金投資家のセンチメントが今年2月以来初めて上昇
記録的な金投資量に達しながらも、金投資への投資家センチメントは過去5年間で最低の水準近くに留まっています。
金投資は、現在興味深いものではありません。少なくとも、多くの一般の人々はそう感じているようです。ここで、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、ブリオンボールトの金投資家インデックスの最新データを基に解説しています。
しかし、大規模な投資家は異なった考えを持っているようです。
ブリオンボールトがまとめる、個人投資家の金投資へのセンチメントを表す金投資家インデックスは、6月の過去52ヶ月で最も低い水準の数値から、7月は多少ながらも回復しました。
その7月数値は、6月の51.9から51.2へと上げ、2月以来初めて上昇することとなりました。
このような中、ブリオンボールトで個人投資家が保管している金の総量は、史上最高値の33トンへ達しています。これは、ブリオンボールトにおける、月間のネット購入者数と売却者数の差は少ないものの、購入者は大量に金を購入していたためです。
ブリオンボールトで保管されている個人投資家の金地金の量は、多くの世界の中央銀行を上回るものです。それは、例えば香港とカタールとチョコ共和国の中央銀行の金準備を合算した量に等しいものです。これらのブリオンボールトで保管されている金地金は、個人投資家によって保有されており、ブリオンボールトが提供している世界の5箇所の金地金専門保管場所で厳重に貯蔵されています。
投資家インデックスは、ブリオンボールトにおける個人投資家の売買実績に基づいて算出されています。世界最大のオンライン現物地金取引所を提供するブリオンボールトにおける、金投資家インデックスは、2011年9月に金価格がトロイオンスあたり1900ドルへ達した際に、71.7と最高値を記録しています。この数値が50である場合は、ブリオンボールトにおけるその月のネット購入者数とネット売却者数が完璧に一致したことを意味します。
ブリオンボールトの顧客が保有する金地金量の変動を見ると、大規模な投資家が金投資へと戻りつつあることが分かります。しかし、投資家全般においては、地政学リスクが高まったにも拘らず、金の投資熱は高まっていません。
ブリオンボールトの顧客においては、2013年に金価格が急落した際に売却された金は、既に買い戻されています。昨年は大規模な投資家が大量に売却し、その量が多くの個人投資家の購入分を上回っていましたが、今年はその全く逆の傾向が見られます。
また、投資家は資産クラスにおいて分散投資を試みるとともに、地政学上のリスクを考慮し、投資する国や地域も分散を進めているようです。そのため、チューリッヒは引き続き資産保管場所として高い人気がありますが、シンガポールにおける保管が急増しています。
チューリッヒの取引と保管はブリオンボールトがサービスを開始した2005年4月から行われています。この保管場所に現在貯蔵されている金地金は、24.3トンと全体の73%を占めています。しかし、この量は2013年3月の25トンから減少しつつあります。
アジアにおける金保管を可能とするために、シンガポール保管場所は昨年3月から提供されています。この保管場所は、シンガポールのフリーポート内にあり、既に1トンの金が貯蔵され、ブリオンボールト全体の保管量の3%となっています。チューリッヒ同様に、ブリオンボールトサービス開始当時から提供されているニューヨーク(2%)とロンドン(20%)で保管されている金の量は、2014年には減少の傾向があります。そして、昨年8月に追加されたトロント保管場所における金保管量は、0.3トン(1%)となっています。
これは何を意味するのでしょうか。
2013年の価格の急落は、他の資産クラス同様に、金も価格が大きく動く事があることを知らしめました。しかし、金は、2014年7月にトロイオンスあたり1285ドルと他の資産クラスの価格の上昇率を上回っています。これは、6月の5%の上げ幅の半分を失いながらもです。
さらに、他の金融市場が中東やロシアとウクライナの紛争を気にも止めていない中、ブリオンボールトの顧客は地政学リスクについて懸念を高めていたのです。これは、顧客からの声であり、最新のアンケートの結果でもあります。
これから、更にはっきりとした傾向が見えてくるかもしれませんが、現段階では、ブリオンボールトにおける大規模な投資家は、リスクに疎くなっているファンドマネージャーとは異なっているようです。この2014年夏に見られている大規模投資家が着々と金を購入する動きは、金価格が上昇を始めた2001年、そしてイラク戦争後、金融危機に至るまでに金価格が上り詰めていった際にも見られていたのです。