金価格ディリーレポート(2021年3月7日)金価格はETFからの資金流出とアジアの金需要が高まる中で「重要なサポートライン」を試す
金価格は、月曜の昼過ぎにアナリストが重要と見るサポートラインを維持していました。
この間、米国上院がジョー・バイデン新大統領の1.9兆ドルの景気刺激法案を可決した後に、ドルが今年の最高値へ上昇し、債券利回りが1年ぶりの高値を更新したため、金価格はロンドン時間序盤の上昇を帳消しにしていました。
金は 2020年のコロナ危機による上昇を全て消し去り、金現物価格は月曜日の朝に先週の9ヶ月ぶりの安値から反発したものの、1オンスあたり1690ドルまで0.5%下落していました。
ドルインデックスは、外国為替市場の主要通貨に対する米国通貨の価値を示す指標で、4営業日連続で上昇し、これまでのところ2021年の最高値を記録していました。
また、世界指標の米国10年債利回りは、月曜日午前中に一時1.617%まで上昇し、2020年2月以来の高値を記録していました。
派生商品のプラットフォームを提供するSaxo Bankのコモディティ・ストラテジスト、Ole Hansen氏は、「金は、米ドルが強くなり、実質利回りが上昇したにもかかわらず、1688ドルという重要な サポートラインを維持することができた」と述べていました。
「このところの金利上昇とドル高でゴールドには厳しい環境ですが、それでもこの一週間、で1700ドル割れたところでは意外とサポートされています」と、元ICBCスタンダード東京支店長で、現在は 日本貴金属マーケット市場協会(JBMA)の代表理事を務める池水雄一氏もまた指摘していました。
「その一因は、
金鉱会社のマーケティング団体のワールド・ゴールド・カウンシルの最新報告書によると、先月の旧正月の休暇中のすべての宝飾品カテゴリーの売上高は 前年比161%増となり、宝飾品、バー、コインを問わず、あらゆる形態の金に対する家庭の需要は前年比80%以上増加していました。
上海黄金交易所(SGE)の金価格は、本日もロンドン受け渡しの金価格を上回る水準で取引されており、トロイオンスあたり10ドルのプレミアムとなっていました。
これは、先週のプレミアム平均が9ドルを上回るものであった後のことで、この水準は金地金の世界一の消費国である中国への新たな金地金輸入を行う動機づけとしては、17カ月以上ぶりの高さとなっていました。
貴金属世界第2の消費国であるインドの金は、先週、ルピー建ての金価格が10グラムあたり44,217ルピーと11カ月ぶりの安値を記録したことから、ロンドン価格よりもプレミアムで取引され、トロイオンスあたり5ドルとなっていました。
インドの国内の金価格は、 2020年4月に月間平均価格がトロイオンスあたり64ドルのディスカウントと記録的な水準を記録した後、今年はロンドン受け渡し価格に対して割高のプレミアムを付ける相対的に高い傾向にあります。
「需要はここ数日で大幅に改善しています。小売のバイヤーは、特に結婚式のために、購入を行っている」とロイター通信は、西部州マハラシュトラ州のサタラの宝石商Mangesh Deviのコメントを引用しています。
今後のヒンドゥー教の結婚式のシーズンは、アクシャヤ・トリティヤの春のお祭りと重なり、金購入が高まる時期となります。
ブルームバーグによると、インドへの金地金の輸入は2月に前年同月比41%増となり、15ヶ月ぶりの高値を記録していました。
このように、アジアの消費需要は2020年のコロナ危機以前の水準へ戻りつつありますが、「金利高、ドル高によるゴールドETFからの投資家の売りに対して、久しぶりのアジアの需要がどれくらいマーケットを支えるのか、今後の行方を左右しそうです。」とJBMAの池水氏は述べています。
金を裏付けとしたETFは金曜日も資金の流出が続き、SPDRゴールド・トラスト(NYSEArca: GLD)は8週連続、iシェアーズの金ETF(NYSEArca: IAU)は7週連続の週間の残高減少を記録していました。
それに対し、原油価格は月曜日の朝、Covid-19の流行が始まって以来の高値である1バレル70ドルを超えて上昇していました。これは、先週のOpecプラスの生産量上限合意の後、土曜日にバイデン大統領の1.9兆ドルの景気刺激策の上院承認を獲得した後、日曜日にイエメンのフーシ派によるサウジアラビアの石油施設への攻撃が背景となっていました。
なお、産業用貴金属である銀の価格は、先週5.4%下落した後、トロイオンスあたり25.20ドルと0.1%下落していました。
また、グリーン水素の生産を含む産業用途からの需要の3分の2のプラチナは、前週の5.2%の下落に続いて、トロイオンスあたり1133ドルと0.2%上昇していました。