金市場ニュース

2014年のために金投資家が学んだ2つレッスン

金は、2013年のように収益率が低い年が過去にもありました。しかし、それは多くはありません。

ドル建て価格で24%以上の下げを見せた今年、金にとっては1981年(32%の下げ)以来の最悪の年であり、1975年(25%の下げ)よりは良いものとなりました。しかし、2013年は、ある意味では金のポートフォリオの保険の役割を再認識させたのです。

英国の投資家にとっては、過去40年間に、米国ドル建て金は、16回、株式、債券、預金、不動産より収益率を下回っており、これらを上回ったのは8回のみでした。しかし、この間の金の収益率は、経済環境が良好であった際の損失分を十分にまさるものでした。それは、他の資産の平均収益率の3.8%を46パーセンテージポイント上回るものでした。全体としては、金は1973年から11%の年間収益率を生み出しています。これは、FTSEの15.4%に次ぐ高さで、ポンドがその購買力を失い続けた、インフレを十分に上回るものでした。しかし、株式市場は今年急騰しています。そのため、金融市場の保険的位置づけの金が下げるのは当然のことです。

また、2013年は、中国の急増する需要が、世界の金価格を決定しない、もしくは現時点まででは決定しないことも証明しました。西欧の資金運用者は、まだその力を保有しています。そして、彼らの投資心理の変化が、今年の春の金価格の暴落を引き起こしたのでした。この変化には、いくつかの要因があります。それは、過去6年間の金融危機に飽き飽きしてしまったこと、株式市場の急騰、米連邦準備制度理事会が量的緩和縮小を開始するという観測が広がっていることなどです。そのために、市場のトレンドに敏感な資金運用の人々は、金から資金を引き上げることに走ったのです。この傾向は、金のETF残高が急減したことからも見ることができます。昨年12月の史上最高の残高から、この上場投資信託は2013年に3分の1を減少させています。これは、金ETFの取引が開始された10年前から、年間約250トンの需要を維持していたこの金融商品が、800トンを市場に供給することとなったのです。年間4500トンほどの供給量である金市場は、当然この影響を強く受けざるをえませんでした。

もちろん、中国の庶民と投資家がこの金を購入し続けたことからも、彼らの高い金購入熱は証明されました。西欧の多くの投資家が長期の投資目的で、価格急落時に金を購入したのと同様に。しかし、彼らの需要は価格の下げで伸びるものの、米国先物・オプション市場の投機的ポジションが、金価格の重石となっていたのでした。強気市場を信じるポジションから、ヘッジファンドや他の投機的市場参加者は、20年間の金の弱気市場時の1999年以来の水準で金価格が下げるというポジションを建てたのでした。

また、2013年の金の弱気市場を予想する多くのアナリストのコメントは、歴史的な転換期を示すものでした。全ての逆張り投資家は、西欧の政府が金準備の売却を開始することを必要としているかもしれません。しかし、ゴードン・ブラウン氏(英国金準備を金の弱気市場で売却した英国元首相)はもういません。西欧の中央銀行は金準備を継続保有する意向です。そして、新興国の中央銀行は継続購入しています。その理由としては、金の保険としての役割を第一に上げています。

2014年を見る時、今年インドで起きたことを考慮することも重要です。昨年まで世界一の金消費国であった国が、金利を上げることなくルピーを支え、貿易赤字を改善するために輸入制限をしたために、世界の金市場から閉めだされているのです。この国の政府が規制を緩めることで、もし西欧が引き続き売却を続けているのであれば、金価格は少なくとも支えられることとなるでしょう。しかし実際には、金は正規のルートを通ることなく、関税を支払わずこの価格差の10%の収入を得ようとする密輸業者によって、世界一の消費国であるこの国へ流入し続けているのです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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