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日本経済:その見通しと問題点-低成長下、東日本大震災を超えて(その4)

専修大学経済学部教授で、金融政策の専門家である田中隆之経済学博士が、日本経済の見通しと問題点について、東日本大震災の影響と、経済低成長の背景を説明し、解説しています。このレポートは(その3)に続きお届けいたします。

日本経済:その見通しと問題点-低成長下、東日本大震災を超えて

(2)貿易収支・経常収支問題

①貿易収支がマイナスに(2011年、31年ぶり)、経常収支黒字も大幅減

②経常収支のマイナス化はあるか?

  • 所得収支は増大←海外直接投資の積極化
  • 貿易収支はトントン~僅かプラス←11年はエネルギーシフト、原油価格上昇などの特殊要因で輸入増。家電の工場海外移転も終わっている
  • 経常収支マイナス化のシナリオも描きにくい

★国際収支統計の経常収支とは

経常収支=貿易収支+サービス収支+所得収支+経常移転収支

経常収支の黒字=海外への投資(資金の貸付)の増加

経常収支の赤字=海外からの投資(資金の借入)の増加

経常収支の黒字継続=対外資産の積み上がり

経常収支の赤字継続=対外債務の積み上がり

図表18 国際収支の推移

(3)金融政策の行方

①2010年10月から「包括緩和」の実施

  • 時間軸政策、準備預金の増額、非伝統的金融資産の買入の3つに加え、成長基盤支援資金供給を実施。
  • 2012年2月14日、追加金融緩和(非伝統的金融資産買入枠10兆円増額)とともに、「長期的な物価安定の目途」(ゴール)をCPI上昇率1%に。

②コールレートのゼロ金利の長期化は確実

③追加的金融緩和は意味があるのか

  • 景気刺激効果は限定的
  • デフレ脱却効果も限定的ながら、日銀批判をかわす効果あり

④超金融緩和に副作用はないのか

  • とりあえずの副作用は小さい
  • 日銀の国債購入の目的を、「財政のファイナンスを行うため」と市場が受け止めた時、金利上昇(国債暴落)・インフレ高進の可能性

図表19 政策金利の推移と非伝統的金融政策

この続きは、「日本経済:その見通しと問題点-低成長下、東日本大震災を超えて(付録)」をご覧ください。

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1957年長野県生まれ。1981年東京大学経済学部卒業、日本長期信用銀行入行。産業調査部、調査部ニューヨーク駐在、市場企画部調査役、長銀総合研究所経済調査部主任研究員、長銀証券投資戦略室長チーフエコノミストなどを経て、現在専修大学経済学部教授、博士(経済学)。専門は財政金融政策、日本経済論。著書に、『「失われた十五年」と金融政策』(日本経済新聞出版社、2008年)、『金融危機にどう立ち向かうか』(ちくま新書、2009年)などがある。

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