金市場ニュース

Standard Bank House View

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、金、銀、プラチナ、パラジウムの今後一年の価格予想を含む、スタンダードバンクの市場分析を紹介しています。

今週はStandard Bankのアナリストの現在の貴金属マーケット分析の骨子を紹介します。

「ゴールド」
(価格予想)
(需給予想、トン)
(Chart: Gold ETF, Nymex positions & Gold price)
※白い線がETF、黄色い線がNymex投資家ポジション、緑の線が価格

ゴールドとゴールドETFの関係を考えたとき、ETFの残高がゴールド価格に影響を与えているのか、それともゴールド価格がETFの残高に影響を与えて いるのか一体どちらが正しいのだろうと思うことがあります。現在地上に存在しているゴールドの総量は150,000トンといわれておりこれは有史から生産されてきたゴールドの量にほぼ等しいものです。その中において2280トンというETFの残高はほんの少しにしか過ぎません。そう考えると長期的視点から はETFの残高の減少のせいでゴールド価格が下げているというよりは、ゴールド価格が下げているせいで、ETFの残高が減少していると考えるほうが自然だ と思われます。しかしながら短期的には、被害は双方が影響を与え合ったり、もしくはETFからゴールド価格の方に広がるということが十分にありえます。そう、まさにここ数ヶ月のように。

これらの動きがゴールドの相場に示唆するところはどういうことでしょうか?構造的にはゴールドは再び1650ドル付近まで上昇すると考えます。ターゲッ トは今年の第3四半期。しかしながら短期的視野からは1550ドルを越えることは難しいであろうと思われます。実需の買いによる1500ドルを越える動きにより、ファンドのショートカバーを呼び、1550ドル近辺まで上昇することは可能でしょうが、これ以上のレベルでは逆に実需の現物買いの意欲がなくな り、ETFからの更なる利食い売りが出てくるでしょう。では下値を考えるとおそらくあと200トンくらいのゴールドETFの利食い売りは実需の買いによってサポートされるでしょう。1450ドル当たりが非常に強いサポートラインとなると思います。今年に入ってからの現物買いは非常に強いものがあります。 (※下のチャートの赤いライン)

(Chart: Gold Physical Flow Index - 現物の動き)
「シルバー」
(価格予想)
(需給予想)
(Chart: Silver ETF, Nymex positions & Silver price)

上に書いたとおり、今年第3四半期までにゴールドが1650ドルまで上昇すると考えていますが、短期的には1550ドルを越えられない頭の重たい場面が 続くと考えます。このためシルバーもショートカバーで26ドルまでの上昇がありえると考えますが、もしそうなればその上昇局面では売られるでしょう。気がかりなのはシルバーETFが、ゴールドのそれが大きく残高を減らしているのにもかかわらず、残高を大きくは減らしていないということです。もしシルバーETFが売り始めると現在のサポートである22ドルをサポートするのも大変難しくなるでしょう。この価格の下げにもかかわらずシルバーに対する現物需要はゴールドのように盛り上がってはいません。下のチャートは中国のシルバー輸入量の推移ですが、今年に入ってから低調です。中国での工業用需要が盛り上がっていない証左でしょうか。この数字からはシルバーが大きく上がるとは考えづらいですね。

(Chart : China net imports 中国のシルバー輸入の推移)
「プラチナ」
(価格予想)
(需給予想)
(Chart: Platinum ETF, Nymex positions & Pt price)

PGMマーケットは最近の大きなNymex先物の投資家ポジションのロングの解消にもかかわらず、まだ頭が重たい情況にあります。プラチナもパラジウムも前例がないほど大きく積み上がっていた先物ロングの解消が、新たなロングを作るまず最初の条件と考えていたので、これは少なくともよい兆候であると考えます。しかしながらプラチナ1700ドル、パラジウム700ドルを越えたレベルではロングをするのは推奨しません。長期的視野からはこのレベルでのロングは価値があると考えますが、今後始まるであろう南アの鉱山労働者の賃金交渉を前にしており、1450ドル、680ドルといった一時的な下げ局面がありえると考え、できればそこを拾いたいと考えます。自動車の販売もディーゼル車の主戦場である欧州と日本での販売数が伸び悩んでおり、自動車需要は強材料には なっていません。

(Chart : PT weighted autosales、プラチナ使用量を考慮した自動車売り上げ)
「パラジウム」
(価格予想)
(需給予想)
(Chart: Palladium ETF, Nymex positions & Pd price)

世界の自動車販売をみるとガソリン車に使われるパラジウムにとっては有利な情況が続きます。世界の自動車販売は2012年の7890万台から2013年は8280万台への増加が予想されており、その中でも中国の15%増、アメリカが5.3%増が見込まれており、ディーゼル車中心の欧州の不況を尻目にガソリン車の売り上げは今後も増えると思われます。

(Chart: 世界の自動車売り上げとPGM価格の動き)

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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