ニュースレター(2017年8月11日)1286.10ドル:米国と北朝鮮の緊張の高まりで金は2ヶ月ぶりの高さへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1286.10ドルと、前週同価格から2.2%上昇しています。ちなみに、これは金曜日のLBMA金価格のPM価格としては、トランプ大統領就任以来の最高値となります。
週明け月曜日金相場はドルインデックスが先週金曜日に上昇した水準から多少下げる中で、ロンドン時間午後に緩やかに上昇することとなりました。
同日はユーロがドイツの鉱工業生産が予想を下回ったにも関わらず上昇していたことから、またロンドン午後のブラード・セントルイス連銀総裁のハト派的コメントもあり、ドルの頭が抑えられ、金を支えることとなりました。
そのコメントは、「最近のデータでインフレ率目標到達に疑問」、「現行金利水準が短期的に適切な可能性高い」、「最近のインフレデータ、予想外に低い」 などというものでした。
なお同日は、南アフリカのズマ大統領への不信任投票を非公開で実施することが伝えられ、ランドが強含み、プラチナ価格も上昇していました。
火曜日金相場は、ロンドン午後に発表された良好な米経済指標でドルインデックス上昇する中、トロイオンスあたり10ドルほど下落することとなりました。
この経済指標は米JOLT労働調査で、6月の求人件数が大きく上回っていたことから、薄商いの市場を動かしたようでした。
ちなみに、南アフリカ共和国のズマ大統領に対する不信任動議は、反対198票、賛成177票で否決されていましたが、プラチナ価格は引き続き今年4月以来の高い水準となっていました。
水曜日金相場は、前夜高まった朝鮮半島情勢の緊張から、2ヶ月ぶりの高さのトロイオンスあたり1274ドルへと上昇することとなりました。
これは、前夜トランプ大統領の北朝鮮を牽制するコメント「世界がこれまで目にしたことのないような炎と怒りに直面することになる」が伝えられ、北朝鮮は同日グアム島一帯への包囲攻撃を検討していることを明らかにするなど、北朝鮮と米国の緊張が高まり、世界株式が下げる中、安全資産としてドル、円、スイスプランク、米国債とともに、金も買われたことからでした。
奇しくも10年前の同日8月9日は、プランス大手銀行BNPパリバが、米国サブプライムローン関連の証券化された金融商品を保有する3つのファンドの解約を凍結し、短期金融市場の流動性が枯渇した、世界金融危機の予兆的出来事が発生した日でした。
木曜日金相場は、前日に続き、米国と北朝鮮のさらなる緊張の高まりから6月7日以来の高さのトロイオンスあたり1284ドルへと上昇することとなりました。
それは、前日のマティス米国防長官の警告「(北朝鮮の)体制の終わりや国民の滅亡につながる行動を中止すべきだ」に対し、同日北朝鮮は弾道ミサイルを米グアム沖に撃ち込む計画を発表するなど、両国の威嚇がエスカレートしていることからも、世界株式が下げ、金が安全資産としてスイスフランク等と共に買われたことからです。
なお、同日発表された米国生産者物価指数は予想を下回る数値となりました。また、ニューヨーク連銀ダドリー総裁は「インフレ率は、中期的に2%目標に向けて上昇へ」とし緩やかな引き締めを強調したことが伝えられていました。
本日金曜日金相場は、トロイオンスあたり1290ドルを一時越えた後、下落してロンドン時間夕方に緩やかにその下げを戻しつつあります。
本日昼過ぎに発表された市場注目の米国消費者物価指数は予想を下回り、ドルインデックスが弱含む事となりました。そのため、発表直後に金は一時1290ドルを越えたものの、即座に10ドル弱を失い、その後戻しています。なお、CMEのFEDWatchの9月の利上げ予想は本日は0%と前日の5.5%、一月前の12.8%から下げています。
なお、今週緊張の高まりを見せている米国と北朝鮮に関しては、本日トランプ大統領が「北朝鮮が浅はかな行動をとるなら、軍事的解決をとる準備は完全に整っている」とツィッターに投稿し、朝鮮労働党の機関紙は、「生死を分かつ決戦は始まった」とする論評を掲載するなど、落ち着く気配は見られていません。
その他の市場のニュース
-
2007年8月9日のパリバショックから引き起こった世界金融危機以来、金相場と金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高の相関関係を見ると、平均は+0.26、中間値は+0.41ですが、過去22日間は-0.91となるなど、反対の動きを見せていること。 -
先週末に発表されたコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、米雇用統計が発表される前の先週火曜日に63%増加し381トンと、今年6月27日の水準まで戻していたこと。また、ショートポジションは2週連続で35%を越えて減少していたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは金よりも大幅に157%増と、2週連続で増加していたこと。
ブリオンボールトニュース
CNBCのMoneyControl番組でブリオンボールトのリサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュが今後の金相場についてインタビューを受けました。
ここで、エィドリアンは直近ではドルの動きに影響を受けているとし、FRBの利上げへの観測が後退する事によって、昨年のように上昇する可能性があるとし、テクニカルアナリストによると、1260ドルがサポートラインで、夏場これを維持することで、9月からインドの結婚シーズン、中国の旧正月への在庫準備などの需要が高まり、1300ドルを見る可能性もあるとしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週ロンドンでは陸上の世界選手権が先週4日から今週日曜日の13日まで行われており、この生中継がBBCでは継続して行われるなど、かなり盛り上がりを見せています。
昨夜は日本人のサニブラウン選手が男子200メートルの決勝に出場し、史上最年少であることも紹介されていましたが、やはり英国での注目は英国選手となり、特に5000メートルと10,000メートルのダブル(2012年と2016年)オリンピックチャンピオンである英国人のモー・ファラーであるようです。
彼はソマリアで生まれ、8歳の時に父親の住んでいた英国へ移住した時は英語は一言も話せなかったとのこと。その彼は、通っていた西ロンドンの中学校の体育の教師によって才能を見出され、13歳からユースゲームの代表になるなど、瞬く間に頭角を現したのでした。
2010年には10,000メートルで世界記録を破り、2012年のロンドンオリンピックで5000メートルと10,000メートルで優勝して以来、オリンピックと世界陸上の5000メートルと10,000メートルでは現在に至るまで負け知らずとなっています。
彼は、既に先週金曜日に10,000メートルで金メダルを受賞していますが、この世界陸上を終えたら、マラソンへ移行することを発表しているために、明日行われる5000メートルの決勝がトラック競技の最後のレースとなります。
ロンドンオリンピックの5000メートルの決勝では、会場の応援の歓声からの振動でテレビカメラが揺れて、ゴールのイメージが歪んでしまうほどであったとのことですが、この土曜日もまた、モーファンの歓声にオリンピックスタジアムは包まれることとなるでしょう。
お知らせ
ブリオンボールトの日本における正規独占媒介代理店のブリオンジャパンが、今月26日に開催される第6回世界の資産運用フェアに出展し、パネルディスカッションに登壇します。
パネルディスカッションでは、トランプ政権とアメリカ経済の行方から、不動産投資、賢い借り入れと節税方法など、金投資以外にも様々な議題が取り上げられるようです。 |