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金価格ディリーレポート(2025年9月15日)FRB利下げ前に、米国スタグフレーションが金価格を史上最高値に維持

金価格は先週に引き続き月曜日ロンドン時間昼過ぎに、新記録の高値で取引され、今週水曜日に予想されている米連邦準備制度(FRB)の利下げに市場の関心が集まっています。一方で、米経済にスタグフレーション到来の懸念も高まっています。

先週発表された弱い雇用データと米インフレの上昇を受けて、経済への「期待が一変した」と、コロンビア・ビジネススクールのエコノミスト、ブレット・ハウス氏は述べ、トランプ大統領の政策と「その不安定な実施方法」を原因として挙げています。

そのため、アナリストや投資家にとっては「今年残りの期間の成長予測は大幅に下方修正され、インフレ予測は上方修正されました」。

月曜日の取引では、実質米金利(インフレ連動10年国債TIPSの利回りにより示唆される)が年率1.67%と2年ぶりの低水準に低下しました。

これは、米中央銀行が借入コストを引き下げる一方で、生活費の上昇が加速すると債券トレーダーが予想していることを示しており、スタグフレーションの見通しと一致するパターンです。

ドル建て金価格とTIPS物価連動国債利回り(実質金利) 出典元 ブリオンボールト

コロナ後のインフレ急上昇までは、金はインフレ調整後の債券利回りと強い逆相関関係を示しており、実質金利が下がると金が上昇し、その逆も同様でした。

しかしこの関係は2022年に崩れ、実質金利が急上昇しても金は動じませんでした。しかし、米国の雇用データが弱く、インフレが上昇する中で、再びこの逆相関が明確に表れています。

完全な負の相関を−1.00とすると、金と10年TIPS利回りの相関は現在、22日間移動平均で−0.94まで強まり、2023年2月以来の強さとなっています。

スイスの精錬・金融グループMKS Pampの金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏は「FRBは、成長を支援しつつインフレを抑制するという二重目標のバランスを賭けに出ており、今回の利下げは50ベーシスポイントのハト派的利下げより、25ベーシスポイントのハト派利下げの可能性が高い」と予想しています。

本日の金地金は、先週火曜日朝のロンドン・ベンチマーク価格はトロイオンスあたり3654ドルの史上最高値と同水準に達し、その他の通貨でも史上最高値に向けて反発しました。これは金が2025年に入ってから15回目の週末新高値を先週金曜日に記録した後の動きです。

先週金曜日に発表された新データでは、米国の消費者信頼感は2か月連続で低下し、5月以来の最低水準に達しました。

ミシガン大学の調査によると、来年のインフレ期待は年率4.8%で変わらず、最新の報告インフレ率2.9%とは大きく乖離しています。

しかし、今後5年間のインフレ期待は前月の3.5%から3.9%に上昇しており、回答者の3人に1人が、調査時の自由回答でトランプ大統領の関税によるコストへの影響に言及しています。

工業用途で年間需要の約60%を占める銀も先週の高値に近づき、トロイオンス42.30ドルを超える14年ぶりの高値圏に迫っています。

月曜日に発表された最新の米国データでは、ニューヨーク周辺の製造業活動が今月に入り突然かつ予想外に弱まったことが示され、ニューヨーク連銀製造業景気指数は1月以来初のマイナス値を記録しました。

米連邦公開市場委員会(FOMC)の9月会合は火曜日に開始され、水曜日に終了します。FRBの最新政策決定では、FOMC四半期経済見通し(SEP)、通称「ドットプロット」の更新が行われる予定です。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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