コモディティ価格全面高の先
コモディティ市場専門家として、市場分析記事を様々な主要経済誌に執筆している、丸紅経済研究所代表柴田明夫氏が、コモディティー専門情報サイトrigoo.netの週間コモディティ・レポートで、昨今のコモディティ市場とその先行きを解説しています。
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コモディティ価格は11月に入って一段と騰勢を強めている。原油が1バレル=87ドルと、昨年後半以来続いていた70~80ドル台前半のこう着相場を上抜け、金は1オンス=1400ドルを突破し史上最高値を更新した。銅地金は1トン=8800ドル台を付け、リーマン・ショック以前のレベルを回復した。大豆、小麦、トウモロコシなども7月のレベルから3~8割上昇し、大豆は2008年6月以来の1ブッシェル=13ドル台に乗せた。砂糖は30年ぶり、コーヒーが13年ぶり(図1)、綿花は1995年の史上最高値を更新した。商品の全面高を映して、代表的な商品指数であるロイタージェフリーズ・CRB指数(1967年=100)も320ポイントと、約2年ぶりのレベルまで戻っている。
ここにきてコモディティ価格が騰勢色を強めたのは、米連邦準備銀行(FRB)が11月2-3日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、2011年6月末まで6000億ドルの米長期国債を追加的に購入する量的金融緩和を決定したことにある。ただ、足元の動きとしては米国の金利・為替により左右される展開となっている。
FRBによる米国債の買い入れは11月4日から始まっているが、買い入れの中心が残存期間5~6年物であり、市場が期待していた30年物の長期国債が買われなかったこともあり、10日の市場では長期債が売られ金利が上昇。この結果、日米金利差が拡大し、為替市場でドル高・円安が進み、金が1400ドルを割り込む格好となった。また、中国でも10日夜、預金準備率が0.5%引き上げられ、10月に続き2カ月連続の引き上げになったことで、金融引締め⇒景気減速⇒穀物、原油、銅などコモディティ需要の抑制、といったシナリオから穀物、銅などの上昇の頭が押さえられている。ただ、中国の金融引締めはあくまでも強過ぎる景気にブレーキをかけるものであり、景気失速につながるものではない。ちなみに、中国の消費者物価(CPI)上昇率は、9月の3.6%から10月4.4%と、インフレ警戒レベルとされる3%水準を大幅に上回った。
ニューヨークWTI原油価格(期近)も、11月に入って1バレル=87ドル台前後で推移するなど、昨年後半より続いていた70~80ドル台前半でのボックス圏を上抜いている。世界の石油需要が過去最高水準を更新していくとみられることから原油の下値は固い。国際エネルギー機関(IEA)のオイル・マーケット・リポート(2010年10月)によると、2010年の世界の石油需要は、日量8694万バレルで、過去最高であった2007年の同8650万バレルを抜き、2011年は同8816万バレルと9000万バレルに迫る(図3)。この牽引役は中国だ。世界の石油需要が2007年~10年にかけて停滞する間、中国の需要は日量760万バレルから同915万バレルへ、155万バレル拡大。2011年には同953万バレルとなる見通しである。すでに世界需要の1割を超え、輸入もすでに09年に日量400万バレルとなり、輸入依存度は50%を突破している。
一方、供給面からは原油価格が一気に90ドルを突破するには力不足だ。石油輸出国機構(OPEC)は10月14日の総会で、現行の生産目標(日量2485万バレル)を据え置いた。ちなみに、OPECは2009年1月以降、日量420万バレルの減産を続けている。現在の価格が加盟国にとって満足の行く水準であり、太陽光発電やオイル・サンドの開発など脱石油の動きも加速させることはないとの判断のようだ。これは、言い換えればOPECのスペアキャパシティ(生産余力)が日量600万バレルを超えていることを意味し、市場に供給不安は無い。米週間石油統計で原油やガソリン在庫が1990年以来の高水準にあることも価格圧迫要因である。
シカゴ穀物も上値余地はある。2010年6月まで1ブッシェル=4ドル台で推移していた小麦は7月に以降上昇に転じ8月に入って約2年ぶりに8ドルを突破した。トウモロコシも3ドル台前半から4ドル台へ、大豆も9ドル台前半から10ドル台に上昇した。その後、投機マネーの利益確定の売りもあって一たんは値を下げたものの、10月のUSDA需給報告で、2010年の米国の穀物生産が前月時点から下方修正されたのを契機に、11月のUSDA報告で、さらにトウモロコシ、大豆の生産量・在庫量が下方修正されたことで王制を強め、大豆13ドル台、小麦7ドル台、トウモロコシ6ドルを付けた(図表6)。
コモディティ価格は、当面は米金利やドルをにらんだ利食い売りや手仕舞い売りに押されることはあっても、需給ファンダメンタルズは良好であり強力な売り材料は見当たらないことから、年末に向けて上値を試すことになりそうだ。
(図1)
ニューヨーク砂糖(セント/ポンド)&コーヒー(セント/ポンド)

(資料)ニューヨーク・マーカンタイル取引所データより作成
(図2)

(図3)

(資料)IEAオイル・マーケット・リポートより作成
(図表6)

(資料)CBOT
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