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【金投資家インデックス】ロシアのウクライナ侵攻で金価格が急騰し、金投資需要は減少

13ヶ月ぶりの高値となった金価格が投資家の売りに拍車をかけることとなりました。
 
金投資需要は危機時に高まる傾向があります。
 
2月末にロシアがウクライナへ侵攻した際の貴金属価格の急騰を見れば、それが正しいと思うことでしょう。
 
しかし、金デリバティブの投機的取引が急増している一方で、現物投資においては、ファンダメンタルを追う傾向があり、実際のところ欧米の投資家の間では金投資に拍車がかかるどころか、金価格の急騰によって、現物の地金の純需要は2019年半ば以降で最低に下げていました。
 
プーチン大統領のウクライナ侵攻による株式市場の下落や数十年ぶりのインフレ率の高さからも、2月の金の月間平均価格は2.1%上昇し、トロイオンスあたり1856ドルと2021年の年初以来の高値を記録していました。
 
金の平均価格が米ドルまたは英ポンドで2月よりも高くなったのは過去に5回のみで、いずれもコロナ危機の際であり、ユーロ建てにおいては、過去に一回のみでした。
 
そのため、既存の金地金所有者の利益確定の売却に拍車がかかる一方で、新規投資を抑制し、ブリオンボールトの売却量から購入量を差し引いたネット売却量は300キロを上回り、2019年6月以来の大量のネット売却量となっていました。
 
そして、金投資家インデックスは、売却を選択する人が増加し、購入者が減少したことから、1.9ポイント低下し51.9と、こちらも2019年6月以来の低い数値となっていました。
 
この数値が50.0を下回った場合は、月間で買い手よりも売り手の数が多いことを意味します。2020年3月のコロナ危機では、金投資家インデックスが65.9と10年ぶりの高水準となっていました。
 
金投資家インデックスと月間平均金価格の推移 出典元 ブリオンボールト
 
 
危機を利用した現金化ということでしょうか。必ずしもそうとも言えないようです。
 
歴史上、軍事紛争や政治的混乱で、地金投資価格が全く反応しなかった例は数多くあります。例えば、2008年初頭のロシアによる南オセチアへの攻撃、そして2011年の「アラブの春」に対するスポット金価格の無反応を思い出してください。
 
また、歴史上、多くの紛争などで金価格は上昇しましたが、通常は一時的で、ファンダメンタルに沿った傾向が下げであれば、その後その傾向を取り戻していました。(例えば、2014年初頭のロシアのウクライナのクリミア地域への侵攻と併合など)そして、地政学的な緊張が金価格をより深い上昇トレンドの中で実際に後退させた期間もあります。(例えば、北朝鮮の2017年のミサイル実験)
 
より一貫して、重要視されてきたのは、紛争や混乱が欧米の金融市場に打撃を与えるかどうかということです。なぜなら、結局のところ、金はクラスター爆弾や致命的なウイルスから身を守ることはできませんが、しばしば投資ポートフォリオの保険として機能し、他のより一般的に収益性の高い資産の損失をカバーすることができるからです。
 
株式市場の下落は金価格の上昇と密接に関係しており、 特に長期にわたる下落においては顕著となっています。そして、2022年初頭の今日、ロシアの欧州の民主主義に対する攻撃により、貴金属は再びポートフォリオのヘッジとして機能し、株式やその他のリスクオンの資産の損失をカバーするのに役立っているのです。
 
先月末のロシアの侵攻のニュースにより、金価格はトロイオンスあたり1970ドルまで急騰し、米ドル建てでは2022年年初から8%以上、英ポンドとユーロ建てでは10%の上昇となりました。一方、世界の株式市場は、MSCIワールドインデックスで昨年末から7%以上下落しています。したがって、プーチン大統領のウクライナ攻撃に対する考えや希望や懸念がどうのようなものであれ、投資のリバランスは、今ここで冷静に行う必要があるのです。
 
金地金所有者の売却量は今のところわずかであり、推測ではありますが、地政学的・経済的見通しの悪化の中で、価格が大幅に引き下げられれば、堅調な需要が生まれることでしょう。
 
過去12ヶ月の平均と比較すると、2月のブリオンボールトにおける金需要は重量で5.9%増加しましたが、売りは60.9%も急増していました。そのため、この月の購入量を差し引いたネット売却量は382キログラムとなり、価格上昇によって2019年6月に775キログラムのネット売却量となった際以来最も多く、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒから顧客が選択した保管場所で保険がかけられて貯蔵されている金の総量は、0.8%減少し昨年5月から初めて47トンを割っていました。
 
金価格が3ヶ月で最も急騰した一方で、保管されている地金の保有を開始または追加した顧客数は、2月に1月の数字から6.6%減少し、中国で発生した新型コロナウィルスが世界的に広がる直前の2019年12月以来最も少ない数に減少していました。
 
それに対して、既存の金保有を減少下顧客数は53.3%急増し、 良好なファイザーのワクチン治験結果で金価格が大きく下落した2020年11月の66.5%の急増以来、12ヶ月で最多となっていました。
 
銀投資家インデックスと月間平均銀価格の推移 出典元 ブリオンボールト
 
ブリオンボールトにおいて実際に行われた取引をベースに算出し、個人投資家の銀投資傾向を数値で表す銀投資家インデックスは、1.0ポイント低下して50.7となり、先月2019年1月以来の低水準に落ち込んていました。
 
一方、銀の需要は全体的に堅調で、価格が3ヶ月ぶりの高値に上昇する中、投資家の売りと買いが均衡し、ブリオンボールトの顧客の総保有量は6ヶ月ぶりの低さではあるものの1228トンを維持していました。
 
プラチナ価格もまた上昇し、先月は90kgの売り越しで顧客の保有量が2.0トンとなり、パラジウムがブリオンボールトのプラットフォームに追加され、 ディリーレポート上で見ることができる顧客の保有量が24kgとなったため、顧客がブリオンボールトで保管している貴金属の評価額は39億ドル(4,510億円相当)を超え、 2021年5月の最高記録である40億ドルに近づいていました。
 
つまり、プーチン大統領が西側の民主主義国家の市民を攻撃する中で、利益確定、現金化、リバランスなどとどのようにこの現象を呼んだとしても、現物地金への個人投資総額は増加しているのです。ロシアの侵攻がウクライナの抵抗と西側諸国の制裁に直面するにつれ、この傾向を支える金融市場の動きは加速する可能性があります。
 

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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