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金投資家インデックス: 価格上昇で利益確定の売却が進み、3ヶ月連続の下落

最新の金と銀の投資家インデックスのデータは、9月に投資センチメントは悪化したことを示しています。

米連邦準備制度理事会が、ゼロレートからの金利引き上げを先延ばししたことが、金・銀投資傾向にどのような影響を与えたのでしょうか。ここで、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが解説しています。

メディアの見出しを見る限りでは、ジャネット・イエレンFRB議長が利上げに踏みきれなかったことで、コイン販売店は在庫が尽き、造幣局では記録的な販売量となり、特に銀貨の高い需要を満たすために、時間外も働いていることが伝えられています。

しかし、これらの数字は、新たな需要のみについてであり、現物地金の売買サイクルの一部分でしかありません。そして、通常金貨や銀貨は小売り店を介して販売されており、世界では5つの主要金貨を鋳造する造幣局のうち、2つの造幣局のみが直接消費者へとオンラインで販売をしています。それは、カナダ造幣局中国人民銀行であり、トルコ造幣局アメリカ合衆国造幣局、南アフリカ造幣局は、認可された業者を介して販売しています。

つまりは、既存の金貨や銀貨所有者が保有金貨や銀貨を売却している状況等は明らかとはなっていません。また、小売の高いマージンを支払うこと無く、ラージバーなどへ大規模な投資をしている個人投資家の情報も、必ずしも明らかにはなっていません。

これらのデータが、オンライン金投資サービスでは世界最大のブリオンボールトでは得ることが可能なのです。

ブリオンボールトは、個人投資家が専門市場で利用されている金地金価格で、専門市場で認可されている貴金属專門保管会社に貯蔵されている、品質が保証されている金地金を、24時間オンラインで購入することを可能とします。

そして、金・銀地金は1グラムから購入できますが、投資効果は2000ドル(約24万円)以上からとなり、平均的には5万ドル(約600万円)の資産が保管されています。これは、米国の平均的な家庭の資産の約10%となり、資産ポートフォリオにおいては、典型的な割合となります。

もちろん、この平均的投資額は、ブリオンボールトを利用する、ファミリーオフィス(米国の資産管理会社)やチャリティー団体、投資ファンドや富裕層の投資家によって、引き上げられています。そのため、典型的な投資家の中央値は15,000ドル(約180万円)となり、この米国の典型的に保有されている資産の割合においては約18%と高く、典型的な金の資産ポートフォリオに含まれる割合よりは高くなっています。

ブリオンボールトの金投資家インデックスは、その89%が欧米に居住する57,000人のユーザによる取引されたデータを基に割り出されています。そして、この指標は、2012年にローンチされて以来、多くのメディアで金市場の分析のために利用されており、ブリオンボールトにおけるその月の購入者数と売却者数のバランスを表し、投資傾向を示すものです。

この数値が50の場合、その月の購入者数と売却者数が完璧に一致したことを意味します。先月は、このインデックスが8月の52.8から52.6へと多少下げることとなりました。これは、6月の54.6から3ヶ月連続で下げたこととなり、過去8ヶ月で最も低い水準となります。

銀投資家インデックスの下げは、銀価格が金よりもボラティリティが高いように、より大きいものでした。銀投資家インデックスは、6月に過去2年間で最高水準まで上げていましたが、先月は8月の54.5から更に下げ、51.7となっていました。

重量にすると、ブリオンボールトのユーザーは、200キロの金を前月から増加させ、その保管量は過去最高の34.3トンとしています。そして、過去9ヶ月間で7ヶ月増加させているなど、その増加傾向は2013年の春以来の強いものがあります。

ブリオンボールトのユーザーは、銀の保管量も3トン増加させ、過去最高の531トンとしています。これは、8月末から0.6%の増加となっていますが、年初からの増加量は、金の増加傾向とは異なり強いものではありません。

年初から現在に至るまでに、2015年に金は1.6トン増量し、昨年同時期より85%増となっています。また、銀の保管量も42.3トン増量し、昨年同時期と比較して20%増となっています。

そのため、2015年9月に、金投資傾向は多少弱まったものの、継続しているといえるでしょう。それは、重量においては、ネットで購入量が上回っており、購入者数も、引き続き売却者数を上回っていることからも明らかです。しかし、その状況は、メディアの見出しを飾る金貨や銀貨の販売量には劣るものがあるようです。

それは、なぜでしょうか。金価格は、3ヶ月連続で下げた後9月に安定していました。その価格の上昇がバーゲンハンター的購入を遠ざけたようです。実際、米雇用統計後の価格の上昇時には、利益確定の売却が進んでいました。これは、特に銀において顕著でした。

将来的には、米連邦準備制度理事会がゼロレートからの利上げに踏みきれなかったことで、投資家の先行き不透明感は広がっています。そして、それが金相場に影響を与えていたかもしれません。貴金属はこの夏の過去5-6年の再低値から戻してはいますが、その価格は方向性を模索しているようです。

長期保有の金・銀投資家は、引き続きその保管量を増加させ、銀においては新たな資金も流入してきています。しかし、現物地金のパニック的購入の波は、金貨や銀貨の小売業以外では起きていません。専門市場の金・銀地金は十分に在庫があり、個人投資家は、ブリオンボールトを利用することで、典型的な小売業の10%のマージンを支払うこと無く、銀においては20%の売上税を払う必要もなく、金・銀投資を行うことができるのです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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