金価格ディリーレポート(2020年6月1日)欧州の移動制限の段階解除で「工業用途」と「投資熱の高まり」の銀需要増加期待を背景に銀上昇
銀価格は月曜日に金を上回るペースで上昇しています。
この間金相場は、米国における白人警官の暴行による黒人死亡事件への抗議デモが全米に広がる中で、ロンドン時間午前中の上げ幅をロンドン昼過ぎにほぼ失っていました。
欧州の経済が新型コロナウイルスの感染防止のロックダウン(都市封鎖)の段階的解除によって再開される中、金現物価格は週明け一週間ぶりの高さのトロイオンスあたり1744ドルまで上昇していました。この間、ドルインデックスは5営業日連続で下げて3ヶ月ぶりの低さへと下げていました。
銀価格もまた当初の2.8%上げのトロイオンスあたり18.36ドルと2月24日以来の高さから多少下げてはいます。
銀は先月ドルが強含む中でも、ドル建てですでに14.7%上昇していました。これは、3月半ばにCovid-19 の感染を防ぐために欧米諸国でロックダウンが行われ、11年ぶりの低さのトロイオンスあたり11.64どるから回復をする中でです。
この銀の勢いは、金と銀の価値比較である金銀比価を、3ヶ月ぶりの低さの95を割る水準まで押し下げることとなりました。この数値は、ロックダウンが行われた3月に123と最高値を記録していました。
銀の用途は主として工業用であるために、「金とは異なり、新型コロナウイルス関連の移動制限が主要国で解除されることで、経済回復の希望の高まりが銀の需要増加を促すことになるかもしれません。」と、Aberdeen Standard Investmentsの上場投資信託部門長のSteven Dunn氏は述べています。
「金が良いパフォーマンスを見せる期間が長いほど、投機家は銀が割安だと思うようになるのです。」とトロントのHighbury CapitalのファンドマネージャーのGrant Beasley氏がコメントしています。
週末に発表された最新のデーターによると、5月26日までの一週間でコメックスの銀先物・オプションの資金運用者は強気ポジションを増加させ、弱気ポジションを前週の水準へ保っていました。
そのために、ネットロングポジションは11週で最高の高さまで増加していました。
それに対し、金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、1年ぶりの低い水準へ減少し、建玉は2ヶ月ぶりに100万枚を割っていました。
このような中でも、金の建玉は、過去平均を65.9%上回るもので、銀はその3.1%にすぎません。
「投機家が(銀に)熱すると、一般投資家は更に熱が入ります。そして、彼らがさらなる熱望すると、それは市場はほぼピークに近いと言えるでしょう。」とHighbury Capitalは続けてコメントしています。
世界の株式市場は昨夜からアジア市場で見られた上げ幅をNY市場が開く際には失っていました。これは、中国政府が国営企業に対して米国からの大豆や豚肉等の農産品の購入を一時的に停止することを命じたと伝えられたことからでした。
これは、トランプ大統領が先週金曜日に香港に認めている関税などの優遇措置を取り消す考えを示したことへの対抗措置というものの、その発動時期を明確しないなど、比較的ハト派的なものとなっていました。
中国の共産党機関紙の人民日報系の環球時報では、米国の抗議デモを香港の民主派の動向と並べ立てて米政府への批判を展開していました。
ユーロ建て金相場は本日昼過ぎに、今週木曜日の欧州中央銀行による政策金利発表でさらなる緩和策が発表される期待が高まる中で、トロイオンスあたり1560ユーロと、4月半ばに最高値を更新した水準を推移していました。
ポンド建て金相場は、トロイオンスあたり1400ポンドと、英国ポンドが為替市場で強含む中でほぼ横ばいとなっていました。