ニュースレター(12月4日)1192ドル 4年半ぶりの良好な米雇用統計にショートカバーの上げ幅が削られる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1194ドルと、前週同価格から0.9%上げています。
週明け月曜日は、週末スイスの金準備に関わる国民投票が否決されたことからロンドン早朝に下落しましたが、ドルが弱含む中切り返し5%強急騰しました。これは、金価格が上値を越す毎にショートカバーが引き起こったからです。
翌火曜日は、前日の反発から、緩やかに相場を下げることとなりました。
水曜日は、ドル建て金相場はトロイオンスあたり1209ドルと緩やかに上昇することとなりました。これは、同日発表された金曜日の米雇用統計の先行指標とされている米ADP全国雇用者数が20.8万人と、予想の22.8万人を下回ったことからも金相場を支えることとなったためです。
また、ユーロ建ては、本日発表のユーロ圏PMIサービス業が予想を下回ったことなどから、ユーロが対ドル弱含み、トロイオンスあたり982ユーロと過去6週間で最高値まで上昇することとなりました。
同日日本円建て金価格は、年初来の最高値であるグラムあたり4667円を記録することとなりました。これは、14日に行われる衆議院選挙で自民党が300議席を獲得する予測がレポートされ、安定政権による更なる量的緩和が期待され、円安が進んだことからです。
ちなみに、ロシア・ルーブル建てでは、史上最高値を記録することとなりました。
木曜日の欧州中央銀行の金融政策発表では、政策金利は0.05%で据え置かれ、政策金利発表後行われているドラギ総裁の 記者会見で、追加緩和については「来年初め」としたものの、ECB理事会内での賛否は割れていることも明らかとなり、ユーロは対ドル一時下げたものの戻すこととなりました。なお、発表されたGDP及びインフレ率の予想は前回から引き下げられることとなりました。
そのため、金相場は一時的にトロイオンスあたり1210ドルへ上昇して下げたものの、1205ドルを保持することとなりました。
金曜日は、市場注目の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は321,000人と過去4年半で最高水準で、予想の232,000人、前回214,000人(変更なし)を大きく上回ったことからも、金相場は一時トロイオンスあたり1189ドルまで16ドルほど下げたものの短時間で戻し、ロンドン午後4時の時点では、トロイオンスあたり1194ドルを推移しています。
他の市場のニュース
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米格付会社のムーディーズが日本国債格付けを引き下げたこと。 -
ドラギECB総裁が、ECB追加緩和の資産購入対象は金以外であると述べたこと。 -
金の世界指標であるGOFOレート(Gold Forward Offered rates)が来年1月30日以降発表されないことをロンドン貴金属市場協会が発表したこと。
ブリオンボールトニュース
ブリオンボールトの金投資家インデックスの11月数値について、ブルームバーグが取り上げています。また、金市場のニュースを日本語で網羅するゴールドニュースサイトでも取り上げられています。
金投資家インデックスは、11月は金相場が下げる中、個人投資家の金投資意欲は高まり、過去8ヶ月で最も高い水準となりました。この詳細は、「個人投資家の金取引量が過去8ヶ月で最高水準へ」でご覧いただけます。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールトリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「個人投資家の金取引量が過去8ヶ月で最高水準へ」
今週の主要経済指標の結果は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国で主要メディアは、水曜日に行われた、英国政府の財政運営の大枠を示すオズボーン財務大臣の秋の演説が広く伝えられていましたが、少し変わったニュースを本日はお届けしましょう。
それは、このロンドン便りでもご紹介したことがある、理論物理学者のスティーヴン・ホーキング博士が、人工知能開発に警告を発したというニュースです。
ホーキング博士は、2日に放送されたBBCのインタビューで、「人工知能技術は急速に発展して人類を追い越す可能性がある」とした上で、「われわれがすでに手にしている原始的な人工知能は、極めて有用であることが明らかになっている。だが、完全な人工知能の開発は人類の終わりをもたらす可能性がある」と踏み込んで語ったと伝えられています。
ホーキング博士は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患い、重度障害者用意思伝達装置を使いスピーチや会話ではコンピュータプログラムによる合成音声を利用していますが、現存する科学者の中で最も才能のある一人と認められている知名度の高い物理学者であるだけに、このニュースは大きく伝えられていました。
またこのニュースでは、同様に人工知能に警笛を鳴らしている、ペイパルの前身の会社も設立した、起業家のイーロン・マスク氏の意見についても紹介されています。
偶然にも今週は、ターミネーターの最新作の予告編が公開されたことからも、SF映画を思い起こさせるようなニュースに、あらためて常に先端科学技術の可能性を追求し続ける人類の責任についても考えさせられる機会となりました。