ニュースレター(10月16日)1180.85ドル 米国と中国の指標の悪化で200日移動平均線を越えて金上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1180.85ドルと、前週同価格から2.5%上昇しています。
週明け月曜日は、先週からの上昇基調を受け継ぎ、米利上げ観測後退からのドル安もあり、一時トロイオンスあたり1169ドルまで上昇しました。その後、多少押し戻されたものの、終値ベースでは前週金曜日から0.4%ほど上げることとなりました。
翌火曜日、中国が連休明けで戻る中連休中の上げの利益確定が進み、金相場はロンドン午前中に前日上昇分を失ったものの、午後に下落分を取り戻し、トロイオンスあたり1167ドルと前日終値を上回りました。
同日発表の中国の貿易収支は、予想と前回を上回ったものの、輸入が前年比-17.7%と下回ったことから、中国経済の減速懸念が強まり、欧米株価が下げることとなりました。
また、前日より米国連銀のメンバーの利上げに対する異なるコメントが伝えられていることも、市場の懸念を深め、ドル安を進め金を押し上げている模様でした。それは、エバンズ・シカゴ連銀総裁の「来年半ばが利上げ開始に最適 となおも考える」、ブラード・セントルイス連銀総裁の「初回利上げ後も引き続き異例の緩和的政策に」、フィッシャーFRB副総裁の、「12月の利上げは期待であり、決定ではない」、そしてブレイナードFRB理事は、「待つことが必要、それは労働市場の改善に対し、インフレは、エネルギー価格を除いても頑固 なほどに低い。」というものです。
水曜日は、早朝発表の中国生産者物価指数と消費者物価指数が前回と予想を下回り、生産者物価指数は2009年9月以来の大幅な下落となりました。また、ロンドン昼過ぎに発表の米国の小売売上高が前月比0.1%と予想の0.2%を下回り、前回数値も0.2%から0.0%へと下方修正されたことから、中国や米国の経済先行き不安で欧米株価が下げる中、米利上げ観測は後退し金相場は上昇することとなりました。
また、1170ドル台の200日移動平均線を超えることで、更に上昇へのプレッシャーが高まることとなった模様です。
木曜日の金相場は、前日の上げ基調を受け継いでロンドン時間にトロイオンスあたり1190ドルまで上昇していたものの、昼過ぎに発表された米消費者物価指数と新規失業保険申請件数が予想よりも良かったために、発表後一時トロイオンスあたり10ドルを超えて下げることとなりました。しかし、同時に発表され たニューヨーク連銀製造業景気指数や、その後発表のフィラデルフィア連銀製造業景気指数は予想を下回るものでもあったために、下げを取り戻し更に上昇することとなりました。
本日金曜日は、米鉱工業生産が、予想と同レベルであったものの、前回数値が上方修正されたこと、ロイター・ミシガン大学消費者信頼感指数が予想と前回を上回る良好であったことなどから、前日の上げを多少失いましたが今週の上げ基調は根強いものがあり、この下げも戻し1180ドルあたりを推移しています。
その他の市場のニュース
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週末に発表されたコメックスの金先物・オプションのデータによると、大口投機玉のロングポジションが6月以来の高水準で、Non-reportableのネットポジションが、7月以来初めてネットロングとなっていたこと。 -
先月末に、スイス当局が貴金属取引談合容疑で三井物産など7社を調査することが伝えられていましたが、月曜日、三井物産がロンドンとニューヨークの貴金属ビジネスから撤退すると関係者の話として伝えられたこと。その翌日このニュースは三井物産によって正式に発表されています。 -
金ETFの最大銘柄「SPDRゴールドシェア」の残高が今週14日に7.74トン、15日に5.06トン増加し、700トンとなったこと。
ブリオンボールトニュース
金相場が3日続けて上昇している市場を解説する、米主要経済サイトのMarketWatchの記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここで、エィドリアンは、「金は中央銀行の金融政策への懸念がある場合に上昇する。現在米国連銀のメンバーは(意見がまとまらず)公の場で年内の利上げについて議論をしている状況だ。」と述べています。
英経済サイトのビジネスインサイダーの「思いがけない金の転換期を目撃しているのかもしれない」という記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュの分析が取り上げられています。
この記事では、英国の消費者物価指数がマイナス領域に入り、他の主要諸国でもその傾向が見られること、そして長らく予想されている米国の利上げが、世界経済の停滞などから先送りされる観測が広がっていること等を背景とし、金相場が下げ基調から転換する可能性があるという、エィドリアンアッシュの分析を紹介 しています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(10月12日~16日) -
ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアンアッシュの「金投資家インデックス: 価格上昇で利益確定の売却が進み、3ヶ月連続の下落」
ロンドン便り
今週のロンドン便りは、世界的に成功を収めている、自動車配車アプリのウーバー(Uber)について。
ロンドンでは、このアメリカから進出したビジネスが、ロンドンの顔とも言われるブラックキャブの確立したビジネスを揺るがしているようです。そのため、夏には、ブラックキャブ数千台がバッキンガム宮殿やトラファルガースクエアや国会議事堂の周辺の道路を封鎖するストライキで抗議しました。
その後、先月末には、ロンドン交通局がブラックキャブやミニキャブ等の既存のタクシー組合の要請で、常に5分の待ち時間を必要とし、乗り合いを禁止、そして、ウーバーのアプリはタクシーメーターとして使われており、本来このタクシーメーターを使う権利は、ロンドンの地理を十分に学んだブラックキャブのみが得られるものであるために、ウーバーのアプリの使用を禁止すべきなどの提案を上げていたのでした。
しかし、本日高等法院裁判所はウーバーの携帯アプリは、GPSのデータをサーバーに送信して、車外でその運賃が計算されていることからも、タクシーメーターとは見なされないとし、その使用を認めたと伝えられています。
ブラックキャブは、そのデザインからも確かにロンドン名物で、ドライバーのロンドン市内の地理の知識の豊富なことも有名です。しかし、その運賃の高さは、ロンドン交通局が認めているミニキャブの倍近く、なかなか気軽には使える対象ではありません。
そのため、既にロンドンでは100万人のユーザーがウーバーに登録しているとのこと。そして、今回のロンドン交通局の提案には反対を唱える署名運動に13万人が既に署名していました。
ロンドンに住んでタクシーを使う機会があるユーザーの立場としては、画期的なこの新たなビジネスへの規制が、既存の業界の権利のみならず、ユーザーの権利も十分に考慮に入れて行われることを願うばかりです。