ニュースレター(12月9日)1163.60ドル 来週のFOMCでの利上げ観測の広がりで金は続落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1163.60ドルと、前週同価格から0.8%下げています。
月曜日金相場は、イタリアの国民投票での敗北からレンツィ首相が辞任し、イタリア政治の混迷懸念から、ロンドン時間早朝の発表直後に上昇したものの、ロンドン時間は緩やかに下げることとなりました。しかし、ロンドン昼過ぎからドルが弱含む中、上げ基調へと転換したものの、来週のFOMCでの利上げ観測は広がっており、金の上昇幅は抑えられることとなりました。
火曜日金相場は、前日の10ヶ月ぶりの低い水準から上昇し、1167ドルと1175ドルの間の狭いレンジで推移することとなりました。なお、同日発表の米国貿易収支が予想を下回る2015年3月以来の大幅な赤字額となりましたが、市場への影響は限定的でした。
水曜日金相場は、特に大きなイベントや経済指標も無い中、長期金利の上昇が一服し、ショートカバーと見られる買いで緩やかに上昇することとなりました。
木曜日金相場は、米国株式が史上最高値を付ける中、前日の上昇分を失いながら緩やかに下落することとなりました。
同日発表された欧州中央銀行の政策金利は、予想と前回通り0%と据え置かれ、預金金利も-0.4%と予想と前回同様となりました。また、債券購入は2017年3月末までは月額800億ユーロとし、4月以降12月まで延長し、月額は600億ユーロに減額することが発表されました、このため、資産購入プログラムが延長されたことからハト派的と市場は解釈し、ユーロが弱含む中、ドル高も進み、金が押し下げられる要因ともなった模様です。
本日金曜日金相場は、ドル高が進む中下げ幅を広げています。これは、来週予定されているFOMCでの金利引き上げが確実視される中、週末前のポジション整理もあり売りが先行している模様です。
なお、FRBによる金利引き上げを予想するFEDWatch Toolによると、来週のFOMCでの金利引き上げは97.2%へと上昇しています。
その他の市場のニュース
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本日の上海黄金交易所の世界指標との差であるプレミアムは+29ドルへと上昇していたこと。 -
オーストリアのDie Presse onlineによると先月ロシアは40トンを金準備に積みましたとのこと。なお、中国の金準備は先月増減なしとのこと。 -
OPEC会合で合意した減産前に、OPEC諸国とロシアの産出量が増加していることから、原油価格が下落していることをロイターが伝えていたこと。 -
月曜日に金が投資商品としてイスラム金融の中で初めて認められることがブルームバーグによって伝えられたこと。これは、業界の標準を定めるグループが、シャリーアに則った標準を金の取引に導入したことからとのこと。これにより金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアが、利用できる金融商品となり、イスラム圏の中央銀行が利用することになる可能性があるとのこと。
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先週末に発表されたコメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、3週連続で減少し321トンと、BREXIT後のピークであった7月の残高から64%減となっていたこと。
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金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高がトランプ氏が大統領に選出された翌日の11月10日から全く増加せず減少もしくは変化無しで、昨日までで81トン減少の860.7トンとなっていること。
ブリオンボールトニュース
今週ブリオンボールトが毎月まとめている投資家の金投資傾向を示す金投資家インデックスが発表され、多くの主要メディアで取り上げられました。
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ウォール・ストリート・ジャーナル「金価格が継続して下落」
金相場が下落していることを伝えるブルームバーグの記事で、ブリオンボールトが本日発表した11月の金投資家インデックスでは、個人投資家はの需要は5年ぶりの高水準であったことが取り上げられました。
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MarketWatch「11月に金価格が下げる中、金の需要が5年ぶりの高水準へ」
ここでは、米大統領選挙でトランプ氏が選出された後に金価格が下げる中11月にブリオンボールトでの金需要が5年ぶりの高水準となったことを伝えています。
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日本語で金の情報を網羅するゴールドニュース「金需要が過去5年間で最高水準へ」
英国の主要経済紙のCity AMの「中国とインドが保有する金をなぜ他の国は保有しないのか」という記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここで、エィドリアンは英国の銀行は株式市場が賑わった1980年から2000年にほぼ金の販売を終え、ロンドンが金の専門市場の世界の中心でありながら、ドイツやスイスとは異なりロンドンの商店街で金を売る店は殆ど見られないと現状を説明し、それは英国経済が長く安定していたことからであり、経済の安定が保証されていなかった国々で金の需要は高いと近年のトルコやインドを例に上げ説明しています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(12月5日~9日) -
2017年のリスクから金投資傾向が5年ぶりの高水準へ
ロンドン便り
今週の英国からのニュースは、英国のEU離脱の是非を問う国民投票の際に、離脱派のリーダーとして活躍し、現英国メイ政権で外務大臣を務めるボリス・ジョンソン氏の失態が主要メディアで取り上げられていますのでお届けしましょう。
ボリス・ジョンソン氏は、その歯に衣を着せない言動が典型的な政治家とは異なり、親しみやすさからも英国のEU離脱の国民投票までは一般の方々にも人気がありました。しかし、本音を話すがゆえに問題も起こしてきたことから、そのジョンソン氏が、最も言動に注意を払わなければならない英国外交の長の外務大臣となったことから、一般の人はもちろん、与党保守党内でも懸念を示す議員が未だにいます。
彼のこれまでの問題となったコメントは次のようなものがあります。
オバマ大統領が英国のEU残留を強く訴えた際にタブロイド紙へ「オバマ大統領は、昔英国の植民地だったケニアの血統なので、反英感情を持っている。」とコメントを寄稿。
英国がEU離脱を決断した後に、中国について「中国は我々の脅威ではない。中国が世界を支配することなどあり得ないし、赤ん坊の頃から北京語を教え込む必要なんてない」。
今回は先週行われた会議で、英国の中東における同盟国であるサウジアラビアを「イスラムを冒涜し、中東での代理戦争を裏で操っている」と語ったことが今週伝えられて、英国のEU離脱後の中東諸国の経済協力を求めバーレーンを訪れ帰国したばかりのメイ首相が、即座にその発言を否定するなど問題となっていました。
このコメントの全文は、「その政治的な目的から、この宗教やこの宗教内の異なる派閥を混乱させ乱用する政治家いる。それが、この地域の最大な問題である。そして、私にとって悲劇に思えるのは、この代理戦争がこの地域でなぜ長期間に渡り行われなければならないかということ、そしてこれらの国々に強い指導者が存在しないかということだ。」と続いています。
ここで彼の言わんとしていることは十分に理解でき、決して間違いではないかもしれないのですが、サウジアラビアと英国は同盟国であるとともに経済的関係も強く、英国が防衛関係の兵器などを含み年間70億ポンド(1兆145億円相当)輸出し、サウジアラビアが英国への多額の投資を行う重要な国でもあることからも、外務大臣が本音で語っては首相や英国政府の顔が潰されてしまうということなのでしょう。
ジョンソン氏は本日からバーレーンでの会議で基調講演を行い、日曜日からサウジアラビアに入ります。今回のこともあり、この模様は英国メディアでは注意深く報道されることになりそうです。