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WGC GoldDemand Trend 2012年レポート

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、先週発表された、ワールドゴールドカウンシルの最新レポートについて解説しています。

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先週、World Gold Councilから「Gold Demand Trend Full year 2012」が発表されました。今週はこのレポートの中身を点検しましょう。

「要旨」

2012年のゴールドの需要は金額ベースで2360億ドルとなり史上最高となりました。数量ベースでは4405.5トンとなり、2011年からは4%の減少となりました。個人投資が減少した分を中央銀行と機関投資家の買いがカバーしきれていないということです。2012年の主なテーマは「インドのゴール ド需要が不調だったこと」、「中央銀行のゴールド買いが50年来の高いレベルとなったこと」そして「中国のゴールド買いは続いていること」です。

「全体」

上のグラフでは2012年はテクノロジー(産業用需要)と投資が少し減って、中央銀行の買いが増えているのがわかります。

過去5年間に、宝飾、テクノロジー、ETFから地金やコイン投資、そして中央銀行にゴールドの需要はシフトしているのが上のグラフからは読めます。全体としては過去5年間の平均よりもゴールドの需要は15%伸びています。

上のグラフは宝飾(薄緑)と地金とコイン(緑)の価値ベース(ドル建て)の需要の動きです。宝飾は2011年とほぼ変わらず。地金・コインは若干の減少です。ドル建て価格ベースでは6%の上昇であったのにもかかわらず、宝飾の価値ベースでは需要は3%伸びました。宝飾需要は価値ベースでは史上最高長期 的な上昇傾向は変わらず。

「インドの需要」

2012年はインドにとっては複雑な一年となりました。前半は、輸入税の増税、ゴールド輸入に対する禁止措置やルピー安によるインド国内価格の高騰などを受け、まさに逆風状態でした。しかし後半に入ると消費者心理の好転により、勢いを取り戻し、第四四半期には結婚式シーズン、そしてディワリというヒン ズー教のお祭りという環境もあり、ゴールドの需要はおおきく改善しました。特に12月には、近い将来インド政府が再びゴールドに関する輸入税を引きあげるとの見方から、税金引き上げ前の駆け込み需要が生まれました。

2011年と比べると年前半と後半の差がよりはっきりします。2012年前半は前年同期比で、36%減、しかし年後半は23%の増となっています。 2012年通しでは、12%の減少でインドのゴールド需要は864.2トンとなりました。それでも過去5年の平均である845.9トンよりも多い数字と なっています。2013年に入っても1月21日から輸入関税が4%から6%に上がる直前の駆け込み需要が見られました。しかしその影響で今後、輸入が低迷する可能性があります。

「中国の需要」

過去二年間中国の消費者のゴールドに対する姿勢は首尾一貫しています。上の2011年と2012年の中国のゴールド消費者需要はほぼ変わらず同じです。 過去5年の平均と比べると過去2年は大きく伸びていますが、この背景にあるのは人口の多くの部分に対する都市化、24カラットの宝飾に人気が集中していること、そして個人投資家に対するゴールド投資商品がどんどん増えていることです。インフレに対するヘッジとしてのゴールドの魅力に気づいた投資家も増えてきているようです。

一方、国内経済のスローダウンやゴールド価格の停滞により、買い控えもみられています。数量的には、中国のゴールド需要は「安定」しているといえるでしょう。投資需要は若干の増加に対して宝飾需要は若干の減少して、合計の需要は前年の3%増。価格価値で考えると投資も宝飾需要も過去最高を記録したことになります。今後は爆発的な需要の伸びというよりは堅実な伸びとなる可能性が高いと思われます。

「中央銀行のゴールド買い」

2012年は中央銀行のゴールド買いがより一段と増えました。ゴールドの全需要に占める割合は2011年の10%から2012年は12%となりました。 セントラルバンクが買った数量は534.6トンでこれは1964年以来ほぼ50年ぶりのレベルとも言える数量です。50年前はちょうどブラジルとパラグアイに新たな中央銀行ができてゴールドリザーブを構築しだした年でした。

2009年の第2四半期に売り手から買い手に回った中央銀行セクターはそれ以来1100トンものゴールドを購入して準備にまわしています。この数字はその前の3年間に中央銀行が売った1143トンにほぼ等しいものです。IMFの統計によると2009年3月から2012年11月までの中央銀行のゴールドリザーブの増加は6%となり、31,597.6トンとなります。

リザーブを増やした国は圧倒的に新興国になります。新興国は近年その外貨準備が急速に増加しており、その大部分が米ドルとユーロに偏重しているため、その多角化が求められていました。まさにゴールドがその対象となり、これら新興国のゴールド買いが膨らんでいったのです。そして資産の多角化という観点から、今後もまだまだ中央銀行のゴールド買いは続きそうです。

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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