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IMF世界銀行総会にて思うこと

野村證券(株)専務取締役などの金融業界の要職を歴任後、事業創造大学院初学長を経て、ベトナム国際大学創立にも力を注ぐ、中澤信雄氏の幅広い経験と国際感覚に満ちたブログから、今回はIMF世界銀行に参加されて思うこととして投稿された記事をお届けします。

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IMF世銀の東 京年次総会は本日で終わり。こ の催事で普段より2万人多い人たちが帝国ホテルや丸の内界隈を賑わした。厳重警戒のなかで東京、日本が意外と賑やかな街 並みに感服していたようだ。

出席者のなかで、主催者側とはいえ、輝いていたのはラガルド 専務理事、綺麗な銀髪と細見の姿は誰の眼にも際だって見えたが、実質世界の金融を握るバー ナンキ連銀議長は心なし静かであった。

バーナンキ議長にとって、昨年6月IMF理事会で専務理事に就任したラガルデは苦手のはずだ。 2008年6月の大阪で開かれた主要8か国(G8)財務相会議で、米国のサブプライム問題から端を発した世界金融危機を 解決するために大量金融緩和 (QE)で対応した米国は世界経済を三つのFの危機 (Finance,Fuel,Food) に晒したとバーナンキに向かっ て発言したのは、当時フランス経済・産業・財政相だった彼女だったのだから。

連邦準備制度理事会(FRB) の量的金融緩和政策(QE) は、通常の金融政策である政策 金利をゼロ金利状態になっても 景気は回復しないとみるや、大型の金融緩和を第一弾を 2009年3月から2010年 3月まで1兆7250億ドル (米国債3000億ドル、 MBS1兆2500億ドル、その他1750億ドル)、第二弾 を2010年11月から 2011年6月までに6000 億ドルの米国債を購入した。合計2.3兆億ドルの資金を市場に供給したが、失業率はなかなか改善しないために、第三弾 (QR3)を2012年9月からMBS(住宅ローン担保証 券)を労働市場(雇用)を刺激 して景気を回復させることにした。しかも、今回は雇用が回復するまで無制限に毎月400億 ドルのMBSを買い続けること になった。

しかし、それをやっても、 GAME・CHANGER(大きく流れを変える)にはならないだろうというのが大方の見方だし、ご本人も金融政策だけでは無理だとも呟いている。

ラガルド専務理事に、総会が開催された東京国際フォーラムで 「先進諸国の公的債務膨張は世界経済の成長を阻害する」と言われてしまっては、バーナンキ 議長は何も発言できなくなってしまったのではないだろうか。 もっとも、セミナーでは議長は 「FRBの金融緩和は新興国の金融市場を不安定にはしていな い」と反論してはいたが。

経済大国第二位の中国の財務大臣、中国人民銀行総裁の欠席は いろんな波紋を呼んだものの、 同銀行の易副総裁が代理出席したが、13日の日中韓討論会はドタキャンした。もっとも同じ場所で開催されたユーロ関連の討論会には出席したというのだ から、中国事情の煩雑さに出席者は困惑したという。とにかく代理といえども、シャンペンの杯を交わしている写真などが、 中国国内紙にでも出たら、国民 からどんなバッシングを受ける かわからない、という事情もあるらしい。

エラい人たちはそれぞれの国の事情を背負いながら、こうした 国際会議に出席するわけだが、 大会社の年に一度開催される拠点長会議の雰囲気に似たものを 感じるのは、所詮生臭い人間の集まりはいずこも違いはないということか。一年間の成果のあがった支店長の発言は明るく、 そうでない支店長の顔はすぐれないというのが通例の儀式であったのを思い出した。

丸ノ内におちた夜の帷を重苦しく感じたのは、今年の総会では 課題だけを俎上にあげたままで、来年のワシントンで結果を 総括することしか、頭脳と権限 をもつエリート集団でも、その程度の機能がないのかという期 待外れからだったのか。

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中澤信雄氏は、早稲田大学政治経済学部卒業。ノムラ・インターナショナル会長兼ノムラ・ヨーロッパ社長の要職を経て、野村證券株式会社専務取締役に就任。以後、国際証券株式会社 取締役社長、三菱証券株式会社(現三菱UFJモルガンスタンレー証券株式会社)初代取締役社長、国際投信投資顧問株式会社 取締役会長等々、証券・投信投資顧問トップを歴任後、事業創造大学院大学初代学長を経て、現在日本ベトナム国際大学創立評議会副会長。エアーズシー証券株式会社 金融経済研究所 所長。

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