【金投資家インデクス】金取引が倍増し、金売却者数が金購入者数を2010年以来初めて上回る
金価格が6年ぶりの高さへと上昇し、記録的な利益確定が起きていました。
一般投資家の金取引量は、6月に金価格が6年ぶりの高さへと急騰する中で急激に増加していました。ブリオンボールトのリサーチ取締役のエィドリアン・アッシュがここでその背景を解説しています。
金の1日の取引量は6月に240万ポンド(約3億3200万円)と倍増し、投資家の金売却が金購入を2対1の比率で上回っていました。
そして、ブリオンボールトのスマートフォンアプリでは史上最高額の140万ドル(約1億5200万円)の金売却が7月1日にiPhoneで行われていました。
世界の75,000人の顧客が約21億ドル(2280億円)相当の金を保有しているブリオンボールトを利用する顧客の購入量を差し引いたネット売却量は、6月に750キロと記録的な水準となっていました。
この売却量は、2005年からサービスを提供しているロンドンを拠点とするフィンテック企業にとっては、1か月あたりの量としては記録的なものでした。しかし、顧客が保有する金の総量は、5月からは2%下げたものの38トンを維持していました。
この金の評価額は、金曜日のロンドンの世界指標で算出すると約17億ドル(1845億円)相当と、ドル建て価格では2013年1月末以来の高さで、英国ポンド建てとユーロ建てにおいては、それぞれ13億ポンドと15憶ユーロと史上最高値でもありました。
そしてブリオンボールトにおいて、6月に月間で金の購入量が売却量を上回ったネットの金購入者数は、5月の1年ぶりの低さからは、7.4%増加していました。
しかしネット売却者数はほぼ10年ぶりに購入者数を上回り、前月比122%増と2016年6月に英国がEU離脱を決めた国民投票以来の高さとなっていました。
そのために、一般投資家の実際に取引されたデータを基に算出される金投資家インデックスは、前月の52.0から5.6%下げる2年ぶりの急落を見せて、49.1となっていました。
この数値が50を割ったのは、2010年2月の48.8以来で、世界金融危機後に市場が落ち着きを取り戻していた2015年1月の直近の最低値の50.5も下回ることとなりました。
6月に金価格が6年ぶりの高さへと上昇する中で、利益確定の売却の大きな波が押し寄せたのでした。
価格が急激なペースで上昇することで、金をリスク分散の手段としている一般投資家が、ポートフォリオのリバランシングを行うことは賢明なことです。しかし、いまだ金を金融システムの保険として保有していない一般投資家はかなりの割合でもあることは確かです。そのような中で、先月は金への新たな興味は、前月の低い水準からは上昇はしていました。
ブリオンボールトを新たに利用し始めた顧客数は、6月に前月比25.8%増加していました。ちなみに、5月の新規顧客数は2008年のリーマンショック以来の低い水準ではありました。そのために、この6月数値はいまだ過去5年間の月間平均を24.5%下回るものでした。
国別にみると、英国の新規顧客数は前月比38.7%増加し、米国は19%増、ユーロ圏は14.3%増加していました。
金価格はドル建てで、6月に5.9%上昇し、2016年2月以来の早いペースの上げとなっていました。これは、金先物・オプション市場といった派生商品市場への大量な投機的資金の流入と、米国、ユーロ圏、日本、英国の中央銀行のハト派的コメント等で金利引き下げ観測が広がっていることが要因となっていました。
英国ポンド建て金価格は前月比7.1%上昇し、そしてユーロ建てにおいては4.8%上昇していました。これらは、2016年7月以来の早いペースでもあります。
重量にすると、購入量は過去12か月の平均を45.3%上回り0.9トンとなっていたものの、売却量がこの3倍のペースで、過去12か月の平均を136.3%上回る1.7トンと急増していました。
また、先週6月25日火曜日には、金価格が全ての主要通貨建てで数年来、もしくは史上最高値を付ける中で、金取引量は約600万ポンド(8億円)と、2016年11月にトランプ氏が大統領に選出して以来のピークを記録していました。
6月に売却をしたほぼ半数以上の顧客は、2014年から2019年に金を購入していました。そのために、売却者の48.6%は、6月の金価格の上昇でドル建てにすると平均的に16.8%の利益を上げていたことになり、ユーロ建てでは16.3%、ポンド建てでは25.9%となっていました。
銀価格もまた6月に1月以来の早いペースで上昇し、ドル建てで2.5%、ユーロ建てで1.6%、英国ポンド建てで3.9%の上げとなっていました。
そのような中で、ブリオンボールトで銀を月間で売却を上回って購入したネット購入者数は前月比13.1%増加し、昨年9月以来の高さとなっていました。しかし、ネット売却者数も1月以来の高さの39.6%増加していました。
そのために、銀投資家インデックスは前月の52.6から6月に52.0へと2月以来の低さへと下げていました。
しかし重量にすると、ブリオンボールトの顧客は2.1トン銀を積み増していたことから、過去12か月間で8回目の史上最高値を更新をして銀総保有量は759トンとしていました。
他の市場を利用する投資家は銀の上昇率が金に劣っていることを疑問に思うと共に、銀投資の魅力を見いだせずにいたようです。しかし、一般投資家のための現物市場を提供しているブリオンボールトにおいては、地金価格のスプレッド狭く、低い費用で取引ができ、決済は即座に行われることからも、異なる反応を見せていました。
金の価格の急騰は、大量の利益確定を招きましたが、2019年の銀の緩やかな上昇は、一般投資家による継続した資金流入を起こしており、そのために一般投資家は、派生商品市場のコメックスの機関投資家とは異なり、低値で買い、高値で売るという戦略を行っているようです。