ニュースレター(11月20日)1081.75ドル パリ同時多発テロ後落ち着きを取り戻し下げた金相場は、FOMC議事録で緩やかな利上げペース観測が広がり上昇する
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1081.75ドルと、前週同価格とほぼ同水準の0.02%下げています。
週明け月曜日は、先週金曜日夜に起こったパリ同時多発テロの影響で、アジア時間に市場が開けると共に安全資産の金が買われ、トロイオンスあたり15ドルほど上昇した後、この影響は限定的という判断で、欧米株式が下げを取り戻す中、同日中の上げを失うこととなりました。
翌火曜日は、パリの同時多発テロ事件の影響が限定的という認識が広がり、米国利上げに注目が戻りドル高が進む中、コモディティ全面安となり、金相場はトロイオンス1065ドルとほぼ6年ぶりの安値を記録することとなりました。
水曜日は、同日ロンドン時間19時に発表される、10月27日と28日に行われたFOMC議事録を待つ中、昨日のほぼ6年ぶりの低い水準ではあるものの、狭いレンジでの取引となっていました。
発表されたFOMC議事録では、「大部分のメンバーは12月16日のFOMCにおいて利上げを行う事は、経済指標が継続して改善して、なおかつ予期 せぬショックがそれを遮らないかぎり、適当である」としたものの、12月までに利上げをサポートする十分な情報を得ることは難しいのではないかと警告する メンバーもあり、FOMCのメンバー内で意見が分かれていることも明らかになりました。
市場としては、この発表には大きなサプライズは無く、12月の利上げ後の利上げペースは緩やかなものであることが確認されたことからも、金相場は、発表直後にトロイオンスあたり1075ドルまで上昇した後、緩やかに上昇することとなりました。
木曜日は、前日の上げの反発もあり、ロンドン時間昼過ぎまでは緩やかに下げていましたが、今週強含んでいたドルがドル安に転じ、米国の感謝祭の休みも近づく中、ショートポジションの整理も行われた模様で、金相場は上昇することとなりました。
また、ほぼ6年ぶりの安値から、アジアなどで現物需要が高まり、現物が品薄となっているために、リースレートが高まっていることも伝えられており、ショートポジションを持つことが割高になっていることも要因である模様です。
本日金曜日は、ドラギECB総裁が本日行わたスピーチで更なる金融緩和を示唆する中、ブラード・セントルイス連銀総裁の「FOMCの声明は、経済次 第でゼロ金利を終了できることを示唆した。」、そしてフィッシャーFRB副議長の「FRBは市場の驚きを避けるため全力を尽くした」というコメントなどが 伝えられ、12月利上げ確実という観測が広がる中、ロンドン時間に入り、ドルが対ユーロ上げる中、欧米株も上昇し、前日の上げ幅を緩やかに失っています。
その他の市場のニュース
-
米証券取引委員会(SEC)への届け出された情報によると、金の強気派として著名なヘッジファンド運用者のジョン・ポールソン氏が、第3四半期に金ETFの最大銘柄SPDRゴールドトラストの持ち分を維持したことが伝えらたこと。 -
インドの経常赤字を改善するために、貿易赤字の大きな要因である金の輸入を減少させ、インドの国民が保有しているとされる2万トンの退蔵金を銀行に預け入 れて、マネタイズ「金融資本化」させるという政策が2週間前に始まりましたが、その結果預け入れられた金は400グラムであったと伝えられたこと。 -
日本限定、期間限定で、ネスレ日本が金箔で覆ったキットカットを500本に限り販売することが伝えらたこと。
ブリオンボールトニュース
ブルームバーグ日本の「NY金:一時5年ぶりの安値、銀の連続安は過去最長記録を更新」という記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
ここでは、エィドリアンが「銀は金と工業用金属のいずれかと連動していると見られているが、今はどちらも悪い状況だ」と指摘し、「金の悪材料は銀売り材料となり、工業用金属の悪材料も銀売り材料となっている」と述べたことが取り上げられています。
この記事の原文は「トレーダーが銀から逃避する中、銀の連続安は過去最高を更新」でご覧いただけます。
英国の主要誌The Weekの「パリが落ち着きを取り戻す中、金価格が下落」の記事で、ブリオンボールト・リサーチのレポートの「昨日午前のLBMA金価格のオークションにおいて、8月以来の需要の高さがあった」というコメントが取り上げられています。
またこの記事では、ロイターが、昨日のニューヨークの取引開始10分間に、過去2ヶ月の平均より10倍の取引量である3000ロットが取引されたことも伝えていたと取り上げています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では、当然のことながら、パリ同時多発テロに関するニュースがトップで取り上げられています。
2005年7月7日には、ロンドンも英国生まれのイスラム過激派の青年達による自爆などで、56人が死亡するというテロを経験しています。そのために、多 くの英国の人々は、パリの人々を思い、それぞれがいち早くソーシャルメディアなどで、サポートを表明していました。
また、テロから4日後の17日にロンドンのウェンブリーで行われた、フランス対イングランドのサッカー親善試合では、キャメロン首相とウィリアム王子も駆 けつけ、7万人の観客がフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」を合唱し、フランスへの連帯を示しました。
奇しくも今週、テロの実行犯の1人が、シリアからの難民に紛れて欧州に入った疑いがでていることが伝えられる中、シリアからの難民がスコットランド に到着しましたが、英国タイムズ紙では、シリアからの難民受入を支持する意見が大幅に減少していることも伝えています。そのため、キャメロン首相は 2020年までに最大2万人のシリア難民を受け入れる意向を示していますが、世論の動向次第では方向転換を迫られる可能性があるとまで伝えています。
それに対し、これまでシリア空爆は、イラク政府からの要請で行っているイラクでのイスラム国への空爆とは異なり、法的問題があるとして対象から外し ていましたが、キャメロン首相は17日に過激派組織「イスラム国」に対する米国主導の有志連合によるシリア空爆に参加する方針を表明したことも伝えられて います。
パリ同時多発テロの犠牲者やその家族の方々、そして、自国や住んでいる街を攻撃されたフランスの人々の心に寄り添い、あらゆるサポートをしたいと思 う人々は多いと思いますが、この出来事が、難民や移民排他へと向かうこと、そして更なる暴力の増幅とならないことを祈って止みません。