インフレ&リスクヘッジ商品としての金再認識へ
丸紅経済研究所代表柴田明夫氏が、コモディティ専門情報サイトのrigoo.netで、インフレおよびリスクヘッジ商品としての金について解説しています。なお、この記事は2月21日に、先サイトに掲載されたものです。
金が再び上昇してきた。ニューヨーク金相場(期近)は、年明け1オンス=1400ドル台でスタートしたものの、NY株価の上昇に加えて中国など新興国の金融引締めに対して、インデックスファンドがポジション調整に入ったことから急反落し、1月28日には1307ドルの安値を付けた。12月7日の史上最高値1431ドルからの下げ幅は124ドルである。1月初め60万枚近くあった取組高は2月1日には46万枚まで急減し、新たな買い余地が出てきた。実際、玉の整理が進むなかで、金は1300ドルを割ることなく2月に入って再び切り返し1400ドルに迫っている。
図表1は多少乱暴ではあるがコモディティの価格と出来高、取組高から見た市場の潜在量を整理したものである。ABCD4つの局面のなかで、市場の潜在力が強いのは人気化しているA局面とポジション調整が進んで価格も下げ止まったD局面だ。現在の金相場は、D⇒Aに向かう局面といえよう。その後、金はA⇒C⇒Dという局面に向かうものの、今回のD⇒Aの再上昇局面は、1400ドル台の回復に止まらず、更に高値を試す公算が大きい。特に、チュニジアの「ジャスミン革命」(同国の国花に因み名付けられた市民革命)が1月25日にエジプトに飛び火し、2月11日に31年にわたるムバラク政権が瞬時に崩壊すると民主化の波が次々と中東諸国に伝搬。中東情勢の緊張が高まるなかリスクヘッジ、インフレヘッジとしての金の重要性が一段と強まっているためだ。因みに、GFMS社によると2月18日の主要市場における金ETF(上場投資信託)の取組高は1519トンとなり、2009年の330トンから急増している。
(図表1)

(資料)筆者作成
一方、金相場の先行きにとって、インフレを警戒した金利上昇やそれに伴うドル高が足かせになるとの見方もある。この点、筆者はインフレと金利上昇との関係には、①インフレ懸念が生じてきたインフレ初期で金利・ドルに先高観が生じる段階、②インフレが顕在化し金利・ドルが上昇する局面、③すでにインフレが高進し金利・ドルが高水準にある段階、の3つの段階があるとみている。この内、金あるいはコモディティ価格が力強く上昇するのは②の局面であり、現在がまさにその局面にあるといえよう。また、ドルと金の関係については、逆相関関係が指摘されるが、図表3のように、金が低迷していた1990年代から2000年初めまでは必ずしも長期的に明確な逆相関関係は確認できない。特に、金が力強い上昇トレンドを描き始めた2003年~07年にかけては、ドルが上昇するなかで金も500ドルから700ドルへと上昇した。ただ、リーマンショック以降、長期的なドル不安が顕在化してくるなかで、ドルと金は逆相関関係が鮮明になっている。
(図表2)

(資料)筆者作成
(図表3)ニューヨーク金相場とドルの推移

(資料)NY金、株価より筆者作成
また一般に、金価格は実質金利と逆相関関係にある。過去の経験によると、米長期金利(米10年国債利回り)から消費者物価上昇率を差し引いた実質金利が3%を切るとインフレ懸念から投資魅力が強まり金は買われる。1970年代後半のハイパーインフレ時代には、実質金利がマイナスとなるなかで、金は1979年初めの200ドル台から1980年の800ドル台に駈け上がった。しかし、新たに登場したレーガン大統領の強いドル政策と、ボルカーFRB議長のマネタリズム(マネーサプライを一定に抑える政策)により実質金利が急上昇すると、金は急落に転じた。投資家にとって、金利の付かない金を持つよりは、米国債を買って3%を超える実質金利を確保した方が得だからだ。この意味では、実質金利が3%を上回っていた1990年代までは、金に出番はなかった。しかし、2000年代に入って歴史的な低金利が続くなか、すでに米国の実質金利は3%を大きく下回っており、ドル資産に対して金が輝きを増しつつある(図表4)。
(図表4)

(資料)NYMEXより筆者作成
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