金価格3500ドルの意味を探る(Part 2)終わりの始まりか?金投資のピークと今後の展望
今春、金投資は大きな天井を打ったとのことです。
金投資はピークに達し、価格は3500ドルで頭打ちになったのでしょうかと、ブリオンボールトのエイドリアン・アッシュは、Part 1に続いて、2025年半ばに、金価格3500ドルの意味を探る(Part 1)―群衆と真の買い手たちに続き、更に深く解説します。
米大手金融機関Citiのアナリストはそのような見解を示しています。
「金はすでに高値を付けた」と彼らは述べ、2026年には3000ドルを割り込むと予測しています。
その「天井」予想は、証券会社StoneXのアナリスト、ローナ・オコンネルが「高値は打った」と発言したのち、ちょうど8週間後のことでした。彼女は、4月22日に1セント及ばず3500ドルに届かなかった時点でそう宣言していました。
さらに、金投資は「過密」で「過大評価」されているという。
少なくとも、2024年から2025年にかけての急騰に乗り遅れたファンドマネージャーたちはそう考えているようです。バンク・オブ・アメリカが毎月実施する調査では、4月、5月、そして今6月と、金は市場で「最も混み合った取引」として挙げられています。
彼らの偏見や嫉妬を差し引いても、一理あるかもしれません。金の価格チャートをざっと見れば、大きい天井を作る習性があることは明らかとなっています。
そして今春、金は急激に上昇し、3500ドルの天井をつけました。
たとえば2020年を見てみましょう。
コロナ危機による投資市場の混乱の中、金は史上初めてトロイオンスあたり2000ドルを超えました。
しかしその後、金はその水準を着実にに突破・維持するまでに2年半を必要としました。2020年8月6日のピークは、2023年末まで更新されなかったのです。
同様に、2011年にも大きな天井がありました。その際は、むしろそれ以上の長さを必要としました。
スポット価格は9月6日にトロイオンスあたり1920ドルでピークをつけましたが、それは世界的金融危機が西側の銀行破綻から政府債務危機へと変貌する中でのことでした。
そのために、投資家が金購入へ殺到しましたが、損益分岐点に戻るまで9年を要しました。
しかし、それすらも約30年前の「本当に大きな天井」に比べれば小さいものでした。
1980年初頭、金価格は12ヶ月で250%以上上昇し、わずか6週間で価格は2倍になりました。
1月21日には、インフレの急騰、ソ連によるアフガニスタン侵攻、イラン人質危機が重なり、米国債価格が暴落する中で、金はトロイオンスあたり850ドルのピークを記録しました。
「市場を信じるなら、今は第8次世界大戦中だ」と、その日ある先物ブローカーはニューヨーク・タイムズに語っています。
しかし、その際に金を購入した人々は長い苦しみを味わうことになりました。実に28年近くも。
そして皮肉なことに、ようやく1980年の買い手が損益分岐点に戻れたとき、その上昇はまた崩れたのでした。
2008年3月15日、金は1000ドルをわずかに超えて新たな最高値を打ちましたが、それを回復するには18ヶ月を要しました。
だがそれ以上に皮肉なのが、固定価格時代後の最初の最高値です。
1971年、リチャード・ニクソンがドルと金のリンクを断ち切ってから3年後、1974年8月、ジェラルド・フォード大統領は法律93-974に署名。これにより、米国市民は大恐慌時代のフランクリン・D・ルーズベルトによる金所有禁止を解除され、約30年ぶりに金地金への投資が可能となりました。
この新しい金投資の自由化は1975年元旦から開始されることになっていたため、金価格は急騰。米銀やディーラーがコインや金地金を大量に仕入れる中で、価格は12ヶ月でほぼ倍増しました。
しかし、1974年12月30日にトロイオンスあたり197ドルでピークを迎えると、翌日には10ドル下落。投資ブームの前夜に冷や水を浴びせた格好となりました。
その後、1974年の大天井を超えるのに888取引日、つまり3年半を要しました。
では、2025年春に金を買った新たな投資家たちも、同じような運命をたどるのでしょうか? あるいはもっと悪いのでしょうか?
将来のことは誰にも分かりません。「(過去の)パターンは壁紙の模様」程度に思っておくべきでしょう。
だが、ここで紹介した5つの天井に共通するものが一つあります。それは、「その後に(月間平均価格が)下がった」ということです。
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1974年12月の天井(約200ドル)の翌月、金価格の月間平均は4.1%下落
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1980年1月のピーク(850ドル)の翌月、月間平均は1.5%下落
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2008年3月の1,000ドルの天井の後、4月の平均は6.1%下落
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2011年9月の1,920ドル高値の後、10月は6.0%下落
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2020年8月の2,075ドルのピーク後、9月は2.4%下落
しかし2025年4月は違いました。5月の月間平均は逆に2.2%上昇し、新たな記録を打ち立てました。
さらに週末ベースで見ても、過去の5つの天井では、その後すぐに金が新高値を記録することはなかった。再び日中高値を更新するまでには時間がかかりました。
だが今回、2025年4月22日(火)のピーク後には、新たな週末終値の高値が3回も出現しています。(5月9日の3324ドル、5月23日の3342ドル、6月13日には3435ドル超え)
とはいえ、やはりこの春が今回の上昇のピーク――あるいは今後10年の天井――だった可能性はあります。
私も、Citiのアナリストやバンク・オブ・アメリカのアンケートに答えるファンドマネージャーたち以上のことは分かりません。そして、StoneXのローナ・オコンネルに言わせれば、先週始まったイスラエルとイランの紛争に対する金市場の「鈍い反応」は、「市場が過密で高値は打った」という彼女の見方を裏付けるものとのことです。
だが、もしそれが正しいとしても、金は今回、これまでの大天井後には見られなかったことを起こしています。
「基調としての上昇トレンドを維持したまま推移している」のです。
ファンダメンタルズについては――Part 3に続きます。