金価格ディリーレポート(2023年11月13日)33兆ドルの米債務に対する「ネガティブ」な格付け引き下げや、迫る米政府機関閉鎖は金相場を押し上げるには至らず 2023年11月13日 月曜日 18:08 月曜日、金価格は3週間ぶりの安値圏で推移し、債券市場では、ムーディーズが米国の33兆ドルの債務残高からも見通しを「ネガティブ」に引き下げた後も、米国債利回りは先週の急騰分をほぼ維持していました。 ドル建て金相場は、先週、米連邦準備制度理事会(FRB)を始めとする主要中央銀行が、頑強なインフレに直面する中、金利政策をめぐり「より長く、より高く」を繰り返す中で、2.7%下落した後、10月中旬以来の安値となるトロイオンスあたり1937ドルと、本日ロンドン時間昼過ぎに金曜の終値水準を維持していました。 この間米国債価格は先週の下落を維持し、30年物国債利回りは、前週木曜日の入札で十分な需要が見られなかったことで15ベーシスポイント急騰した後に、本日は4.70%前後を維持していました。 前週の入札では投資家が購入しなかった供給分を購入することに同意するプライマリーディーラーは、ワシントンから提示された240億ドルの新規債券のほぼ1/4を受け入れなければならず、これは過去1年間の平均の2倍以上となっていました。 格付け会社ムーディーズは金曜日、米国債の見通しを「安定的」から 「ネガティブ」に修正したことを発表していました。その理由として、年間1兆ドルを超える債務返済コストの急増に加え、失脚したドナルド・トランプ元大統領がさらに高齢の現職ジョー・バイデンと対決する可能性が高い2024年の選挙を控え、「政治的分極化が続いている」ことを挙げていました。 世界最大の経済大国の政府の負債総額は現在 33兆7,000億ドルで、今年に入ってから7.3%増加しています。この増加のほぼすべては、米国の地方銀行株のミニ危機の直後、政府機関の閉鎖を回避するために5月末に行われた債務上限合意以降のものとなっています。 ドル建て金価格は、2023年初頭から7.1%上昇している。 連邦政府が資金不足に陥り、閉鎖に追い込まれることを回避するために今年5月に結ばれた取り決めが金曜日に期限切れとなることから、米下院議長のジョンソン氏は週末、連邦政府機関の一部に新年まで資金を供給する「つなぎ予算」を提案しました。 しかし、ジョンソン氏の所属する共和党と対する民主党の政治家たちは、前者は 支出の削減を要求し、後者はそれを「超複雑」と呼び、ジョンソン氏の案に反発していました。 「ムーディーズが米国の見通しを変更したことは、議会共和党の過激主義による機能不全の結果である。」とホワイトハウスのスポークスマンは週末に述べていました。 「私たちの33兆6000億ドルの負債は持続不可能です」と、議会共和党トップのジョンソン氏は反論し、ウクライナやイスラエルが現在行っている戦争に一時的な資金を提供しないことを提案し、バイデン大統領の支出計画を「無謀で...私たちの国家安全保障と経済にとって危険です」と述べていました。 「我々は 財政再建のために闘う。」と続けていました。 金相場は、ユーロ建て、英ポンド建てともに0.1%安となり、それぞれ3週間ぶりの安値となるトロイオンスあたり1814ユーロ、1582ポンドをつけていました。 銀価格は、ドル建てで0.9%下落し、トロイオンスあたり22.05ドルと1ヶ月ぶりの安値へと下げていました。 一方、原油価格は、欧州の指標であるブレントがバレルあたり81ドル前後で推移し、前週の3か月半ぶりの安値から2ドルほど上昇していました。これは、産油国で構成されるOPECの最新月次市場レポートが、「健全な石油市場のファンダメンタルズ」が投機トレーダーによって無視されていると主張する中のことでした。 競合する格付け会社フィッチが、2011年にすでに米国の格下げをしていたS&Pに続いて8月に米国債の格付けを引き下げた後、ムーディーズのみが、3大格付け会社の中で、現在単独で米国債を「トリプルA」に格付けを残しています。ちなみに、2011年のS&Pによる米国債の格下げの際に金価格は当時の史上最高値をつけていました。