金市場ニュース

雇用統計とアメリカ大統領選挙と金相場

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、本日結果が発表された米国大統領選挙と金相場の関わりについて、解説しています。

今週はホットな話題を。

「雇用統計とアメリカ大統領選挙と金相場」

先週はアメリカ東部に多大な被害を与えたハリケーン「サンディ」の影響で、雇用統計が無事発表されるかやきもきしましたが、なんとか予定通り発表され、その内容はマーケットに驚きを与えました。10月の雇用統計、非農業部門雇用者数Non-farm payrollは17万1000人の増加で、市場予想の12万3000人を大きく越える数字、9月の確定値も11万4000人から14万8000人に大幅に改善されました。また失業率も7.9%と9月の7.8%から若干悪化しましたが、それでも8%を割れた数字となりました。

米経済の復調を示す二ヶ月連続の好調な雇用統計の数字からゴールドは大きく売られ、これまでの底値であった1700ドルを割り込んだことで損切りの売り も膨らみ、一時1675ドルまで下落しほぼ反発なしに一週間の引けとなりました。これは9月以来4ヶ月ぶりの大きな下げになります。

しかしこれでゴールドマーケットの流れが変わるのでしょうか?結論から書くと、これでFRBが量的緩和(QE)の政策を方針転換するとは思えません。 12月のFOMCではオペレーションツイストが更なるQEへと変更される可能性も高く、まだまだ金融緩和は続きます。まさに「Bear Trap」、ここで相場の流れが変わったとショートををしても、ディップは長続きしないのではないかと思います。8%の失業率が7.9%になってもこれは FRBが目指すところの失業率である5-6%にはまだまだ程遠いレベルだと、小学生でもわかると思います。

「実需」

また実需の現物需要も1700ドルに近づいた場面ではようやく盛り上がってきており、今回の1700ドル割れでさらにそれに拍車がかかるものと思われい ます。Standard Bank Gold Physical Flowも先週あたりからアジアの買いにより指数が上昇してきています。(下Figure1:0が現物が動いていない状態、+は実需家の現物の買い、-は 実需家の現物の売りを示しています)

「Comexの投資家ロングポジション」

そして急激に増えていたComexの投資家のロングポジションもここ数週間で今度は一方的に減少してきています。10月2日の941トンをピークに毎週 減少を続け、最新の10月30日発表の数字では771トンと一ヶ月でなんと170トンもロングが減少、つまりComexからのゴールドの売りが出たことに なります。今年5-8月の400-500トンというロングの数字から比べるとまだ売ってくる余地はありますが、過去の流れを考えると600-700トン前後というロングは一番Comex Goldが落ち着けるところかもしれません。おそらく金曜日の急落でそのレベルくらいまでもう下がっていると思われます。

「アメリカ大統領選挙」

次の注目点は大統領選挙。6日火曜日に投票が行われ、7日東京時間午前中にはほぼ結果がわかるはずです。巷ではロムニー候補が勝利すればドルが上昇し ゴールドはさらに下落、オバマ大統領が勝利すれば現在の金融緩和路線継続でゴールドは上昇という見方が広がっています。アメリカ東部をおそったハリケーンは現職のオバマ大統領には「追い風」となっており、「国難」の前に国民が大統領支持に結集、大統領選に大きな影響を与えそうです。しかし歴史的にみると失 業率が7.2%以上の時に再選された大統領は1904年のルーズベルト大統領以来、1984年のレーガン大統領(当時は7.4%)しかいないということで す。

オバマ大統領もロムニー候補も今回の大統領選の最大の焦点はアメリカ経済をいかにして立て直すかということ。オバマ大統領はGDPより早い勢いで増えている財政赤字を数年以内にアメリカの経済規模の7%から3%にまで減らすことを目標にし、そのためにおそらく増税、現在の金融緩和継続、ドル安、そして ゴールド高というシナリオ。ロムニー候補は税金を抑え、政府の支出も制限、小さな政府により経済成長を目指す政策であり、国家公務員の削減、連邦政府のリストラ、財政の支出をGDPの20%以内に抑え、予算の均衡を訴えています。

これはドル高、ゴールド安を招く政策。アメリカ経済を立て直すという同じゴールを目指しながら、そのアプローチは全く逆。ロムニー候補は現在のFRB バーナンキ議長の指揮する金融緩和的政策には反対しており、2014年1月の任期切れでおそらくバーナンキ議長の再任はないと見られています。もしそうな れば、2015年半ばまでと彼が宣言している金融緩和は劇的に短くなり、その結果ドル高、ゴールド安が促進されるという見方がなされています。

接戦が伝えられていますが、ハリケーンにも助けられておそらくはオバマ大統領の再選となるのではないかと見ていますが、それも今週半ばにははっきりしますね。

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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