【金投資家インデックス】年初に過去9年間同様に金相場が上昇したことで金投資需要は減少
利益確定の金売却が新規顧客の金購入を上回っていました。
金投資の需要は1月に減少し、6か月連続していた需要の高まりは、既存顧客の利益確定の売却が新たな投資需要を上回り途切れていました。エィドリアン・アッシュはここで解説をしています。
これは、ドル建てで9年連続で年初1月に金価格が上昇するという中で起きていました。このような現象は多くの投資資産の価格動向を見ても珍しいと言えるでしょう。
金は、米国とイラン情勢の緊迫化や中国の新型コロナウィルス感染者の急増により、2020年1月に急騰しましたが、ブリオンボールトにおいては、顧客保有の金総量は0.6%減少し、12月の史上最高値からほぼ250キロ減の39トンへと下げていました。
しかし、1月に重量で金総量は減少したものの、金価格上昇からも評価額においては史上最高の前月比3.4%高の20億ドル(2160億円相当)となっていました。
また、1月は新規顧客数が、トランプ大統領が選出された2016年11月以来3番目に高いもので、1月としては2013年以来の高さとなっていました。
そのために、先月月間で購入量が売却量を上回った顧客数は前月比4.7%増加していたものの、売却量が購入量を上回っていた顧客数が88.7%増加と、昨年6月以来の高さとなっていました。
その結果、ブリオンボールトで実際に取引された数値を基に算出される金投資家インデックスは、53.5と6か月ぶりの低さで、前月の55.6から下げていました。
金投資家インデックスは50であった場合、その月の購入が売却を上回った顧客数と売却が購入を上回った顧客数が完璧に一致したこととなります。そして、昨年6月はひと月の金価格の上げ幅が5.9%と2016年2月以来の大きさとなり、10年ぶりの低さの49.1を付けていました。
2020年1月はこの価格上昇幅とほぼ同水準の5.7%で、月間平均金価格はトロイオンスあたり1560ドルと、30年ぶりの大きな価格の下げを見せる直前の2013年3月以来の高さとなっていました。
この年初の金価格のパターンは何を意味しているのでしょうか。
過去9年間に金価格が1月に常に上昇する中で、金投資家インデックスは一回を除き常に前月比下げていました。
これは、通常一般投資家は1月にポートフォリオの資産の見直しを行い、金市場は1月に上昇する傾向があるために、すでに金を保有している投資家は利益確定の機会と見るのが背景にあるためです。
しかし、そのためにも、新たな金投資をする投資家による需要が年初に高まる傾向もあります。実際にブリオンボールトでは、2020年1月は7年ぶりの多くの新規顧客数となっていました。これは、政治や経済の不透明感からも、金相場のボラティリティは高まっており、新たな金地金現物投資への需要も高めていることが背景にあります。
しかし、既存の顧客にとってはポートフォリオのリバランスの機会でもあるために、先月の利益確定は、2019年に金を先月比平均トロイオンスあたり170ドル安く購入した投資家の多くによって行われていました。これは、昨年金を購入した顧客は全体の10.9%で、売却量が購入量を上回っていた顧客の14.1%であったことからも見受けられます。
過去5年間の月間平均と比較しても、1月の新規顧客数は38.6%増加していました。そしてその傾向は地域で大きく異なり、ユーロ圏からは121.6%増で、英国は5.4%減、米国は29.9%減となっていました。
また、銀においても金同様にその価格がドル建てで5%上昇し、昨年9月以来の高さでトロイオンスあたり17.97ドルとなっていました。
そこで、月間で銀の購入量が売却量を上回っていた顧客数は、12月の6か月ぶりの低さから6.7%上回っていたものの、売却量が購入量を上回っていた顧客数は36.6%急増していました。
そのために、銀投資家インデックスも6か月ぶりの低さの52.6と前月の53.5から下げていました。
しかし、金と同様にブリオンボールトで顧客が保有する銀の評価額は、1月に史上最高の4億7700万ドル(520億円相当)で、さらに重量においても前月比7トン増で史上最高値の829トンとなっていました。
そして、評価額2800万ドル(30億円相当)のプラチナを含めて、ブリオンボールトの保管する顧客の金・銀・プラチナの総評価額は約25億ドル(約2710億円相当)と新たな記録で、昨年同月比20.6%増となっていました。
先をまとめると、貴金属投資全体では、新たな投資家需要においては7年ぶりの高いものとなっていること。そして、銀投資は引き続き重量と評価額史上最高値を付ける等と需要が高まっているのに対し、金投資は短期的利益確定が年初に行われていたということでしょう。
この傾向は今後も継続することでしょう。それは、政治的、経済的不透明さが後退する気配がないことからも、金価格は引き続きボラティリティを高め、新たな長期的投資を行う一般投資家を引き付けることからです。