2019年上半期の金の需給:金価格の急騰で金の売却が急増
一般投資家の金の利益確定が記録的な水準へ。
2019年上半期の金価格の急上昇は、日本と欧米の金投資家の売却を促すこととなりました。
日本の一般投資家の金売却は2019年の1月から6月までに前年比57%増となっていましたが、欧米の一般投資家は115%増となっていました。
日本の貴金属地金販売大手の田中貴金属工業が先月発表したデータによると、今年1月からの6か月間で個人が売却した金地金の総量は、2013年以来最も多い15トンであったことが明らかとなりました。
この地金商がホームページ上などで公表する金地金の消費税込み買い取り価格は、6月末時点で1グラムあたり5200円前後と2015年1月以来の高値圏にあり、田中貴金属工業によると含み益の出た個人の売却が増えたとのこと。
なお、この間金地金の世界指標の現物価格は、6年ぶりの高さのトロイオンスあたり1400ドルを超えていました。
それに対し、世界でも最大のオンラインの地金市場を提供するブリオンボールトを利用する欧米の一般投資家もまた、2019年上半期にかつて見られなかったペースで売却を進めていました。
この間金購入は75%増加していたものの、金売却が115%増であったことから、ネット金売却量は2013年の金の暴落以来最大となっていました。
その結果、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒのユーザーが望む保管場所で貯蔵されている顧客保有の金地金は、昨年末の39トンから6月末に38トンへと減少していました。
金価格は2019年上半期にドル建てで9.9%、ユーロ建てで10.5%、ポンド建てで10.2%上昇していました。
また、6月にはドル建てで6年ぶりの高さのトロイオンスあたり1452ドルを付け、ユーロ建てでは6年半ぶりの高さの1281ユーロ、ポンド建てではほぼ8年ぶりの1140ポンドを付けていました。
「6月に6年ぶりの高値に達したことで、金は投資家の利益確定の波を引き起こしたようだ。」とブリオンボールトのリサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュが述べています。
そして、「このように価格が速いスピードで動いていることからも、すでに金を保有している一般投資家が、ポートフォリオのリバランスをすることは十分に理解できる。」と続けています。
この間世界の金を裏付けとする上場投資信託(ETF)の残高は127トン増加し2,548トンと、この投資商品への評価額として55億ドルの資金の流入が見られていたことが、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の最新のデータで明らかとなっていました。
2019年上半期に金ETFの残高は、4月から5月初旬に資金が大量に流出したにもかかわらず、前半期比4.3%増で重量においては107トン増加していました。この増加分の78%は欧州のファンドであり、前年比7.3%増となっていました。それに対し、アジアにおいては、利益確定や他のリスク資産へとシフトしたことで11.4%減少していました。
しかし、2018年同半期比には161トンという大量の資金が流入していたことからも、前年同半期比では30%減となっていました。
「株式市場が20年来の最も素晴らしいパフォーマンスを見せた上半期で、記録的な水準で取引されているにもかかわらず、債券市場では今年更なる2回から3回の利下げが、経済指標の悪化から予想されています。」とWGCは述べています。
「金利が下げる中、世界のマイナス金利の債券は13兆ドルと史上最高を記録しています。そして、金価格はこの数値とほぼ並んで過去2年間上昇しています。」
そして、一般投資家の現物地金への投資とは対照的に、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ヘッジファンドや投機家は、コメックスの金先物・オプションにおける強気ポジションを上半期に増加させていました。
ここにおける建玉は史上最高値を記録しており、資金運用業者のネットロングポジションは昨年末から6月末までに216%増の714トンへと増加していました。この規模のロングポジションは昨年9月に金価格がトロイオンスあたり1309ドルを付けていた時以来となっていました。