金市場ニュース

ますます大きくなる中国の存在感

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、1月初旬の金価格動向の分析と共に、昨今の中国市場を「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で解説しています。

先週も書きましたが年初から動きの激しい相場が続いています。金価格は、ファンドの売りにより1410ドルから1360ドル台まで下がっていますが、実需 の激しい買いがマーケットに入っており、ファンドの先物売り、実需の現物買いがせめぎあっています。価格が下がれば下がるほど実需の買い意欲は強くなり、 現物の逼迫でプレミアムが高騰するという自体になっています。そのため実際にはプレミアムを加味した現物の価格と先物の価格の値差が狭くなっているという ことができます。

この現物買いの主な発信地は中国と東南アジアです。昨年末、ゴールドが1420ドルまで上昇して一年が終わったときは、まったく現物需要はなく、どちら かと言えばスクラップの売りが強かったのですが、1月4日にファンドのポートフォリオのリバランシング(昨年ゴールドの価格が高騰したために、ポートフォ リオに占めるゴールドの割合が上がりすぎたため、その是正としてゴールドを売却、つまり利食いしたということ。)による金売りをきっかけとして、ファンド の勢の金売りがストップを引き出し、一挙に1370ドル台までニューヨークで急落しました。しかしこのレベルは相場高騰の前の12月半ばに実需が積極的に 買ったレベルであり、今回も予想どおり激しい買いが見られており、ファンドの売りを実需が拾う展開に。そして1月8日の雇用統計では米経済の復調の兆しは 見られず、金融緩和のさらなる継続、そして過剰流動性がまだしばらく続くという見方から金は上昇。一時1400ドル手前まで戻しましたが、中国の預金準備 率の引き上げニュースで1月14日金曜日夜にふたたびファンドの売りが活発化、ゴールドは下落して1370ドルを割り込んでいます。

ここから中国の話。



昨年中国は約350トンの金を産出し、世界最大の産金国の座をさらに確固たるものにしたようです。そして、さらに驚くべき数字は、中国の昨年の金輸入 量。10月までで210トンと発表されてましたが、おそらく通年では250トンくらいになるのではないでしょうか。世界最大の金産出国が、世界有数の金輸 入国(インドに次ぐ)であるのです。ということは、生産量350トン、輸入量250トンと見積もってもざっと600トンが、中国国内の金需要ということに なります。昨年の1月から10月までの金輸入量が40トン足らず。ということは今年はのその輸入量は昨年の7倍以上に伸びたということになります。この背 景にあるものは何でしょうか。さすがに昨年は彼らの買い方は異常でした。私の会社も中国に金を輸出していますが、とにかくその量は500kgとかではなく 最低でも1トン、そして多くの場合2トンという単位で引き合いがあります。ちょっと単位が他の地域とは違うのです。 そしてその背景と考えられるのは中国の四大商銀が積極的に金のビジネスに力を入れ始めたことです。その中でも中国工商銀行(ICBC)は、特に金に力を 入れており、WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)と戦略的提携関係を結び、ビジネスを推し進めています。その現状をみてみることにより、おそるべき 中国の可能性を考えてみたいと思います。 中国工商銀行はもう数ヶ月前からいわゆるICBC GAP(純金積立、GAP = Gold Accumulation plan)という商品を主な都市圏で実験的に開始していましたが、ようやく昨年12月から正式のスタートになりました。しかし、その数ヶ月間の「実験」期 間中にほとんど宣伝らしい宣伝はせずに、なんとすでに100万口座が開設され、10トン以上の金が買い付けられたそうです。本家本元の日本の純金積立のす べての業者の口座を合わせても70万口座。それも10年以上の歳月と莫大な広告費用をかけた結果です。ちなみにこの商品の最低積み立て額は一月200元 (現在の為替で約2500円)か1日あたり1グラムの金。 WGC極東代表であり、私の個人的な友人でもある豊島逸夫氏によると、中国工商銀行の総口座数はなんと2億。このすべてにわずか1グラムの金を売ること ができたら、なんと合計200トンも買いになります。中国全土に16000支店あるといいます。そして1.5日あれば、そのうちの半分の支店に金の現物を 届けることができるロジスティックスがすでに存在しています。そしてもうひとつちょっと怖い事実を挙げておきましょう。同じく中国四大商銀のひとつ中国農 業銀行の口座数はなんと3億を越えているそうです。そして同じように金のビジネスに力を入れています。当然のことながら、四大銀行の残りの二つである中国 銀行、建設銀行もしかり。そしてこの四行が現在海外からの金輸入の許可を中央銀行からもらっているのです。(中国では金の輸出入は自由化されていませ ん。) 年初の急落場面が、まさに渡りに船、絶好の買いのチャンスとみて中国の銀行が(ひいてはその顧客である個人が)強烈に金現物を買っています。中国での金 のリテールビジネスがまさに始まったばかりであると考えると今後、この国の人民が世界の金相場に与える影響は想像を絶するものになるのではないでしょう か。こんな現物の引き合いを毎日のように見ていると、いくらファンドが売ったところで、そこは全部中国が飲み込んでしまうような気がしてしまいます。私が どうしても金に弱気になれない理由のひとつはやはりこの中国の存在なのです。

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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