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金価格ディリーレポート(2024年6月3日)金地金は史上最高値水準から下げ、銀価格はコメックスで強気ポジションが増加する等「スポットライト」があたる

金地金は先月末にドル建てで過去最高値を記録した後、月曜日に堅調に推移し、銀地金は投機筋がコメックス先物・オプションで過去2年間で最大の強気ポジションを築いた後に、テクニカルアナリストが「サポート」と呼ぶトロイオンスあたり30ドル付近で推移しています。
 
金地金のスポット価格は、ロンドン時間昼過ぎに前週終値のトロイオンスあたり2326ドル前後10ドルの狭いレンジで堅調に推移し、金曜日の午後3時のロンドン基準価格としてドル建てにおいて史上最高値の2348ドルから下げて推移していました。
 
「安全資産」である金地金価格は、5月に月間で1.8%上昇し、年初来では13.8%上昇していました。
 
年間需要の60%近くが工業用である 銀の価格は、月曜日取引開始直後に一時30ドルを割り込んだ後、その水準を取り戻していました。
 
これは、先月の銀の17.3%の急騰に続くもので、銀はすでに年初からは、31.4%の上昇を記録していました。
 
「貴金属の中で、この1ヶ月は銀に最も強いスポットライトが当たっている」と、デリバティブ・プラットフォームであるサクソバンクの商品ストラテジスト、オーレ・ハンセン氏は述べていました。
 
「銀に対する短期的な最大のリスクは、テクニカルおよび/またはファンダメンタルの見通しが変わり、投機筋による積極的なロング清算を誘発する可能性があることだ。」と続けていました。
 
コメックスの資金運用業者の銀先物・オプションのネットロングポジションと銀価格の推移 出典元 ブリオンボールト
最新のデータによると、ヘッジファンドやその他のレバレッジを効かせた投機家は、先週火曜日までの7日間で、銀に対する強気ポジションを3週連続で増やし、2022年3月初旬以来の最大の水準としていました。
 
このため、資金運用業者のネット・ロングポジションは、前週から4.8%増加し、5月中旬に達した2022年4月以来の高さの水準へ戻っていました。一方、コメックス銀の全限月の建玉は、小幅に減少したものの、2週連続で25万枚を超えていました。
 
銀のデリバティブの建玉がこの水準を超えたのは、銀価格がコロナ危機の第一波の中でトロイオンスあたり18.33ドルから6ドル近く急落した前夜の2020年2月末のことでした。
 
米国の規制機関である商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータによると、同期間に投機筋は先週、金に対するネットの強気ポジションを2020年4月中旬以来の高水準から6.7%縮小させていました。
 
資金運用業者によるプラチナのネットロングポジションは1年ぶりの高水準に増加し、自動車触媒を中心とする工業用途で需要の3分の2を占めるこの貴金属価格が5月を通して11.6%の上昇を記録し、3ヶ月連続の上昇を記録していました。
 
プラチナ地金は本日ロンドン時間昼過ぎに、トロイオンスあたり1028ドルまで0.9%下落していました。これは、アフリカ大陸で最も工業化が進んだ国であり、世界第1位のプラチナ鉱山国、そして現在第13位の金生産国である南アフリカで水曜日に行われた選挙の最終結果で、アフリカ民族会議(ANC)が民主化30年で初めて過半数を失ったことが確認される中のことでした。
 
ANCの得票率は40.2%で、連立政権を樹立するためには1つ以上の小政党と合意する必要があるとのことです。
 
南アフリカ通貨のランドは、前週木曜日初期の世論調査結果でANCが過半数を失う可能性が示された際に1%以上下落した後、月曜日にはわずかに上昇していました。
 
世界第2位の金消費国であり、主要経済大国として急成長を遂げているインドで行われた総選挙の出口調査では、ナレンドラ・モディ首相率いるバラティヤ・ジャナタ党(BJP)連合が、4月から先週末にかけて行われた7段階の投票で、過半数を大きく獲得することが示唆されています。
 
インドの金相場は本日、2ヶ月ぶりの高値をつけた後、為替が序盤の上げ幅を縮小したことから、大陸の重い税金と輸入関税を含む10gあたり71,300ルピーを割り込むこととなりました。
 
貴金属専門コンサルタント会社 Metals Focusの最新レポートによると、インドの4月の金地金輸入は47トンに急増し、ディーラーは5月10日前後のアクシャヤ・トリティヤの祭りの間、 消費者の需要が強いと報告していました。
 
上海金取引所の金価格は、引き続きロンドンに対して強いプレミアムを示しており、事実上、輸入業者が海外で金を購入し、貴金属の第一の消費国である中国に地金を持ち込む際に提供されるインセンティブであるプレミアムは、月曜日にトロイオンスあたり39ドルと、過去の平均8ドルを十分に上回る水準に上昇していました。
 
中国の金価格は、5月20日に記録した人民元の史上最高値から4%下落し、1グラムあたり549円と4週間ぶりの安値に近い水準まで下落する中、上海の銀価格も引き続きロンドンに対して歴史的なプレミアムを示しており、先週はトロイオンスあたり4ドルまで上昇し、数年来の高値であるグラムあたり8445円と国際基準価格を13%上回っていました。
 
カナダの証券会社TDセキュリティーズのシニア商品ストラテジストのダニエル・ガリ氏は、最近の中国での需要の急増について、「人々は、現地の銀在庫の減少に注目している。」と述べていました。
 
「銀は金よりも安いと見られていることからも、貴金属の上昇基調に参加したい人々にとっては魅力的な投資商品でしょう。」と続けていました。
 
本日、英国ポンドとユーロの金価格は、これらの通貨が米ドルに対して上昇したため、それぞれトロイオンスあたり1831ポンドと2150ユーロに0.3%上昇していました。
 
CMEデリバティブ取引所が追跡したトレーダーのポジションによると、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げを実施する確率が1週間前の49%から月曜日には56%に上昇したことからも、米国通貨の主要通貨に対する価値を示す指標であるドルインデックスと、米国債の利回りのベンチマークである米国債10年物利回りはともに月曜日に下げ幅を拡大していました。
 
この数週間タカ派的な講演やコメントが相次いていましたが、FRB関係者は6月11と12日に予定されている米中央銀行の政策決定会合を前に、現在金融政策についてコメントが許されていないブラックアウト期間に入っています。
 
また、木曜日には欧州中央銀行(ECB)の政策決定が発表され、ECBは基準金利を現在の歴史的な高水準から引き下げると予想されています。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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