ニュースレター(11月25日)1187.70ドル:記録的ドル高が金を43週ぶりの低水準へ押し下げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1187.70と前週同価格から1.9%下落しています。
週明け月曜日は、前週の下げの調整でドルが多少下げる中、緩やかに上昇することとなりました。
翌火曜日金相場は、ドルインデックスが多少下げたことからもアジア時間に上昇したものの、その後ドルインデックスは強含み、欧米の株高も進み、同日発表の米主要指標も好調だったことから、ロンドン時間午後は緩やかに上げ幅を失うこととなりました。
この米主要経済指標の中古住宅販売件数は2ヶ月連続で増加し、2007年2月以来の高水準となり、リッチモンド連銀製造業指数も前回の-4から4となっていました。
水曜日は、翌日が感謝祭の祝日で薄商いの市場でしたが、同日昼過ぎに発表された米耐久財受注が4ヶ月連続で増加し、10月は昨年10月以来の大きな増加率となったことからもドルが強含み、売りが売りを呼び金は大きく下げることとなりました。
その後ロンドン夕方に発表されたFOMCの議事録が12月利上げを強く示唆する内容であったことも金相場を押し下げることとなりました。
木曜日金相場は、米国が感謝祭の祝日で休場であることからも、前日の大幅な下げの後、狭いレンジで推移することとなりました。これは、為替市場、株式市場、債券市場、コモディティ市場全般も同様な動きとなっていました。
なお、同日コメックスの12月の利上げ観測を示すFEDWatchは93.5%となっていました。
本日金曜日は、大きな経済指標がなく、先日の感謝祭の休暇に併せて休暇を取っている市場関係者も多く薄商いの中、ロンドン時間早朝にトロイオンスあたり1172ドルと43週間ぶりの低い水準へと下げた後に1190ドルまで戻したものの、その後再び下落しています。
なお、本日中国の金相場は、人民元建て価格の下げからも世界指標に20ドルのプレミアム付きで取引高が増加していることが伝えられています。
その他の市場のニュース
- インド政府による今月の高額紙幣廃止に伴い、結婚シーズンで本来最も金需要が高まる時期に、ムンバイの市場が閑散としていることが伝えられていること。そして、インド政府によるインド国内の金保有の規制の可能性がレポートされていたものの、本日金曜日にその噂は公式に否定されています。インド政府の今回の高額紙幣廃止の規制とその金市場への影響に関しては「インド政府が高額紙幣を廃止したことで消費者が金購入へと向かう」をご覧ください。
- OPEC(石油輸出国機構)がOPECメンバー以外に産出制限を要請しているとウォール・ストリート・ジャーナルが伝えていたこと。
- 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアが、水曜日にも13.3トン減少し、10日連続の減少で896トンと今年6月14日の水準まで下げていたこと。
- 先週末に発表されたコメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、4週間ぶりに減少し、その重量は前週比25%減、評価額では28%減と大きなものとなったこと。これは先週火曜日のもので、トランプ氏が大統領に選出後の金融市場に反応した変化。
ブリオンボールトニュース
金の購入がトランプ氏が大統領に選出された以降も続いていることを伝えるロイターの記事で、ブリオンボールトのデータが使われました。ここで、米国における金購入は進んでいないことと対象的に、欧州における金購入は進んでいるとブリオンボールトのデータを紹介しています。
それは、11月20日までの20日間で、既に652キロをブリオンボールトユーザーはネットで購入しており、これは、2012年12月の月間702キロに次ぐ高水準であること。また、新たな米国からの顧客数は選挙後減ってはいるものの、11月の新規顧客数は過去12ヶ月平均比較で、米国は35%増、欧州は39%増、英国が56%増となっていると取り上げています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週の英国からは、トランプ次期大統領が、英国の駐米大使として、英国の「EU離脱の立役者」として英国独立党の暫定党首ナイジェル・ファラージ氏を推薦したというニュースが大きく伝えられていましたので、その話題をお届けしましょう。
先々週のニュースレターでもお伝えしましたが、ナイジェル・ファラージ氏は、英国の政府関係者が米大統領選挙で特定の候補者を支援することを避けていたのに対し、選挙期間中にトランプ氏を積極的に支援し、トランプ氏が大統領に選出された直後には訪米して大統領選の結果を個人的に祝っていました。
今週火曜日には、トランプ次期大統領が政権内の主要ポジションの候補とミーティングを重ねる中、ツィッターで「「多くの人々が、英国独立党(UKIP)の暫定党首ナイジェル・ファラージ氏が駐米大使として英国を代表することを願っている。彼は偉大な仕事を成し遂げる」と投稿したことで、英国主要メディアはこぞってこの事を伝えていました。
英国外務大臣のボリス・ジョンソン氏は、即座にこのポジションは現在既に埋まっているとコメントを出しましたが、英国外交の重要なポジションを逆指名されたことは、メイ政権にとってはショックではあったようです。
英国とは異なり、米国の大使は必ずしも外交官ではない場合もあるとのこと。しかし、典型的なポピュリストで反体制を掲げてきたファラージ氏は、トランプ氏と通じるところは多いようですが、EU離脱を共に戦ったボリス・ジョンソン氏も含め、現政権は一線を引いています。
他国の駐米大使を指名してしまうトランプ次期大統領のプロトコルを無視する姿勢は問題ですが、英国政府としては、オバマ大統領からは「もし英国がEUを離脱したら、新しい貿易協定のための交渉は一番後回しになる」と突き放された経緯もあり、トランプ氏に近いファラージ氏を何らかの形で起用しても、BREXIT後の貿易協定を進めるメリットはあるのかもしれません。