金価格ディリーレポート(2022年8月8日)金ETFの残高が更に減少する中、コメックスの金先物・オプションのショートカバーが進み、金と銀の価格が上昇
金相場は、コメックス先物・オプションの投機筋が貴金属に対する弱気なポジションを減らした後、3週連続の上昇となっていましたが、金ETFは9月に米連邦準備制度理事会が再び積極的な利上げを支持するという観測から縮小を続けていました。
銀価格はこの間さらに上昇し、トロイオンスあたり20.40ドルを超え、先週の1ヶ月の高値に近づいていました。
そして、ドル建ての金価格は、金曜日の 良好な米雇用統計を前につけた一ヶ月ぶりの高値から10ドル下回るトロイオンスあたり1785ドルまで上昇していました。
しかし、同日の予想を上回る米雇用統計はドルを一週間ぶりの高さへ強含ませて、金と銀の価格は週間の上昇を保持したものの同日の上昇分を削っていました。
前週末に発表されたコメックスの資金運用業者のポジションは、8月2日の一週間で弱気ポジションを28%減らし、強気ポジションを7%近く増やしていました。
全体として、それによって資金運用業者のネットポジションは、2019年4月以来のネットショートからネットロングに転換し、その想定重量ベースでは「1週間で約120トンの金がコメックスで買われたことを意味する」と、 日本マーケット貴金属市場協会の代表理事の池水雄一氏は最新のノートで指摘していました。
しかし、このカテゴリーのショートポジションは、過去5年間の平均より47%大きく、ロングポジションは平均より37%少ないものとなっていました。
米規制当局である商品先物取引委員会(CFTC)がまとめた最新のデータでは、先週火曜日時点の報告可能なポジションが示されています。
鉱業界のマーケティング団体であるワールド・ゴールド・カウンシルのチーフ・マーケット・ストラテジストであるジョン・リード氏は、「金は先週後半にトロイオンスあたり1795ドルの直近の高値をつけ、価格上昇に伴う建玉の減少から、 さらなるショートカバーが見られたと考えられる」と述べていました。
先週の金価格の急騰に先立ち、コメックス金先物・オプションの市場全体の建玉数は3週連続で減少していました。
一方、金地金ETFの最大銘柄であるSPDRゴールドトラスト(NYSEArca: GLD)は、その残高を減少し続け、先週金曜日の7月の好調な非農業部門雇用者数のデータ発表後、1.2%減と1月中旬以来最も少ない999トンへと下げていました。
そして、前週5週ぶりに週間の減少を止めていたものの、再び週間の下げを開始したことを意味していました。
第2銘柄のiShareゴールド金ETF(NYSEArca: IAU)も先週、その残高を縮小し、10週連続での残高減少を記録し、2月中旬以来最小の規模に縮小していました。
来月の米連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定を前に、 CMEのFedWatchツールによると、市場は3会合連続で75ベーシスポイントの引き上げを行う確率を本日68.5%と見ており、金曜日の雇用統計を前に景気後退懸念が強まったことから見られたより「ハト派」的観測による29%から大きく増加していたことが明らかとなっていました。
日曜日、米上院はジョー・バイデン大統領による最新の経済対策を可決しました。この4300億ドルの計画は、バイデン大統領を支持する民主党議員から、米国における気候変動対策への最大の投資と称されていました。
しかし対する共和党は、この案では40年来の高水準にあるインフレを抑えることができず、世界最大の経済大国を不況に陥れかねない増税が必要だと主張していました。
一方中国は、先週大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ2位の要職を務めるナンシー・ペロシ米下院議長が、中国が独立した国ではなく中国の一部とみなしている台湾を訪問したことに抗議し、月曜日に台湾周辺の海域と空域で新たな軍事訓練を前週に続き実施すると発表していました。