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金価格ディリーレポート(2023年12月4日) 金相場はFRB利下げ観測後退で史上最高値の急騰分を失う

 

金相場は月曜日アジア取引開始時にスイスフランを除く全ての主要通貨で史上最高値を更新した後、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の「微妙な」発言を受けて、トレーダーが2024年3月にも米連邦準備理事会(FRB)による利下げが実施されるとの見方に調整をしたことから、急騰分を失いさらに下げていました。

ドル建て金地金は、トロイオンスあたり2143ドルと、5月に一時的につけた「史上最高値」を70ドル近く上回り、記録的な急騰を見せていました。

また、ユーロ建て金価格は10月初旬にハマスがイスラエル南部を攻撃した直後につけたピーク時を3.5%上回り1967ユーロ、英国ポンド建て金価格は1.6%上回る1685ポンドをつけていました。
 
その後、金相場はこの上げ幅を削ったのちに、ロンドン時間昼過ぎにさらに下落し、米国の10月の工場受注が減少し、景気減速を示唆する中で、トロイオンスあたり2025ドル、1605ポンド、1870ユーロへと下げて取引されていました。
 
一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
スイスの精錬・金融グループMKSパンプの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は、「金は単にFRBの利下げ期待度を示す代用品になっている」と述べていました。
 
金利の低下は、利回りゼロの金を保有する機会コストを減少させますが、FRBの2024年の金融政策会議における利下げ観測は金曜日に急激に広がり、中央銀行が早ければ3月に主要金利を今日の20年来の高水準である5.33%から引き下げ始めることを3分の2に近い確率で予想していました。
 
しかし、CMEのデリバティブ取引所の FedWatchツールによると、その確実性は、月曜日の金の夜間の急騰を受けて後退し、5ポイント下げて58.4%になっていました。 
 
パウエルFRB議長は金曜日の講演で、「われわれが取った強力な行動により、政策金利は制限的な領域に入った」と述べていました。
 
焼く1.1兆ドルのファンドを持つLPL FinancialのチーフエコノミストのJeffrey Roach氏は「 数週間前の『制限的』とのみ述べていた際から明らかに異なる」と述べ、「市場がその微妙さに注目するのは当然だろう。」と続けていました。
 
FRBは来週、2023年最後の金利決定を行う予定だが、パウエル議長は金曜日、10月までの6ヵ月間の消費者物価の コア指標が年平均2.5%で、FRBの目標である2%に近いと指摘していました。
 
先週発表された新しいデータによると、FRBが注目するインフレ指標の個人消費支出指数(食料品と燃料費を除いたもの)のコア・デフレーターは、10月には年率3.7%から3.5%に鈍化し、予想と一致していました。
 
シカゴ連銀総裁で政策委員のオースタン・グールスビー氏は金曜日、「インフレ率が3%から抜け出せないという証拠はない」と述べ、生活費の上昇ペースはFRBの目標である2%まで下がると予想していました。
 
しかし、本日の金価格の史上最高値記録後の下げは、政府機関や多くの金融機関、商業機関の借入コストの指標となる10年物米国債利回りが、前週金曜日にパウエル議長のコメントと予想を下回る米製造業関連指数で9月初旬以来の低さへ下げた後に、年率4.25%へと上昇すると共に起きていました。
 
このため欧米の株式市場は下落し、ハイテク株比率の高いニューヨークのナスダック指数は金曜日の22ヶ月ぶりの高値から1%下落していました。一方、インドのSENSEXは一夜にして史上最高値を更新し、暗号「通貨」ビットコインは1年半ぶりの高値を更新した。
 
また、原油相場は、イランに支援されたイエメンの反政府武装勢力「フーシ派」が紅海で米海軍や民間船舶を攻撃したものの、世界的な需要に対する疑念や、生産国からなるOPEC+のカルテルの最新の供給削減決定に対する疑念が広がる中で、先週の下げ幅を拡大していました。
 
銀価格は、金価格が急騰する中、トロイオンスあたり25.88ドルまで上昇し、5月初旬以来の高値となったったものの、その後上昇幅を縮小し、24.55ドルまで下落していました。
 
金地金の世界最大の消費市場である中国国内の金価格は、月曜日に1グラムあたり480円の史上最高値で固定されましたが、その動きは世界の金ドル相場の急騰よりも小さく、ロンドンから上海への新規輸入のインセンティブとなるプレミアムは、トロイオンスあたり9ドルと、コロナ禍以前の平均値まで急低下していました。
 
この新規輸入のインセンティブは、中国の中央銀行が中国の消費者需要の高まりに直面し、新規輸入ライセンスの発行を制限することにより、金の流入を制限したため、今年9月にはトロイオンスあたり121ドルまで上昇していました。
 
日本の金相場も月曜日早朝に急騰し、1グラムあたり10,083円の史上最高値をつけていました。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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