金市場ニュース

金価格ディリーニュース(2022年3月27日)金価格は銀行懸念のピークから2.7%下げる中、金先物とETFのより強気基調の資金流入の余地あり

欧州株式市場が先週の急落から上昇する中で金相場は2営業日連続で下落し、コメックス先物・オプションの投機家は、米国と欧州の銀行不安の中で貴金属がトロイオンスあたり2000ドルを超えて上昇することを見越したポジションを形成していました。
 
スイスの主要銀行のクレディ・スイスの 「ショットガン」的なUBSによる買収と米国の2つの地方銀行の破綻を経て、米国財務省は金曜日に米国の銀行システムは「 健全で回復力がある」と宣言し、世界一の経済大国の金融安定監視委員会の見解に同意していました。
 
その後、米国の規制当局は日曜日の夕方、ファースト・シチズンズ銀行(Nasdaq: FCNCA)がシリコンバレー銀行の預金と貸付金を買収することに合意したと発表しましたが、SVBの破綻により、預金保険の支払い額は200億ドルに達する見込みです。
 
ドル建て金地金はロンドン時間昼過ぎに、トロイオンスあたり1.4%安の1950ドルで取引され、2000ドルを超えた先週の今年最高値から2.7%下げていました。
 
そして、米国の規制当局であるCFTCが IT関連障害からようやく更新した最新のデータによると、ヘッジファンドやその他のレバレッジを効かせた投機家が、コメックス金先物・オプションにおいて、銀行危機の中でグループとして強気の見方を拡大し、マネージドマネーのカテゴリーのネット投機ポジションが7週間ぶりの高水準となったことが示されていました。
 
しかし、先週火曜日までの1週間で、このグループは弱気ポジションを強気ポジションの増加分の約3倍減少させていました。
 
コメックスの資金運用業者の先物・オプションのショートとロングポジションと金価格の推移 出典元 CFTCとLBMAデータからブリオンボールトが作成
 
「シリコンバレーバンク(SVB)とシグネチャーの破綻直後の数日間、トレーダーが危機の際に安全な避難場所とされる資産を探すために、 戦術的なポジションが大幅に増加した」と、ロンドンの地金市場形成銀行スタンダードチャータードの貴金属アナリスト、スキ・クーパー氏は述べていました。
 
「2月に)投資家の資金が流出したため、今回の問題の始まりではポジションが軽く、さらなる売りの量を減らすことができた」とクーパー氏は付け加え、以前の危機では、多くの投資家が他の投資のマージンコールを満たすために金を売ることを強いられたため、この影響は相殺されたと説明していました。
 
資金運用業者のネットロングポジションの増加の大部分は、「ショートカバーによってもたらされた」ため、デリバティブプラットフォームのSaxo Bankの最新のレポートによると、「新たなロングによる上昇の可能性は、(もし)基本的な展開が上昇をサポートするならば、残っている」とのこと。
 
資金運用業者のネットロングポジションは3月初旬に、米国のFRBを筆頭に先進国の中央銀行が急な利上げを推進することを確認して金価格が2年半ぶりの低値をつけた11月上旬以来の低水準になったことから、ネットのロングポジションはその時点から343%増加していました。
 
金を裏付けとする上場投資信託(ETF)は、過去2週間連続で拡大し、金ETFで最大規模のSPDRゴールドシェア(NYSEArca: GLD)と世界第2位のiShareゴールド(NYSEArca: IAU)が共に投資家の純流入を記録し、今月は10ヶ月ぶりの純流入に向かう傾向となっています。
 
日本貴金属マーケット協会の代表理事である池水雄一氏は、最新のレポートで「金ETFの保有量はこれまで減少の一途であったので、SVB破綻は大きく流れを変えたと言える。」と2週間の金のETFの資金流入のデータを紹介して述べています。
 
ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は日曜日、銀行部門の最近の混乱が米国を景気後退に近づけるかどうかという質問に対し、「 間違いなく今、私たちに近づいている」と述べていました。カシュカリ氏は、投票権を持つメンバーで、最もタカ派のFOMCの投票権を持っているメンバーです。
 
「借り手と貸し手が神経質になっているために資本市場が閉鎖されたままなら、これはおそらく経済にもっと大きな影響を与えることになるだろう」とカシュカリ氏は述べ、資本市場は過去2週間ほとんど閉鎖されていることを指摘しました。
 
一方、欧州では、欧州中央銀行のルイス・デ・ギンドス副総裁が、最近の銀行セクターの混乱が 成長率とインフレ率の低下をもたらすかもしれないと語っていました。
 
「我々の印象では、これらはユーロ圏の信用基準のさらなる引き締めにつながるだろう。」
 
米国に話を戻すと、シリコンバレー銀行の破綻を受けて、3月15日に終わる週の小規模銀行の 預金残高は1190億ドル減少して5兆4600億ドルとなっていました。 これは、2007年3月16日に終了した週以来、預金全体に対する割合で最大の減少であることが、連邦準備制度理事会(FRB)から金曜日に発表されたデータで明らかになっていました。
 
 
一方で、小規模銀行(米国の商業銀行のうち最大手25行を除く)の 借入金は2530億ドル増加し、過去最高の6696億ドルに達したことが、FRBの週次データで明らかになっていました。
 
「次の金利会合、つまり次のFOMCについて何らかの予測を立てるのは早すぎる。」とカシュカリ氏は述べた上で、銀行部門のストレスが 「最も注目される要因 」になるだろうと付け加えていました。
 
次の米政策会合は5月2日~3日に予定されている。 連邦準備制度理事会(FRB)は今月、政策金利を25bp引き上げ、あと1回だけ引き上げる可能性があると示唆しています。
 
「もし、利上げサイクルの終盤にさしかかったら、(金の)上昇余地はもっと大きくなる」とCooper氏は述べていました。
 
月曜日には、欧州全域のストックス600指数が0.9%上昇し、金曜日に3.8%下落した地域の銀行株の一部を取り戻しました。ドイツの最大規模のドイツ銀行 (ETR: DBK) の株式は、金曜日に8.5%下落した後に本日ロンドン昼過ぎまでに3.3%上昇していました。
 
ユーロ建ての金価格は、月曜日に1.5%下落し1811ユーロとなり、ポンド建ての金価格は1.7%下落し1591ポンドとなっていました。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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