金価格ディリーレポート(2025年9月29日)FOMO(取り残される不安)が金を2025年37回目の新記録へ
金価格は月曜日、トロイオンスあたり3,800ドルを超えて急騰し、銀も主要通貨で史上最高値を更新しました。これは、明日に差し迫った米政府の閉鎖を前にドルが下落したことと、金ETF(上場投資信託)の資金流入が2022年のロシア・ウクライナ戦争開始以来の最大規模となったことによるものです。
ロンドン時間の月曜日昼、スポット金価格はトロイオンスあたり3,831ドルまで急騰し、前週金曜日終値から1.6%上昇。その後午後3時までに10ドルほど下落しましたが、2025年における金の『安全資産』としての新しい37回目の史上最高価格を更新しました。
銀の価格は、年間需要の約60%が産業用に由来する金属で、アジア時間ではトロイオンスあたり1ドル以上急騰し、2.3%上昇の14年ぶり高値47.17ドルに達しました。その後、ロンドンの正午基準オークションでは47ドル手前で落ち着きました。
最新データによると、巨大なiShares Silver Trust ETF(NYSEArca: SLV)は3年以上ぶりの最大規模から金曜日に縮小しましたが、金ETFへの9月の資金流入により、その裏付けとなる金の保有量は今月だけでほぼ100トン増加する傾向となっています。これは鉱業界のワールド・ゴールド・カウンシルによれば、4月の37か月ぶり記録に次ぐ規模です。
「今月の3,400ドルから3,800ドルへの急騰は、西側の機関投資家やヘッジファンドが、金(ゴールド)を持たざるリスクを意識するようになったことからです」と、日本貴金属マーケット協会(JBMA)の池水雄一代表理事長は述べています。
近年は中央銀行の金購入が価格上昇を支えてきましたが、今回の金高騰は「ETFを通じたファンドの強い基礎的需要によって支えられている」と、デリバティブプラットフォームのサクソバンクも最新レポートで指摘。加えて、資産運用マネジャーの間での「取り残される不安(FOMO)」や、「水曜日の政府閉鎖リスクへの警戒」も要因としています。
ドナルド・トランプ米大統領は月曜日、議会関係者と会談し、膠着状態を打破して高コストな政府閉鎖を回避する方針です。短期的な連邦資金の「つなぎ予算」の合意が得られなければ、火曜日には政府機関を運営するために必要な資金が途絶えることになります。
前回の政府閉鎖はトランプ政権初期に、議会とホワイトハウスが追加資金に合意できなかった際に発生し、連邦政府業務の約4分の1に影響を与えました。
その米史上最長となった35日間の政府機関閉鎖期間中、金価格は3.5%上昇していました。これは、民主党のビル・クリントン政権下での1995~1996年の21日間の閉鎖を上回るものでした。
本日、ドル指数(主要通貨に対する米ドルの価値を示す指標)は0.2%下落し、先週木曜日の5週間ぶり高値から下げを拡大しました。
一方、米国債価格は上昇し、10年物利回りは0.3%ポイント低下して1週間ぶりの低水準となりました。10年物利回りは、政府および多くの金融・商業借入におけるベンチマーク金利です。
上海黄金交易所(SGE)では、月曜日に金価格が1.2%上昇し、グラムあたり862円の新記録を付けました。しかし、世界最大の金生産・輸入・消費国である中国では、ロンドン価格に対して50ドルの大幅なディスカウントで、2020年9月のコロナ危機下の移動制限がかけられた際以来の高い水準となっていました。9月に入り継続的にディスカウントである現状は、中国における金の需要の弱さを示唆しています。
ロンドンの金地金は、英国ポンドおよびユーロ建てでも1.6%上昇し、新記録に達しました。それぞれトロイオンスあたり2,850ポンド、3,268ユーロを記録しています。
銀の強さにより、かつて通貨として使われた金と銀の相対価格を示す金銀比率は81台に低下し、過去12か月で最低水準となりました。また、英国ポンド建ての銀は史上初めて35ポンドを突破しました。
銀は日本円建てでもグラムあたり224円超で新記録を更新し、ユーロ建てでは産業用途金属として45年ぶり高値のトロイオンス40ユーロに達しました。
自動車用触媒(ハイブリッド車を含む化石燃料エンジンの排出ガス低減に使用)に使われるプラチナは、トロイオンスあたり1,628ドルの12年ぶり高値に3.0%上昇した後、1,600ドルで上昇幅を半分ほど削っていました。日本円建てではグラムあたり7,598円の新記録を付けました。
日本の個人投資家向け金価格は、本日の消費税込みで心理的節目のグラムあたり20,000円を突破しました。