金市場ニュース

日銀の異次元の政策とゴールド

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、先週、黒田日銀総裁の新体制下で行なわれた会合で発表された異次元の政策が及ぼすものについて、金価格への影響も含み解説しています。

日銀が4月4日の金融政策決定会合の後発表した新たな金融緩和政策は市場の予想をはるかに超える大胆なものでした。

・2年間で前年度比2%の物価上昇率をめざす。
・マネタリーベースを2年間で2倍に。
・国債の買い入れを年間50兆円増加させる。
・長期国債40年債も買い入れ対象に組み込む。
・REITも年300億円、ETFは年間1兆円の買い。

など、とりあえずできることを小出しにせず、今できることすべてを一度に出したということで、市場の予想を大きく越える政策に、市場に大きなインパクトを 与えました。これを受けて、この日午前中、前日比200円安だった日経平均は強烈に買い戻され、結局終値ベースでは275円高と安値からは500円近く上昇して終わりました。また長期国債も10年物の利回りが0.425%と過去最低を記録、為替は92.80銭から96円までドルが急騰、円が急落しました。

その流れは金曜日も続き、日経平均は一時13000円を超えて、国債利回りも一時0.3%台にまで下落。ドル円は一時97円まで上昇と、日銀の「バズーカ砲」はその威力をとりあえず十分に発揮しています。ただこれは宣伝効果、人々の期待に油を注いでそれがうまく点火して一瞬にして燃え上がったというとこ ろ。問題はこの火がこの先もうまく続いていくかどうかでしょうか。日本は25年間、経済停滞の中、赤字を積み上げてきており、安部政権はその解消のための リフレの賭けに出たという見方もできます。これがうまく働いて、経済が持ち直し、税収も上がり、財政の健全化がじょじょにでもすすんでいくことを祈ってやみません。

ただこの政策による円の下落が、暴落となり、国債も売られ、悪いインフレがとめどもなくすすむということになるリスクをはらんでいることは確かです。非常に危うい一面があることも忘れてはいけないと思います。4月5日の金曜日の債券市場の動きはそういった恐れを再度認識させるような大きな乱高下でした。 午前中に0.315%にまで低下して史上最低を更新したあと0.62%まで急騰するといったまさに前代未聞の激しい動きとなりました。もし国債の暴落が起こるとすればきっとこんな動きになるのでしょう。

「日本の財政:税収、歳出および公債発行額の推移」

さて、この日銀の「異次元の政策」ゴールドにとってはどんな影響があるでしょうか。まずドル建てのゴールドにとっては直接的は大きな影響はありません。 しかし間接的にはドルが強くなること、そして日本の株高が世界の株高につながるとすれば、これらは弱材料となります。ニューヨークダウは連日史上最高値を更新、日経平均も13000円近くまで上昇しているこの状況(4/8月曜日に13000円を越えましたね)では、やはり投資家の目(資金も!)はゴールドよりも株に向かって当然だといえるでしょう。下のチャートで見ると明らかですが、2013年に入ってから株価とゴールドの価格は見事に反比例の関係にあります。これは実際にゴールドから株式市場へ資金が移動している結果と考えられれます。具体的にはGold ETFから株式市場への資金の流出が今年にはいってから続いています。

「NY Dowとドル建てゴールドの動き」
「ETF残高とゴールドの動き」

円建てゴールドに関しては現在のシナリオではどっちにしても円安傾向になるのは変わらず、ドル建ての頭の重さを勘案しても、やはり円建てではしっかりとならざるを得ないでしょう。

と、ここまで先週のうちに書いていたのですが、4/5金曜日の夜には米雇用統計が発表され、NFPが8万8000人増と市場予想(18万人から19万人)をはるかに下回る悪い数字になり、これによりさらに円が売られ97円台後半、ゴールドは一挙にショートカバーが入り1580ドルまで上昇しました。そして4/8月曜日にはドル円が一時98円後半までまで上昇、円建ての金も5000円を超える急騰で、金曜日の15:30の東京の引けよりも220円高く始まりました。おそらくはドル円の100円越えはもはや時間の問題であると思われます。日経株価も月曜日は13192円で引け358円もの上昇となりました。

円安株高の流れはまだ続きそうです。このままドル建てゴールドのショートカバーが続くようであれば、2月前半に記録した5080円というレベルを抜き、 5200円くらいへの上昇は十分ありえると思います。ただ余りに突然の急騰でもあり、月曜日のTocomでは一般投資家の利食い売りが14トン出ました が、スポットはさほど下がらずそれを吸収してしまいました。思ったよりも海外のゴールドは買い意欲があるようです。先週のような4600円というdipは 今後はあるかどうかわかりませんが、やはり下がる場面では拾っておくほうがよさそうですね。

「円建てゴールド価格の動き」

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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