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金価格ディリーレポート(2025年2月24日) スタグフレーション懸念と金ETFへの記録的な資金流入で金が史上最高値を更新

金相場は、前週金曜日のスタグフレーション懸念の米国経済データの発表を受けて、金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアがコロナ危機以来の速いペースで残高を増加させる中で、2956ドルを超える過去最高値を月曜日に記録していました。
 
スポット金価格は、月曜日昼過ぎに0.3%上昇してトロイオンスあたり2956ドルの新高値をつけた後に、上げ幅を削って推移していました。
 
スイスの精錬・金融グループMKSパンプの金属戦略責任者であるニッキー・シールズ氏は、「消費者心理から住宅、サービスまで、米国の経済データは最悪で、とてもスタグフレーション的だった。そこで、リスク資産を揺るがせ、米国株価は急落していた。」と述べていました。
 
S&P500種株価指数先物は、金曜日に米国株が大きく売られた後に、月曜日に反発することを示唆していました。
 
しかし、前週金曜日にS&P500種とダウ工業株30種平均はともに1.7%安と年初来最大の下げ幅を見せて引けていました。ミシガン大学消費者態度指数は10%近く低下し、5年間のインフレ見通しが3.5%と30年ぶりの高水準となっていました。
 
さらに、S&Pグローバルによると、米中古住宅販売件数は予想以上に減少し、米サービス業購買担当者景気指数(PMI)は2月に縮小圏内に落ち込んでいました。
 
ドル建て金価格とSPDRゴールドシェアの週間の残高%増減量 出典元 ブリオンボールト
 
先週金曜日、投資家は 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェア(NYSEArca: GLD)の残高を急増させ、ファンドの地金は21トン近く拡大し、2023年8月以来最大の904トンに達していました。この週間の増加率4.4%は、2020年3月のコロナ危機初期以来の高水準となっていました。 
 
J.P.モルガンのベースメタル・貴金属ストラテジーのヘッドであるグレゴリー・シアラー氏は、「 金ETFの保有量が(金)価格上昇のカギを握ることになりそうだ」と述べ、金が投資家の金融資産の2%程度にとどまっていること、ETFの想定保有量が2020年のピークを下回っていることを指摘していました。
 
しかし、GLDの想定元本残高量は、直近のピークである2020年5月より23%低く、世界金融危機後、欧州債務危機につながった2010年の史上最高値より34%低い水準となっています。
 
金ETFの第2規模銘柄のiShare金ETF(NYSEArca: IAU)も前営業日に残高を増加させ、4週連続の週間の増加で、2023年11月以来の高水準となる約400トンに達していました。ちなみに、IAUは2020年11月の直近ピークを26%下回っています。
 
米金融大手であり、ロンドンの地金のクリアリングを行うJ.P.モルガンのリサーチ部門は、金価格が2025年にトロイオンスあたり3000ドルに向かって上昇すると予想し、そのもう一つの重要な要因として中央銀行の購入を挙げています。
 
シアラー氏は、「中央銀行は、政治的な不確実性が加わることで、2025年に向けてのさらなる需要の高まりが起こる可能性が高く、まだ中央銀行の金準備の増加傾向は終っていない。」と続けていました。
 
一方、中国の何立峰副首相は、金曜日のスコット・ベッセント米財務長官との電話会談で、ドナルド・トランプ大統領の中国製品に対する10%の関税引き上げに「 深刻な懸念」を表明していました。
 
同時に、ベッセント長官は北京に対し、フェンタニルの密売を抑制し、経済のバランスを取り戻すため、より強力な措置を講じるよう促していました。
 
上海金取引所の金価格は、人民元相場が史上最高値であるオンスあたり688円に向かって再び上昇したにもかかわらず、月曜日にはトロイオンスあたり5ドル強と多少下げていたものの、ロンドンよりも高い価格であるプレミアムを示し続けている。2024年8月以降、常にロンドン価格と比較して割安で取引されていたこの金価格は、ドナルド・トランプ氏が1月にホワイトハウスに戻る前に、世界最大の金消費市場への新規地金輸入のインセンティブであるプレミアムへと転じていました。
 
一方、ユーロ建て金価格は、為替市場で単一通貨が米ドルに対して上昇し、ドイツの株価が週末の選挙でフリードリッヒ・メルツ氏率いる保守党CDU/CSUの勝利を受けて上昇したことから、0.3%高のトロイオンスあたり2816ユーロへと一時上昇していました。
 
また、英国のスターマー首相が今週ワシントンを訪問し、フランスのマクロン大統領同様に、ウクライナや欧州の安全保障についてトランプ大統領と議論する準備を進めている中で、 英国の金相場(ポンド建て)も0.3%上昇し2331ポンドを一時つけていました。
 
この間多くの欧米の首脳は月曜日、ウクライナでロシアとの戦争3周年を記念するイベントに出席し、ロシアの侵攻に抵抗するウクライナを支援するというトランプ大統領の政権のコミットメントが不透明さを増す中、多くの首脳はウクライナを支持、さらなる軍事支援を約束していました。
 
金価格は2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻開始以来、すでにトロイオンスあたり1000ドル以上上昇しています。
 
それに対し、年間使用量の60%近くを占める工業用需要が主因である 銀の価格は、0.1%高のトロイオンスあたり32.51ドルとなっっていました。銀価格は、ウクライナ紛争が始まって以来、トロイオンスあたり7.0ドル以上上昇しています。   
 
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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