ニュースレター(2017年12月8日)1250.65ドル:米税制改革案の進展や米暫定予算案可決で金は4か月半ぶりの低さへ下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1250.65ドルと、前週同価格から1.9%下げ、4か月半ぶりの低値となっています。
月曜日金相場は、週後半イベント(米雇用統計と米暫定予算の期限)からも狭いレンジでの取引となっていました。
前週金曜日にはロシアゲートへの懸念が再浮上して上昇した金相場でしたが、その後税制改革法案が可決の見通しとのニュースでその上げ幅を戻して終えていました。そして土曜日に米議会上院が税制改革案を可決し、税制改革への期待が高まったことで、同日もドルが強含む中トロイオンスあたり6ドルほど下げて始まっていました。
火曜日金相場は、ドルが上げ米株価が上昇する中、トロイオンスあたり1270ドルを割り一ヶ月ぶりの低さの1263ドルまで下げることとなりました。これは、米税制改革への期待等からですが、サポートとされていた1267ドルを割ったことで更なる売りが出ることとなりました。
水曜日金相場は、ドルが強含む中で一時トロイオンスあたり1261ドルと2か月ぶりの低値を付ることとなりました。
同日は発表されたADP全国雇用者数は19万人と予想の18.5万人を上回ったものの前回の23.5万人を下回っており、相場への影響は限定的となっていました。また、同日トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都として公式に認める方針と伝わり、中東情勢の悪化も懸念されていましたが、この相場への影響も限定的となりました。
木曜日金相場は、ドルが強含む中トロイオンスあたり1244ドルと4か月半ぶりの低さへと下落することとなりました。
これは、サポートラインの1260ドルを割ったことでさらなる売りが出たこと、その後ロンドン時間遅くに米議会のつなぎ予算可決したことが伝えられたこと、さらに税制改革法案の審議が前進していることが要因となりました。
本日金曜日は、市場注目の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数が22.8万人と予想の20万人を上回りましたが、前回数値は26.1万人から24.4万人に下方修正されていました。また、失業率は4.1%と前回と予想と一致していました。
しかし、平均時給2.5%と前回の2.4%を上回ったものの予想の2.7%を下回ったこと等からも、金相場は発表直後にトロイオンスあたり2ドル下げたものの、その後米株価が上げ米長期金利が上げる中、その下げを取り戻しています。
なお、本日は早朝に英国とEUが離脱条件の大筋合意し、通商協議に入ることが伝えられたことから、ポンドが強含みポンド建て金相場が12ヶ月ぶりの低値へ下落していました。
その他の市場のニュース
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木曜日にビットコインが17000ドルを一時超えたこと。 -
シカゴ・オプション取引所(CBOE)のビットコイン先物が、CMEの12月18日のローンチより一週間早く、12月10日にローンチされることが伝えられたこと。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が、先週金曜日にロシアゲートへの懸念で金が上昇していた際に、8.6トン増加していたものの、今週は昨日までで5.4トン減少していること。 -
先週末発表されたコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に15%増加し635トンと過去9週間で最も高い水準となっていたこと。 -
それに対し銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に12%減と2週間連続の減少と、過去7週間で最も低い水準となっていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週はブリオンボールトの金投資家インデックスの11月数値が発表され、多くの主要メディアで取り上げられました。
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日本経済新聞:ビットコイン、金の脅威に、個人投資家が資金を移動
この記事では、ビットコインへの興味が金の需要を減少させている可能性があるとして、ブリオンボールトを英ロンドンを拠点とする金のオンライン取引大手と紹介した上で、11月の新規顧客数が2015年12月以来の低い水準であったこと、そして過去12カ月間に新たに貴金属へ投資した顧客数は過去5年の平均と比べて約20パーセント減ったという分析データを取り上げています。
そして、その背景としてブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュの「顧客は高値圏の米株式市場だけでなく、急伸するビットコインの取引にも流れていた」という解説も紹介しています。
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英主要紙テレグラフ:「ビットコインへの興味が金融危機時の金への興味の3倍に」
ここで、ブリオンボールトを世界最大の金、銀、プラチナ取引のオンラインプラットフォームと紹介した上で、「既存の顧客は金を積み増したが、新規顧客数は大幅に減少している。仮想通貨を巡るメディアの見出しなどが要因の可能性がある。」というブリオンボールトの分析を取り上げています。
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CityAM:「ビットコインが金の輝きを奪う - ブリオンボールトの新規顧客数が20%減」
ビットコインへの注目が高まる中、新たに金を購入する顧客数が2015年に金価格が下げて大きく減少した時以来の低さへと下がっていたことを紹介しています。
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英国主要紙オブザーバー:ビットコインの急騰が金の需要を押し下げる
この記事でも、グーグルの検索でビットコイン購入が急増している中、ブリオンボールトの過去12か月の新規顧客数が20%下落していたことを取り上げています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では、英国のEU離脱交渉の第一段階が合意間近であったことからも、日々トップニュースで伝えられていましたが、本日早朝にEUと英国が離脱条件で大筋合意したことが大きく伝えられています。
今回の合意で英国のEU離脱の道が明確になったのではありませんが、前進したことは確かです。そこで、今回の同意の内容をこれまでの経緯も含めて簡単に整理してご説明しましょう。
英国のEU離脱日程
英国とEUの離脱交渉期間は2年間。2016年6月23日の英国の国民投票結果が出た後、英国のメイ首相は2017年3月29日に欧州連合(EU)基本条約(
大まかな交渉の段階
交渉には2つの段階があり、第1段階は英国離脱の条件への合意。第2段階は将来の貿易関係の合意となります。
第1段階の合意内容
今回はこの第1段階が合意に至り、その内容は、①【離脱清算金】英国政府によると、350億ポンドから390億ポンド(約6兆円)。②【EU市民の権利保障】イギリスで暮らすEU市民とEU域内で暮らすイギリス国民の権利は保障。③【アイルランドの国境問題】北アイルランドとアイルランドの国境に複雑な国境管理は原則避ける。北アイルランドと英国の憲法上と経済上の一体性は保たれる。(具体策は先送り。)
今後について
そして、EU27か国が通商協議入りを認めれば、英国とEUは英国離脱時の緩和措置である「移行期間」の交渉に年明けから入ることとなります。
この移行期間が合意に至らずに交渉期限の来年10月を迎えた場合は、いわゆる「ハードブレグジット」となり、英国がEU単一市場と関税同盟から外れ、世界貿易機関(WTO)
多くの人々は「ハードブレグジット」を避けることを望んでいるようですが、英国のEU離脱を支持する人々の中には、交渉で良い条件を得られないのであれば、「ハードブレグジット」を選択すべきと主張する人々が、メイ政権のボリス・ジョンソン外相やマイケル・ゴーブ環境相などのように、多くいることも確かです。
メイ首相とデービッド・デービスEU離脱担当大臣は、今朝まで48時間休むことなく交渉を続けていたと伝えられていますので、本日はひとまず安堵のため息をついていることでしょう。