金市場ニュース

ニュースレター(2017年11月17日)1284.35ドル:米税制改革の遅延とロシアゲートへの懸念が再浮上し金価格上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1284.35ドルと、前週同価格とほぼ同じ水準となっています。

月曜日金相場は、先週金曜日の大きな下げから緩やかに戻し、トロイオンスあたり1278ドルを推移することとなりました。

先週の下げは、コメックスでの大きな売り注文(約124トン)が出たことがきっかけとなりましたが、同日はドルが多少ながら強含んでいるにもかかわらず、株価が香港を除くアジア市場と欧州市場で下げる中、金は堅調な動きとなりました。

そのような中ポンド建て金相場は、BREXIT関連のEUとの交渉が遅々として進まず、それに加えてメイ政権の閣僚の様々な不祥事からも懸念が高まり、ポンドが弱含む中、金曜日の下げ幅をほぼ取り戻す水準まで上昇することとなりました。

火曜日金相場は、ロンドン時間午前中は長期金利が上昇する中で下落したものの、その後ドルが弱含み、リスクオフの基調で世界の株価が下げ、長期金利が5日ぶりに下げる中、トロイオンスあたり1280ドルを超えて上昇することとなりました。

この背景は、先月史上最高値を続けていた株価の調整が入ることへの懸念、米税制改革の議会審議難航による遅延、また同日発表された中国のデータ(鉱工業生産、小売売上高等)が予想を下回り、コモディティが全般下げていることからでした。

また、先週の金曜日同様に、コメックスでの大量の買い注文(44トン)が入ったことも要因となりました。

水曜日金相場は、前の上げ基調を受け継ぎ、4週間ぶりの高値のトロイオンスあたり1288ドルを付けた後、ロンドン時間午後に発表された好調な米国指標でドルが強含み株価が下げ幅を縮める中、1277ドルまで下落することとなりました。

そして同日その基調が変わったのは、同日発表の米国消費者物価指数が前年比2.2%と予想と前回の2%を上回り、小売売上高も予想を上回ったことがきっかけとなりました。

木曜日金相場は、世界株式が6営業日ぶりに堅調な動きをする中、ドルは多少ながらも強含み、長期金利が上げる中、トロイオンスあたり1275ドルから1281ドルの狭いレンジでの取引となりました。

同日の株価の上昇はこれまでの下げの調整、米大手企業ウォールマート等の決算結果が好調であったこと、米下院で共和党の税制改革法案が可決されたこと等が要因となりました。

本日金曜日の金相場は、欧米株価が下げ、ドルが弱含む中、トロイオンスあたり1290ドルを超えて上昇しています。

この株価の下げは、昨日下院で可決された税制改革法案は、上院では独自案を審議中で、可決に必要な賛成票を確保できるかが不明であること、そしてドルが弱含んだのは、ウォールストリート・ジャーナルが、モラー特別検察官のチームがトランプ陣営に対し、一連のロシア関連キーワードを含む陣営幹部十数人の文書や電子メールを提出するよう求める召喚状を10月半ばに出していたことが伝えられたことからとのことです。

その他の市場のニュース

  • ワールド・ゴールド・カウンシルが今週発表した金のETFの最新分析レポートで、先月末まででその残高が2,347.6トンと今年に入り182.2トンを増加させていたことが明らかとなったこと。
  • 米規制当局への届け出で、世界最大のヘッジファンドのブリッジウォーターが第3四半期に金ETFへの投資を大幅に増加させていたことが明らかとなったこと。
  • コメックス金先物・オプションの資金運用業者の先週火曜日のネットロングポジションが4%増加し540トンとなっていたこと。これは、過去の平均から43%増。
  • 銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは13%増と、7週間ぶりの高い水準で10,180トンとなっていたこと。これは、2006年から記録されているデータの平均の165%増。ドル建て評価額では、銀のネットロングポジションは金の25%を超え4月以来の高さで、過去平均を33%上回っていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週月曜日に0.3トン減少した後木曜日まで変化がなかったこと。
  • 火曜日格付け会社S&Pが、ベネズエラが債務支払を2度滞ったことからデフォルトしたとみなし、格付けを引き下げたこと。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週も英国ではBrexit関連ニュースがトップニュースとして伝えられていますが、今週はロンドンとリオオリンピックの5000メートルと10,000メートル陸上競技で4個の金メダルを獲得したモーファラーがナイトの称号をバッキンガム宮殿で授与したことが伝えられていましたのでご紹介しましょう。

ナイト(及び女性に与えられるデイム)は、中世の騎士階級に由来した称号ですが、現代では騎士団制度に由来するOrder of Chivairy(勲爵士団)と、それに属さないKnight Bachelor(下級勲爵士)があります。

今回ファラー氏が授与された、主に文化、学術、芸能、スポーツ面で顕著な功績があった人々に首相の助言で与えられるナイト(Knight Bachelor)は、エリザベス女王によって年に2度、新年と女王の誕生日に発表され、彼は今年1月にナイトの称号が与えられ、今週その儀式に臨んでいたのでした。

この儀式は、中世の騎士の叙任同様に、エリザベス女王の前に跪いた叙勲者の両肩を女王が儀礼用の剣の平で触れるという形式で行われます。

ファラー氏は、オリンピック以外にも、世界陸上でも5000メートルと10,000メートルで2011年から金と銀メダルを8個も獲得し、今年夏のロンドンの世界陸上を最後に引退をしていましたが、陸上界を含むスポーツに携わる人々の中ではその偉業はかつてないものとの認識されていました。

このロンドン便りでは、今年8月の世界陸上の際にもお伝えしましたが、ファラー氏はソマリアから8歳の時に英国に移住しましたが、中学の時の体育の先生に見出され、陸上で頭角を現し、その陸上界で成し遂げた偉業や、その親しみやすい人柄で英国では高い人気があります。そのようなこともあり、彼のナイト称号を多くのメディアが広く伝えていたのでしょう。

ファラー氏と共に新年にナイト(女性はデイム)の称号を得ていたのは、テニスプレイヤーのアンディー・マリー氏、七種競技でロンドンオリンピックや世界陸上金メダリストのジェシカ・エニス=ヒル氏などです。

ちなみに、日本でこの称号を与えられたのは、ピアニストの内田光子氏、トヨタ自動車会長の豊田章一郎氏、ソニー創業者の森田昭夫氏、ファッションデザイナーの三宅一生氏などとのことです。

引退後は来年のロンドンマラソンなど、長距離レースで引き続きプロとして活動するようですが、今回の授与式で女王陛下にレースを引退した後はどうするのかと聞かれた際に、その後は社会貢献に力を注ぎたいと答えたとのこと。移民の息子として英国で必ずしも裕福ではない家庭に育ちながら、強靭な精神力と弛まない努力で大舞台で常に結果を出し人々に力を与えてきたモー・ファラー氏の活躍を、これからも応援していきたいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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