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ゴールドの上昇が続かない理由

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、今年に入って金価格が上昇するものの、その水準を保つことが困難である背景を解説しています。

 
 
 

ゴールドは2014年年初から上がり始めました。1200ドルちょうど近辺から始まりましたが、3月半ばに1400ドル手前まで約200ドルほぼ一本調子で上昇し、その後は逆に一本調子で下落。4月の初旬現在1300ドルを割り込み1280ドルと上昇分の半分以上を売り戻したことになります。今年のこれまでのゴールド上昇の背景として以下の点が上げられます。

・2013年年末に1180ドルという2013年6月28日つけた最安値をトライし、そこが下にブレークできずに新たな年を迎えたこと。
・1200ドル近辺での執拗なアジアの実需買い
・2013年一年間売り続けていたGold ETFの残高の減少が止まったこと。
・新興国危機によって安全資産としてのゴールドが買われたこと。
・2013年買われすぎた株価が調整モードに入ったこと。
・予想されていた米国金利の上昇が実際には下落傾向にあったこと。
・ウクライナ情勢の緊迫によりゴールドが買われたこと。

そしてゴールドが頂点を打ったのはまさにクリミア半島の住民投票の週末明けでした。とりあえずのウクライナ危機の結果が出て、これが市場にとってはもは や材料でなくなり、それ以降はまた昨年の下落のもっとも大きな要因であった「FRB金融緩和の縮小」にまたマーケットの焦点は移っていきました。

今度は3月半ばから下げた材料を考えると

・今年に入り上昇局面でアジアの実需の買いがストップ。爆発的にゴールド現物が売れた2013年に比べると2014年は低調。2012年のレベルにほぼ等しい。(下チャートは現物の動きを年ごとに指数にしたもの)

 
 

・昨年はLoco Londonに対して一時20ドルという大幅なプレミアムをつけていたSGE(Shanghai Gold Exchange)のゴールドも、2014年に入りプレミアムがじわじわと下がり、現在は逆にディスカウント、つまりLoco London GoldよりもSGE Goldが安い状態が続いています。中国の買いが2013年は非常に強かったのに対して、2014年に相場が上がってからはほとんど買いが見られず、逆に 売り戻しが多いのでこういうことになります。このロケーション・プレミアム・ディスカウントはその地での現物の需要を端的に表す数字です。下のチャートは ゴールドの価格の動きとSGEのプレミアムの動きです。(ただし下のチャートのオレンジのラインがゴールド価格、グレーのラインがSGEのプレミアムで、 表示が逆になっていますのでご注意)

 
 

・ファンド等の投資家からの見方を紹介しましょう。米国の実質金利とゴールドの関係は強く、実質金利のもっともわかりやすい指標である10年物インフレリ ンク債の利回りは2012年末の低値である-0.9%から昨年9月の高値である0.91%まで急速に上昇しました。それから実質金利はまた0.5%まで下 げ、これがGold ETFの売り戻しが止まった大きな要因だと考えます。

・しかし、一時的に下がっている実質金利も今年一年で考えると上がると見ている人間が多いです。Bloombergのアナリスト予想の総意は10年国債の 利回りが第4四半期には3.35%という予想になっています。(現在は2.75%くらい)同時に米国の第4四半期のインフレ率の平均予想は1.9%です。 これで計算すると実質金利は1.45%となり、現在の0.5%より遥かに高い状況です。もしこの仮定(実質金利が1.45%くらいまで上昇する)が正しい とすれば、これまでのゴールドと長期の実質金利との相関関係から考えると、ゴールドは1300ドルよりも1100ドルのほうにより近い位置が自然だト考え られます。(下チャートは1997年にインフレリンク債が登場してからのその利回り(実質金利)とゴールドの相関関係です)

 
 

以上から、Standard Bankのアナリストは2014年第2四半期の平均価格を1180ドルとしています。僕個人的にはちょっと弱すぎる予想かなと考えています。年初から 1400ドル直前まで上昇し、4月に入ってだいぶ戻して1300ドル。1200ドル割れでは中国を始めとしたアジア実需筋の買いはまず間違いなく入ってく ると思われ、それがサポートになるのではと考えます。とすれば平均価格として考えるのならば1250ドルから1300ドルくらいが妥当ではないでしょう か。円建てゴールドは、米金利が市場予想通り上がって行くとすれば、低金利維持の円との金利差からやはりドル高・円安の動きは変わらないと思われます。ド ル建てでゴールド下げの要因が円安要因となることから、円建てでは支えられるでしょう。下値はあっても4000円、上値は4800円くらいではと考えま す。

以上

池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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