金投資は価格の下落にもかかわらず大きく動かず
2016年以来の低さを見せた金に対しても新たな投資興味は伸びなかったようです。
トランプ大統領が選出される前月以来、金の投資は金価格の下落時に伸びる傾向が続いています。ここでブリオンボールトのエィドリアン・アッシュが解説しています。
金価格が上昇すると、個人投資家が新たに金へ投資する興味が薄れ、既存の投資家は購入や売却を控える傾向があるようです。
このような欧米の個人投資家のバーゲンハンター的投資傾向は、ヘッジファンドや他のトレーダーのような人々の傾向とは異なったことが明らかとなりました。それは、価格の上昇を追って下落時に手を引くというものではなく、価格の下げで買い上昇で売却するというものです。
金に投資を行う個人投資家は、2016年10月から2018年7月までに、22ヶ月中19ヶ月価格に敏感に投資を行っています。
金投資家インデックスは、世界の7万人を超える投資家が18億ドル(約2016憶円)を超える地金を保管しているブリオンボールトにおけるその月の購入者数と売却者数のバランスを表す指標です。そして、この数値は金価格が下げると上昇し、上昇すると下げています。
しかし、先月金価格は下げたにもかかわらず、この数値は同様に下げていました。この傾向は、2016年夏に5年ぶりの高い価格を記録して以来長い間続けて来た傾向を崩して2ヶ月連続で起きています。
この理由は何なのでしょう。2018年9月に価格は6ヶ月連続で下げていました。既にバーゲンハンター的購入は十分に行われていました。そして、このような需要はほぼ既に金に投資を行っている人々からのものでした。それは、価格がさらに下げることで新たな投資家からの興味は薄くなっていたことからでした。
もちろん、この低い価格は金を既に購入している人々の売却をとどめるものでもあります。しかし、9月に価格が2013年の下げ以来の長期間の下げを見せることで購入もまたとどめることとなったのです。
2016年年初からの金価格の下げは、先月に8月から7.2%減少し、7月の10年来の低さまで下げていました。
しかし購入者数も大きく下げ、2017年1月にトランプ大統領が就任して以来の高さとなった今年の夏から13.9%減少していました。
そのために、金投資家インデックスは9月に55.0へと前月の56.0から1ポイント減少していました。
金投資家インデックスは、その月の金購入量が売却量を上回ったネットの金購入者数とネットの金売却者数が完璧に一致した際に50となり、そのピークは金価格がトロイオンスあたり1900ドルを超えた2011年9月の71.1で、最低値は価格が数年来の低さの1050ドルまで下げた2015年末に50.5と記録されています。
また、金価格同様に銀価格も9月に2016年年初以来の低さへと前月比5%減で、3か月連続で下げていました。
そのため、先月の銀売却者数は2010年8月以来の大幅な下げで21.7%減少し、銀購入者数もまた4.5%減少していました。
そこで、銀投資家インデックスは7ヶ月ぶりの高さの54.3と、8月の53.9からも上昇していました。
そして重量にすると、銀の需要の高さは金を上回り、ブリオンボールトの顧客が保有する銀総量は2.4%増の史上最高の745トンとなっていました。
それに対し金の総量は0.4%増の38.9トンと、7月の史上最高値をわずかに下回るものとなっていました。
しかし、新たに銀投資を行う人々もまた減少していました。そして、ブリオンボールトで売買できる、プラチナを含む3つの地金も初めて投資を行う人々の数も、6ヶ月来の高さとなっていた前月から23.7%減と初めて下げていました。
そのために、この数値は過去12か月の平均をも16.4%下回ることとなりました。
これは何を意味するのでしょうか。信用収縮から金融危機に至った10年を経て、金が金融システムの危機に見事に対応した記憶は薄れ、新たな投資家の興味を引くには至っていないのでしょう。
これは、世界の株式市場が史上最高値に近い水準を長すぎる期間維持している中で、数年後に投資家の多くは後悔をすることになるかもしれません。現在下げている金価格は、新たに金投資を始める人々にとっては、トランプ大統領選出や英国がEU離脱を決めた国民投票以来の安さを提供しているのです。
新たな投資傾向は少ない中、このような低い価格で金・銀地金を購入したとしても、良い結果につながるという保証はありません。そして、人々が興味を持っている投資先に投資をしていないことからも、大きな流れに逆行しているかもしれません。しかし、株式市場が現在の水準から5年後に下げている場合、過去のデータを見ているとこのような場合金は98%の場合上昇していることからも、損失をカバーすることを可能とするかもしれません。