インド政府が高額紙幣を廃止したことで消費者が金購入へと向かう
今月初旬に米大統領選挙が行われる中、インド政府は高額紙幣の廃止を発表しました。
インド政府は今月8日に、にせ札対策や脱税撲滅などを理由とし、流通している紙幣のうち、最高額の1000ルピー札と2番目に高額の500ルピー札の2種類を、翌日から廃止すると発表し、新たに発行する紙幣と銀行で交換するよう指示しました。これにより、流通している紙幣の価値の86%が廃止されたこととなります。
そのため、その夜から金購入が急増したことがインドの主要メディアで伝えられていました。
廃止された紙幣の交換は、日々4500ルピーを上限として小額紙幣に行うことができ、12月30日が交換できる最終日とされています。1日の上限を超える額に関しては銀行に貯蓄しなければならず、その際に資金元の確認や税金の支払い等が発生する可能性があるとのこと。
インド国立銀行は、新たな500ルピーと2000ルピー紙幣を、偽造対策として追加されたセキュリティー機能とともに発行しています。しかし、既に先週金曜日にこの2000ルピー紙幣の偽造紙幣が利用されたことをメディアは伝えています。
モディ首相は13日、国民向けの演説を行い、にせ札対策や脱税の撲滅のために必要な措置だと改めて理解を求めました。インドにおいては、インド政府が発表したデータによると、昨年は人口の1%のみが所得税を支払っているのみとのことです。
今回の高額紙幣廃止によって、銀行口座への貯蓄が発表後の2日間で2兆ルピー(300億ドル)となったことが伝えられています。
しかし、世界銀行によると2014年末までに人口の47%は未だ銀行を利用していないとのこと。特にそれは、収穫期から翌年の植え付け期までに資産保全するための金の需要の3分の2を占める地方において顕著とも伝えられています。
ATMでの貯金の引き出しは、小額紙幣の在庫が尽きてしまうことからインドにおいて困難となっています。そのために、モディ政権は規制を多少緩和し、人々に経済が通常通りに機能するための現金の供給は十分にあることを保証しました。
先週の最高裁判所で高額紙幣廃止の規制を論争する際に、最高裁は高額紙幣は必ずしもブラックマネー(申告をしない不正利得)に使われるのではなく、これらの高額紙幣を廃止することで法律を守る人々や貧しい人々が最も不利益を受けていると、今回の規制を絨毯爆弾と例え、(ブラックマネーに焦点を合わせる)ピンポイントの攻撃ではないとコメントしています。
「人々は(金を購入)するために走り回っている。そのために、価格は4000ルピー上昇し、10グラム35000ルピーへと達している。」とインドの主要紙The Hinduが、ムンバイのZaveri バザールのディーラーのコメントを伝えています。そのため、国外の価格との差が30%増に一時達したとのことです。これは、今年インド政府による規制の数々で需要が減少し、国内価格が国外価格より低くなっていたこととは大きく異なる状況でした。
「今回の高額紙幣廃止以前の金の在庫は全て売り切れました。」とBusiness Standardが大手宝飾品会社のRiddiSiddhi Bullionの代表のPrithviraj Kothari氏のコメントを紹介しています。
そして、「しかし宝飾品会社は、政府による更なるブラックマネー規制を見極めるまで、新たな在庫購入を待っているようです。」と続けています。
ヒンドゥー教の結婚シーズンが始まろうとしていますが、Zaveri バザールはほとんど買い物客は見当たらないと、英国貴金属コンサルタント会社のMetals Focusは伝えています。そして、インドの金の購入の60%は現金の高額紙幣で行われることからも、驚くべきことではないともコメントしています。
インドへの金の密輸ネットワークは、今回の規制で打撃を受けていると、チェンナイのMNC BullionのDaman Prakash Rathod氏は言及しています。
近年10%の関税をインド政府が導入したことで、金の密輸はインドへ流入している金の3分の2に至っていると伝えられています。
そこで「どのようにブラックマネーをホワイトマネー(流通可能な通貨)へ変換するか」という検索はグーグルで急増しているとのこと。
金融庁の税務官は、高額紙幣廃止が伝えられる前日の11月7日からの宝飾品の売買記録を25都市の600の宝飾店で捜査していると、Econimic Timesは伝えています。
モディ首相の政敵は、今回の規制が行われるまでにモディ首相がサポーターや友人達に情報を流して、金購入の機会を与えていたと告発しています。
そして、News18.comによると、2430万人のフォロワーがいたモディ首相のツイッター口座は、30万人のフォロワーを今回失ったとのこと。
前世界銀行とインドの金融庁のチーフエコノミストであったKaushik Basu氏は、「インドの物品・サービス税(GST)は経済学上効果が認められているが、高額紙幣廃止はそうではない。」とツィートし、「経済は複雑であり、今回の規制によるダメージは恩恵をはるかに上回るものであろう」とモディ政権の今回の規制を強く非難しています。