ニュースレター(2014年4月11日)1318ドル ウクライナ情勢とFOMC議事録が金価格を押し上げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix価格は、トロイオンスあたり1318ドルと1.6%上げています。
週明け月曜日は、前週金曜日の雇用統計後の上げの反発から、緩やかに下落することとなりました。また、同日は中国は清明祭の休日であったために、アジア時間は静かな取引となった模様です。
また、ウクライナ情勢においても、ウクライナ東部の主要都市ドネツクで、新ロシア派勢力が政府の建物などを占拠したことが伝えられ、再び緊張が高まることとなりました。
翌火曜日は、ドルが下げる中金価格は過去2週間で最高の水準の1,311ドルへと上げることとなりました。これは、前日から緊迫が高まるウクライナ情勢の影響、また、同日発表されたIMFの2014年の世界経済の見通しが3.6%と0.1%下方修正されたことなどから安全資産として金が買われたことからです。
水曜日は、ウクライナ情勢は引き続き緊迫する中、ロンドン時間に金価格はトロイオンスあたり1314ドルを2度試した後に、下げることとなりました。これは、ロンドン時間夜のFOMC議事録発表を待つ中で、欧州株が下げ止まり上昇し、調整の売りが入ったことからです。
そして、市場注目のFOMC議事録発表後は、金価格は大きく上昇しました。これは、FOMC議事録で、先月FOMC後にイエレンFRB議長がコメントした利上げの時期について全く話し合われていなかったことが明らかとなり、更に金利予測が市場に利上げペースを過剰に示すことを数人のメンバーが指摘するなど、ハト派的な内容であったことからです。
木曜は、前日の上げを受け継ぎ上げる中、米国新規失業保険申請件数が予想の32万人を下回る30万人と7年ぶりの低水準であったことから多少上げを失ったものの、トロイオンスあたり1318ドルあたりを推移することとなりました。
同日は、米国株式市場が軒並み下げ、ナスダックの一日の下落率は3.1%と2011年11月以来のものとなったことも、金価格を支えた模様です。
金曜日は、前日の水準を守り、ロンドン時間17時半の段階では1315ドルから1322ドルの狭いレンジで推移しています。
ブリオンボールトニュース
今週再び緊迫が高まったウクライナ情勢によって、金価格が上昇したことに関して、ロイター通信がレポートし、ブリオンボールト米国市場開発責任者のミゲル・ペレスーサンタイアのコメントが取り上げられました。
今週は、昨年金価格が急落して1年目となります。そこで、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、昨年この週に急落した金市場を振り返り、今後の先行きを解説した記事が、Yahooファイナンスと英国主要日刊紙のオブザーバーで取り上げられました。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
- ブリオンボールトリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「1兆ドルに及ぶ金価格の下げ」
- スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏の「ゴールドの上昇が続かない理由」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国では、マリア・ミラー元文化・放送・スポーツ相及び女性平等担当相の経費不正請求問題が、ニュースのトップを飾っていました。
英国の国会議員の給料は、年間66,396ポンド(約1100万円)と、日本の2200万円に比べるとかなり低く抑えられています。ただ、この給料に加え、事務所経費及びスタッフ費用、ロンドンと選挙区の住居費用、旅費を経費として請求することができます。
ミラー氏は、この住宅費用として両親が住んでいる家のローンと諸経費を彼女が居住している家として9万ポンド(1500万円)を請求したのですが、英国主要紙のディリー・ミラーが不正請求として2012年に取り上げ、国会の第3者機関によって調査されたのでした。
今年に入りその調査が終わり、第3者機関がミラー氏へ4万5千ポンド(750万円)を支払うことと国会で詫びることを求めたことに対し、国会議員の委員会がその支払額を4万5千ポンドではなく5800ポンド(99万円)としたこと、また国会での彼女の陳謝のスピーチも32秒と極端に短かったことから、一般庶民のみならず、与党内でも辞職を求める声が高まり、結果的にはミラー氏は全ての大臣職を辞職することとなりました。
現在の国会議員の経費に関する法律は、2009年に経費不正請求スキャンダルが吹き荒れた後に改定されたものですが、その内容が十分ではないという意見が高まっています。
今回のミラー氏の問題でその判断力を疑問視されたキャメロン首相は、数少ない女性の大臣の一人を失いましたが、その後任としてパキスタンからの移民の息子であるSajid Javid氏を任命しました。本日の英主要紙では、アジア人の入閣は初めてであること、また、彼の父親がバスの運転手であり、彼自身も公立の学校を卒業した、決してエリートの道を辿った、典型的な保守党議員ではないことを取り上げています。
この人事が、与党の支持率を上げることになるのかは、Javid氏の力量にもよるのでしょうが、移民を受け入れてきている英国の成熟度を示すものであり、全般に好意的に受け止められているようです。