金市場ニュース

ニュースレター(12月4日)1079.25ドル ECBの決定が期待はずれとなりユーロ高ドル安が金を押し上げ、良好な米雇用統計後、ショートカバーで急上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1079.25ドルと、前週同価格から2%上げています。これは、11月20日以来の高水準です。

週明け月曜日は、先週金曜日の薄商いの中まとまった売りで下げた反動で、金相場は上昇しました。

翌火曜日もアジア時間はその基調を受け継ぎ上昇しましたが、前日比多少下げることとなりました。

市場注目の同日発表の米ISM製造業景況指標は48.6と、予想と前回を下回り、50を割り込むこととなり、この発表後一時金相場は上げたものの、前日比小反落となりました。

水曜日金相場は大きく下げることとなりました。これは、同日発表の米国ADP全国雇用者数が、21.7万人と予想の19万人、前回の18.2万人(修正値19.6万人)を上回ったことが一つのきっかけでした。

その後、もう一つの下げのきっかけとなった、イエレンFRB議長が上下両院合同経済委員会の公聴会で、利上げに踏み切る可能性を示唆したことから、一時年初からの最低値トロイオンスあたり1050ドルを試すこととなりました。この要旨は主要経済指標(11月30日~12月1日)のページでご覧いただけます

木曜日は、更なる金融の量的緩和が予想されていたECBが、量的緩和期間の引き伸ばしと、銀行がECBに余剰資金を預け入れた際に課す手数料(マイナス金利) を0.1ポイント上乗せし、−0.3%としたものの、政策金利は過去最低の0.05%、国債買取り規模も600億ユーロに据え置いたことから、「失望売り」で、欧州株は下げ、ユーロも対ドル上昇することとなりました。そのため、ドル建て金相場は、ドルが弱含んだことからも上昇しましたが、ユーロ建ては大きく下落することとなりました。

ちなみに、ドル建て金相場は、アジア時間に過去6年間で再低値のトロイオンス1046ドルを付けていました。これは、前日のイエレンFRB議長と、これまで中間派であったウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁と、ロックハート・アトランタ連銀総裁が、共に今月の利上げを示唆したことが要因であった模様です。

 本日金曜日発表の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が21.1万人と予想の20万人を上回り、前回の27.1万人は、29.8万人と上方修正され、失業率は5%と前回と予想と同レベルとなりました。

この発表前にトロイオンスあたり1070まで上昇していた金相場は、発表後1061ドルへ下げた後に上昇を初め、その後急伸して1085ドルを推移しています。この要因は、同日発表された貿易赤字が悪化していたことを要因とするアナリストもいますが、記録的な規模に増加していたショートポジションが、上昇とともにストップロスを引き起こしショートカバーで上昇していることも要因のようです。

その他の市場のニュース


  • 国際通貨基金(IMF)の理事会において、中国の人民元が、特別引出権(SDR)の算定基準となる通貨に採用されることが決定したと伝えられています。その比率は10.92%と、日本の8.33%を上回ったとのこと。

  • 火曜日発表のCFTCのデータによると、先週金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週のほぼ過去6年で最低水準の金価格となる前に、既に過去10年間で最も低い水準のマイナス数値となっていたこと。

  • それに対し、コメックスの銀先物・オプションの資金運用者のポジションは、引き続きネットでロングとなっていたものの、このロングポジションは、過去10年間の平均の1.7倍で、ショートポジションは3.8倍となっていたこと。

ブリオンボールトニュース

金相場が月間としては、11月に過去2年で最も大きな下げ幅となる模様という米主要経済サイトのMarket Watchの記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。

ここで、エィドリアンは、12月には今週雇用統計とECBの政策金利発表、FOMCが月半ばと、多くの行事があると述べた上で、雇用統計次第では、バーゲンハンターに購入機会を与えるかも知れないとも述べています。

英国の主要経済サイトのMoney Observerで、金価格が過去6年間で最低水準へと下げたことを解説する記事で、ブリオンボールトが今週発表した金投資家インデックスの最新数値が取り上げられています。

ここでは、先月の金投資家インデックスが、今年2月以来の速いペースで大きく上昇したことに触れ、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュ の「欧米投資家もアジアの投資家のように価格に敏感になっている。」とし、「金価格が下げた際を買い時と見る個人投資家の投資傾向は、機関投資家が売却や ショートポジションを積み上げていることと比較しても、異なることが際立っている。」としいうコメントを取り上げています。

この詳細は、日本語で金の情報を網羅した、ゴールドニュース「欧米の投資家の金・銀投資センチメント上昇」、また弊社市場分析ページの「金投資家インデックス: 欧米の投資傾向がアジア化へでもご覧いただけます。

今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週英国主要メディアは、英国議会におけるシリア空爆決議について、大きく伝えていました。

11月13日のパリの同時テロ後、キャメロン首相は、「イスラム国」討伐のために、米国とフランスが既に行っていたシリア空爆に参加する意向を固め、これを支持する政府提出動議を今週月曜日に提出しました。

英国では、2003年のイラク戦争参戦が、後に誤った情報と認められた政府から提供された情報を元に行われたことなどから、海外での軍事行動には未だに慎重論を唱える人々が多くいます。実際に、そのために2年前にアサド政権が化学兵器を使用したことから、同政権への空爆の議会承認は、保守党内の造反もあり否決されています。

そのため、今回キャメロン首相は、議会によって再び否決されることはどんなことがあっても避けなければならないために、過半数を得る確証が得られるまでは、動議を提出しないとまで明言していました。そのために、空爆反対を明らかにしている労働党のコービン党首が、労働党議員の自由投票を認めるかが注目されていました。

結果的には、労働党内幹部でも空爆賛成派がいること、コービン党首自身も過去に党の方針に逆らって投票を行ってきていたことからも、自由投票を認めずに造反があった際の党内混乱を避けるためにも、週末にコービン党首が自由投票を認めたことから、今週動議が提出され、2日に審議が行われました。

結果は、賛成397、反対223でこの動議は承認され、既に昨日英空軍機がシリアでの空爆を開始したことが報じられています。

2日の議会での審議の際に、賛成派と反対派の議員が、それぞれ自分の意見を述べるスピーチを行いましたが、その中でも労働党の外務大臣であるヒラリ-・ベン議員の空爆の必要性を訴えるスピーチは、反対派であったとしても、素晴らしいものであったために、多くのニュースで伝えられ、次期労働党党首の最有力候補と浮上したようです。

シリア情勢は、宗教、民族、諸外国の思惑も絡み、単純な解決方法はありません。しかし、「イスラム国」が勢力を強め、広がることで増え続ける犠牲者のために、傍観者でいることを拒否し、国連決議を経て、英国は立ち上がりました。政治的解決も同時並行で行うことを目指すとのことですが、今回の第一歩が更なる混乱を引き起こすこと無く、世界が協力して問題解決に向かう一歩であったと、将来振り返って言えることを望んで止みません。

なお、ヒラリー・ベン影の外務相の全スピーチはここでご覧いただけます。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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