドルを超えて戻すこととなりました。
水曜日金相場は、FOMCの発表を待つ中狭いレンジでの取引となっていました。しかし、同日発表された米消費者物価指数は、前年比と前月比予想通りでしたが、コアの数値が予想を下回ったことから、金はトロイオンスあたり5ドルほど上昇していました。
その後発表されたFOMCでは予想通り政策金利は、1.25%-1.50%へと0.25%引き上げられましたが、これは既に価格に織り込み済みであったため、金相場はトロイオンスあたり1255ドルまで上昇することとなりました。
また、イエレンFRB議長の記者会見では、ほぼサプライズなコメントはなく、インフレの伸びについて懸念のコメントが出たことからも、多少ハト派的ととらえられた模様でした。
なお、今後の利上げ予想は、2018年が年3回、19年は年2~3回とこれまで通りの見通しを公表しましたが、今回の利上げはエバンスシカゴ連銀総裁、カシュカリミネアポリス連銀総裁の両氏が据え置き主張し反対したことが伝えられていました。
木曜日金相場は、同夜のFOMC発表後の水準トロイオンスあたり1254ドルを推移してましたが、好調な米小売売上高でドルが強含み、若干押し戻されることとなりました。
同日はイングランド銀行と欧州中央銀行が共に金利政策を発表し、イングランド銀行は全会一致で金利と資産購入プログラムを据え置き、欧州中央銀行も金利を据え置き、資産購入プログラムは先月発表された来年1月から300億ユーロへ半減させて9月まで継続することが確認されました。
これを受けて、ポンドとユーロが若干弱含んだものの、ポンドは早い段階でその下げを戻すなど大きな動きとはなりませんでした。
本日金曜日は、昨日夜遅くに米税制改革法案を巡り共和党上院議員数名が不支持を表明し、年内議会通過の見込みが薄れたことから、株とドルが弱含む中上昇して始まっていました。
その後、先の法案への不支持を表明していた議員も最終的には妥協するという観測が広がり、S&Pが史上最高値を更新する水準へ上昇し、ドルが強含む中、ロンドン時間午後3時に金相場はトロイオンスあたり1255ドルまで押し下げられています。
その他の市場のニュース
-
10日に始まったシカゴ・オプション取引所(CBOE)のビットコインの先物は、2018年1月物が1ビットコインで一時1万8850ドルまで上昇するなど、順調な滑り出しとなったこと。 -
原油漏れの修理のため、北海の主要油田のパイプラインの閉鎖を受けて、ブレント原油が2015年6月以来初めて65ドルを越えたこと。
先週金曜日に発表されたコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に金価格がトロイオンスあたり10ドルを超えて下げていた際に、前週比31%下げ435トンと8月8日以来の低い水準へと下げていました。 -
コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは先週火曜日に前週比61%減、重量で史上最大の下げ幅で5300トン下げていました。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日まででは水曜日に1.5キロ増加しています。
ブリオンボールトニュース
「ビットコインはポートフォリオの資産分散目的で保有されるべきか」という英主要経済紙CityAMの記事で、ブリオンボールトの金投資家インデックスが取り上げられてました。
この記事では、ポートフォリオ分散目的では妥当ではないかもしれないが、ビットコインについて学ぶ価値はあるとし、市場の現状として弊社金投資家インデックスによると、金からビットコインへ資金が流出していると取り上げています。
CNBCの「Money Control」番組で、ブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが金相場の見通しについてインタビューを受けています。
ここでエィドリアンは、「過去3年間12月にFRBが利上げを行う前に金相場は下げていた。しかし、2003年から15年間で金相場は11回年初1月に上昇している。中国経済や上げ続けている株式市場への懸念は市場にあることからも、このパターンが繰り返される可能性は高い。インフレの動きとそれに伴うFRBの利上げ観測が今後も金に影響を与えるだろう。」とコメントしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
本日英国では、欧州連合(EU)が本日の首脳会議で、英国のEU離脱を巡る通商協議を来年1月から始めることを承認したことが、トップニュースで伝えられています。これは、先週のロンドン便りでもお伝えした「第2段階」となります。
今週13日には、英国議会で欧州連合(EU)離脱法案が、与党保守党の親欧州派議員の造反で修正に追い込まれるなど、メイ首相は重要な法案で敗北を喫していました。この修正とは、2019年に離脱交渉が終了した段階で、EUとの最終合意を議会採決に付すことを保証するというものでした。
つまりは、メイ政権がEUとの離脱交渉を終えた合意内容を再度、英国議会で採決をしなければならないというものです。これにより、メイ首相の政権基盤の弱さを交渉相手のEUに露呈したことになり、メイ首相、また英国の離脱交渉を進めるにあたっては必ずしもポジティブなものではないことは確かです。
そのようなことからも、メディアは大きく伝えていましたが、昨夜の時事問題を議論する英国BBCの旗艦番組「Question Times」でも、造反した議員がこのディベートに参加していたパネリストや観客に激しく非難されていたこともニュースとなっていました。
ひとまず英国のEU離脱(ブレグジット)交渉は、第2段階への道筋をつけて2017年を終えようとしています。2018年に開始される「移行期間」の交渉後に話し合われる、英国内外を含めて更に複雑な交渉力を必要とする自由貿易協定を、メイ政権が取りまとめることができるのかについては不安は残りますが、英国の中から見た英国のEU離脱交渉の模様を引き続きお伝えしていきたいと思います。