ニュースレター(11月11日)1236.45ドル トランプショックから回復しリスクオンのトランプラリーで金相場下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1236.45ドルと前週同価格から5%下げています。また、今週の米大統領選でトランプ氏が大統領に選出されたことで急騰した水準からは7%下げています。
週明け月曜日金相場は前夜にFBIがクリントン氏の私用メール問題の再捜査の結果、クリントン候補を起訴しない方針というニュースが伝えられ、ドルが強含む中、トロイオンスあたり15ドルほど急落後緩やかに下げることとなりました。
翌火曜日も大統領選挙の投票が行われる中、クリントン氏優勢という観測から、株式市場が上げ、債券利回りが上げ、金相場は下落することとなりました。
水曜日は、ロンドン早朝に、勝敗を分けるフロリダ州においてトランプ氏が優勢というニュースが伝わると、アジア株は売られ、金がトロイオンスあたり40ドルほど急騰し、メキシコ・ペソが対ドル6%失う急落をすることとなりました。
その上げもトランプ氏の勝利宣言のスピーチがこれまでのトランプ氏とは異なり、大統領によりふさわしいものであったことから、また、大統領選と同時に行われた上院と下院選挙で共和党が下院を過半数確保し、上院は僅差となったものの共和党が上回り大統領選で勝った共和党が多数派となったこともあり、市場に安堵感が広がる中、ドルが強含み、株価が上げ、債券利回りも上昇する中、金相場は緩やかに早朝の上げを失うこととなりました。
木曜日金相場は、トランプショップが薄れる中、トランプ氏が大統領となった場合のインフラ整備等の財政支出拡大の景気押上期待と、ドットフランク法等の金融規制の緩和も金融市場へはプラスという観測からもドル高と世界の株式市場が上昇する中で、前日に続き緩やかに下げることとなりました。
本日金曜日金相場は、前日の下げ幅を更に広げ、BREXIT後の上昇分を失う下げを見せることとなりました。また、銀相場は昨日まではプラチナやパラジウムのようにトランプ政権によるインフラ整備観測から上昇していましたが、本日はその上昇分を失い更にトロイオンスあたり1ドル強と1日の高値から低値までは7.4%下げています。
その他の市場のニュース
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先週末発表のコメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週に続き増加していたこと。これは、過去10年間の平均の140%であるものの、英国のBREXIT後の記録的な規模からは34%近く下げていること。 -
スイス中銀の理事会のメンバーが、米大統領選後に安全資産としてのスイスフランクに買いが殺到した場合、FX市場に介入する準備があると述べたことが伝えられていたこと。
ブリオンボールトニュース
米大統領選の結果、予想に反してトランプ氏が選出されたことから、トランプショックで水曜日に株が大きく下げる中、金相場が上昇し、ブリオンボールトにおける取引量が急増したことから、多くの主要メディアでそのデータとリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
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英国主要日刊紙テレグラフの「トランプ氏の勝利で金需要急増」
ここでは、ブリオンボールトの昨日早朝3時から6時の間に410万ポンド(5億4600万ポンド)の取引が行われたこと。これは、前日の一日の取引量に相当するもので、購入と売却の割合は3対1と明らかに購入が勝っていたことを紹介しています。
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CNBCの「トランプ氏の勝利後金を保有する究極の理由」
ここで、エィドリアンは「株式市場のための安全資産として金を見ているのであれば、現在は金は必要ないと考えるでしょう。しかし、現在の(株式)市場の動きが何を根拠としているのかを知ることは困難な状況ではあるはずです。」とコメントしています。
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英国主要タブロイド紙のデイリースターの「トランプ氏が米大統領選で勝利したことで儲ける方法」で、金投資が紹介され、ブリオンボールトのデータとリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが紹介されています。
ここで、ブリオンボールトの取引量が午前11時まででBREXIT以来の高水準の10月4日を越えたこと、その後金相場が下げたことで需要が高まり、950万ポンド(12億1790万円相当)の金と銀が取引をされたことが紹介されています。
そして、リサーチ主任エィドリアン・アッシュの「金相場は継続して今後も上昇するだろう。今日の取引はBREXITとは異なり、購入と売却の割合が3対1と明らかに購入欲が高まっている。」とし、「午前11時までの米国からのサイトへのトラフィックは過去3ヶ月の平均の38%増で、新規口座数は昨日の2倍となっている。」そして、「2016年の金相場の25%の上げは、BREXITが理由ではなく、政治的、経済的、投資観点要因による上昇だ。」そのため「トランプ氏が好戦的な、投資先行型の保護主義であることを証明したならば、世界の金相場は上げ続けるだろう。」というコメントを取り上げています。
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ブルームバーグの「トランプの勝利後、金市場が最も忙しい日を迎える」
大統領選の結果から、金先物市場の取引量が1700トン相当とBrexit以来の高水準になっていることをレポートしているブルームバーグの記事で、ブリオンボールトの取引量が急増したことが紹介されています。
この記事では、ブリオンボールトの取引量が、米大統領選の結果がほぼ明らかとなったロンドン時間午前6時までの3時間で前日一日分の規模となったことと、購入と売却の割合が3対1となっていることが紹介されています。
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英国主要日刊紙のガーディアンの大統領選の開票結果後の市場の反応を伝えるライブフィード
米大統領選の結果を受け、金の需要が高まっていたことを取り上げ、ブリオンボールトにおける取引がBREIXT以来の高い水準であることを紹介しています。
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ファイナンシャル・タイムズの「原油が8月以来の低い水準へ下げ、金が上昇」
水曜日英国早朝時間の段階で、エィドリアンは、「金の上昇は世界の金融市場がショックを受けていることを示している。BREXITの国民投票翌日は金相場は100ドル上昇しているのと比較すると、現段階までの高値1336ドルはその水準ではない。しかし、トランプ氏の勝利は、他の資産の不透明感とパニックの始まりにしかすぎない。」というコメントを紹介しています。
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米主要経済サイトMarketWatchの「大統領選前に安全資産の必要性が薄れ金が1%以上下げる」
大統領選投票日前日に発表された記事でエィドリアンは、「金融市場は、FBIがクリントン氏を勝たせたように動いている。」とコメントを紹介し、「(しかし)金の今年の25%の上昇は、トランプ氏が大統領になるリスクが要因ではなかった。しかし、今日(昨日)は、トランプ氏が大統領にならない可能性で下げている。」というコメントを取り上げています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
トランプ氏が予想を覆して大統領に選出されました。英国での今週の報道もまた、このニュース一色となっています。
メイ首相は9日水曜日に電話で祝意を示し、緊密な英米関係の継続を強調したとされ、昨日トランプ氏は、できるだけ早期に訪米することをメイ首相に要請したとのことです。
また、英国のEU離脱を進めた英国独立党のファラージ元党首は、トランプ氏の大統領選を支援するなど、個人的にも親しい関係にあることからも、トランプ氏との関係を築くために、英国の閣僚が、ファラージ氏を非公式の仲介者として利用することも主要英国日刊紙が伝えています。
昨年12月には、トランプ氏のイスラム教徒の米国入国禁止呼びかけの発言を非難して、トランプ氏を英国入国禁止にするよう英議会に求めるオンライン請願が行われ、12月9日の段階で36万人以上が署名したため、英国下院は審議するかどうか検討したという経緯もあります。
しかし、英国とトランプ氏の関係は必ずしも良好なものではありませんでした。それは、 昨年12月には、トランプ氏のイスラム教徒の米国入国禁止呼びかけの発言を非難して、トランプ氏を英国入国禁止にするよう英議会に求めるオンライン請願が行われ、12月9日の段階で36万人以上が署名したため、英国下院は審議するかどうか検討したという経緯等からも見ることができます。
この審議は行われなかったようですが、発言を避難されたことからトランプ氏は、ロンドンの一部は「過激思想があまりに蔓延していて、警察も身の危険を感じる地域がある」とロンドンの急進的イスラム教徒に言及したために、現外務大臣で当時ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が、「ドナルド・トランプの事実誤認にもとづく発言はまったくばかげている」、「私がニューヨークの一部地区に行かないのは、ドナルド・トランプに出くわす本当の危険があるからだ」と一蹴していました。
このように、英国外務大臣であるボリス・ジョンソン氏に代表されるように、英国とトランプ氏の関係は良好なものではありませんでした。しかし、トランプ氏が米国大統領に選出されたことは受け入れざるを得ず、そして今後は新たな関係を築く必要があります。個人の感情を超えて国のために動くであろうメイ政権の外交手腕をしっかり見ていきたいと思います。