銀のLBMA価格が大きく乖離していた問題について
先週木曜日1月28日に、LBMA銀価格が決まる12時前後に大きな売りがあり、 LBMA銀価格が2009年7月30日以来の低値のトロイオンスあたり13.58ドルへと急落することになった。
これ自体は問題では無いのだが、この間スポット価格は0.80ドル上回る価格で 取引がされるという価格の乖離が起こっていたために、市場参加者の懸念を高めることとなった。
この要因は、LBMA銀価格のオークション参加者が、それぞれの社内のコンプライアンスで、オークション時に他の市場との裁定取引を同時に行うことが認められていないことが原因であろうと市場関係者はコメントしていた。
下記でも分かるように、1月28日のLBMA銀価格は、この価格が決まるまでに29回、14分間必要とし、結果的にスポット価格から6%も乖離して决定されていたのだった。
Silver Watchdogより
28日の大きな乖離を見せた翌日には、貴金属ディーリングで日本の第一人者のスタンダードバンク東京支店長である池水雄一氏は、日々投資家に発信しているBruceレポートで次のように述べていた。
「スポットから6%も離れていたのです。システムのエラーであればまだしも、システムが正常に動いていてついた価格であることが大きな問題です。(中略)行き過ぎた規制が、マーケットから流動性を奪い、結果的に参加者が大損するということになっているのではないでしょうか。繰り替えしますが、これは由々しき問題だと思います。だれもこのAuctionを使わなくなるのでは。」
そして、翌29日にもまた、スポット価格が14.19ドルを推移している間、14.08ドルでLBMA銀価格は決まることとなった。
そのため、世界最大の銀産出会社のKGHMは、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)にその説明を求め、市場リスク責任者のGrzegorz Laskowski氏は「2日続けて起こったことからも、このスポット価格とLBMA銀価格の大きな差は容易ならぬことだ」と貴金属ニュースサイトのFastMarketsにコメントしていたのだった。
また、英国の著名金地金商Sharps Pixleyの代表Ross Norman氏もまた、過去6ヶ月で既に10回も取引レンジの外でこの価格が決まっていることからも、「Silver Fix - Not Fit For Purpose R.I.P.(銀値決めはもはやその目的を果たさない)」という記事を発信し、「なぜ価格の運営会社のCMEトムソン・ロイターが何もコメントせず、何もしていないのか」と31日に問いを投げかけていた。
ちなみに、LBMA銀価格は、産出会社や工業用としての大規模な取引において使用される銀価格の世界指標で、117年の歴史を持っていた銀値決めから、2014年8月14日に移行したものとなる。
この移行は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)スキャンダルをきっかけに、金融市場の世界指標が規制当局によってその公正さを調べられていた中、金・銀値決めメンバーのドイツ銀行が、コモディティ事業の縮小に伴い、値決めメンバーからの撤退を表明し、HSBCとノーヴァ・スコシア銀行の2行では機能を果たさないということから、全ての銀値決めメンバーが撤退することとなったことが背景となっていた。
そのために、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)がコンサルテーションを行い、より価格形成の透明性を高め、銀行、投資会社、精錬業者、地金商等の幅広い参加を促す目的で、現在のCMEトムソン・ロイター社が、電子オークションプラットフォームを提供し、LBMA銀価格の運営を行うこととなったのだった。
そして、今週に入り、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)が、LBMAの銀価格へのコメントや問題については、CMEトムソン・ロイターへ連絡をすることを市場関係者へ提案し、昨日CMEトムソン・ロイターとLBMA銀価格管理委員会が、共同で下記のステイトメントを発表している。
「LBMA銀価格が、そのプロセスや参加者の整合性を脅かすと見なされる場合は、一旦中止される。このプロトコルは1月29日以降から行われ、全ての参加者と英国金融庁(FCA)は、その導入をについて連絡を受けている。
近い将来に、先の委員会とCMEトムソン・ロイターは、全ての参加者とその顧客と英国金融庁に、ここで議論された詳細と導入方法について説明を行う事になる。
その内容とは、オークションが終わるまでは価格以外の取引量に関しても開示されないという、新たなブラインド・オークションの詳細などだ。
また、オークションの整合性を保持するために必要であれば決済の許容誤差を増加させる方法、また、参加者全員が参加することを促すための価格の差を共有する構造の変更、オークションの過程に参加することを促す様々な方法、銀行以外の参加者を増やすための方法等について説明する。
さらに、プロセスを容易にし、参加者にとって資本集約的ではない、全てのオークションを一括して清算(Centralised clearing)する可能性を検討する。」
先の発表の重要なポイントは、先週のような価格乖離が起こった場合オークションが一旦中止されるという点。そして、ブラインド・オークションや一括清算(Centralised clearing)という新たな仕組みに触れている点であろう。