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金価格ディリーレポート(2022年2月3日)トランプ大統領の「貿易戦争」が株価を急落させ、金は新高値を更新

ドナルド・トランプ米大統領が、米国の貿易相手国であるカナダ、メキシコ、中国からの全ての商品の輸入に貿易関税を課したことで、株式市場は下落し、金価格は史上最高値を更新することとなりました。
 
トランプ大統領は、金曜日に関税を発動することを警告して 金地金を高騰させた後、2月4日火曜日から、カナダとメキシコからの輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の関税を課すことを土曜日に発表していました。
 
ニューヨークのS&P500指数は月曜日の取引開始1時間で1.8%下落し、対照的に金は金曜の史上最高値から0.7%さらに上昇していました。
 
過去ひと月間のドル建て金価格とS&P500種のチャート グーグルファイナンス
 
 トランプ大統領はまた、「EUは我々を本当に利用してきた」、「世界最大の経済大国への輸出が多い一方で、米国製品を買わないことで我々をひどい扱いをしてきた」として、「間違いなく」EUに関税を課すと宣言していました。
 
欧州広範の株価指数であるEuro Stoxx600指数が本日1.3%下落する中、ユーロ建て金はアジア市場が始まると2739ユーロまで急騰し、その後再びトロイオンスあたり2760ユーロの新高値まで急騰していました。これは、金曜日の最高値を1.7%上回るものでした。この間、20か国からなる通貨同盟の製造業活動は一月にトランプ大統領の関税発動以前に縮小していました。
 
カナダの株価指数であるTSX株価指数は、2.6%下落し、カナダドル相場が2003年以来のドル安水準まで下落したため、金価格は1.7%上昇していました。
 
日本円、インドルピー、英国ポンド、豪ドル、スイスフラン、その他全ての世界通貨で史上最高値を更新し、1月の米国製造業調査で全国的に製造業活動が活発化していることが指摘されたにも関わらず、金も2828ドルを上回り史上最高値を更新していました。
 
これらの調査の中で、米国の購買担当者は、トランプ大統領の就任を前に、輸入品の駆け込み需要が、国境を越えた国内サプライチェーン全体のコストを上昇させたため、支払い価格が5月以来最も速いペースで上昇したと報告していました。
 
アメリカの貿易赤字は、関税引き上げを前に企業が備蓄を急いだため、すでに12月に新記録を更新していました。
 
日本貴金属マーケット場協会の池水雄一代表理事は、トランプ大統領の新たな関税を前に、ロンドンから金地金がコメックス承認の米国倉庫に急激に集まっていることについて、「私が過去37年間、金地金市場に携わってきた経験上、コメックスでも東京工業品取引所でも、このようなことは一度もありませんでした。」と、トランプ大統領が関税を課す前に、コメックスが承認する米国の倉庫に金地金がロンドンから多く移動していることについて述べていました。
 
「問題は、誰がこれほど高いプレミアムで、これほど多くの金地金の現物を引き取るのかということだ。そうなれば、(強気のComexトレーダーは)トロイオンスあたり30ドルから40ドルの損失を被ることになる。そして、そのプレミアムは裁定取引を行った[銀行の]トレーダーに支払われる。」
 
「私がまだ銀行のトレーディングデスクで取引していればよかった。」と続けていました。
 
「これは、貿易戦争にステロイドを加えたようなものだ。」と英国のコンサルタント会社オックスフォード・エコノミクスのチーフ・エコノミスト、ライアン・スウィート氏は、トランプ氏が週末に発表した中国、メキシコ、カナダに対する貿易戦争と、トランプ氏の第一期目に見られた、中国やG7の同盟国に対するより限定的な貿易戦争とを比較していました。
 
カナダのトルドー首相は一夜にして、1550億カナダドル相当の米国製品に対する25%の関税を土曜日に開始すると発表し、メキシコのクラウディア・シャインバウム大統領も報復措置を約束していました。
 
中国もまた、世界第2位の経済大国が旧正月の休暇中に、新たな関税を即座に発表することなく、トランプ大統領の中国製品への10%課税に「対応する対抗措置」を宣言していました。
 
米投資銀行モルガン・スタンレーの公共政策調査チームは、「当社のエコノミストは、関税が完全に実施されれば、意味のある結果をもたらすと予想している」とし、メキシコの景気後退が基本ケースとなり、米国のインフレ率は今後3カ月で0.3~0.6ポイント上昇し、米国の成長率は今後1年で0.7~1.1ポイント低下する可能性があると予測していました。
 
金とは対照的に銀相場は、月曜日のトランプ大統領の貿易関税の影響で世界の株式市場が低迷する中、金曜の7週間ぶりの高値を回復することはありませんでした。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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