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金価格ディリーニュース(2022年2月7日)長期金利が更に上げ、株価のボラティリティが増す中で、金価格は上昇

月曜日のロンドン取引で、金価格はドル、ユーロ、ポンド建てで1週間ぶりの高値へと上昇しています。
 
この間、米長期金利は2年ぶりの高水準を維持し、世界の株式市場が木曜日に発表される今週の米国のインフレデータを前に神経質に動いていました。
 
ドル建ての金現物価格は、ロンドン時間昼過ぎに0.4%上昇し、トロイオンスあたり1815ドルとなり、先週の0.9%の上昇を拡大していました。
 
日本貴金属マーケット協会(JBMA)の代表理事の池水雄一氏は、「この長期金利で1800ドルを保つというのは相当ゴールドが堅調なイメージです。」と述べ、金曜日の 予想を上回る雇用統計後、米10年債利回りが1.92%と2019年12月以来の高さに達したことを指摘していました。
 
10年債利回りが本日その水準を維持したことで、米物価連動国債の10年物TIPS債が示唆する実質金利もマイナス0.48%と、2020年6月以来の高いながらマイナス水準で、金曜日の高値を少し下げた水準で堅調に推移しています。
米物価連動国債(TIPS)と金価格の推移 出典元 LBMAと米財務省のデータを基にブリオンボールトが作成
 
金の堅固さは、ポートフォリオヘッジに対する需要の高まりと、連邦準備制度がインフレへの取り組みに遅れをとるか、締め付けすぎて成長が鈍化するかのどちらかであるという観測が広がっているからだ」と、スイス銀行と地金のマーケットメーカーのUBSは最新のレポートで述べていました。
 
UBSのモデルによると、VIX指数で示されるように、今年に入ってからの株式市場のボラティリティーの上昇が、金価格の重要な支えになっているとのことです。
 
「ウォール街の恐怖指数」としても知られるCboeボラティリティ・インデックスは、2週間前の「タカ派」米連邦準備制度理事会の声明とコメントの後に32近くまで上昇し、2021年1月以来の高値となり、先週木曜日にフェイスブックを所有するメタ(Nasdaq:FB)の株が26%急落し、評価額で2300億ドルを失って 株式市場史上最大の1日あたりの下げ幅を記録したことで、再び24まで上昇していました。
 
木曜日に発表されるアメリカの1月の消費者物価指数は、事前予想では年間数値が7%を超え、1980年代初頭以来の高水準になるとされており、このデータ次第ではより大きなボラティリティのの可能性があるとも予想されています。
 
あるトレーディング・コンサルタントは、「広く所有されている銘柄に大きな動きが続くと、投資家は株式市場に対して消極的になる」と ロイターへコメントしていました。
 
そして、「ひとつだけ確かなことは、ボラティリティは今後も続くということだ」と続けていました。
 
本日月曜日、アジアの株式市場においては、旧正月の連休から再開した中国のCSI300指数が1.5%上昇した以外は、各証券取引所が再び下落していました。
 
そして、欧州の株価は、金曜日のウォール街の後半の反転を受けて全般高く始まっていましたが、ストックス欧州600指数は2022年に現段階までで5%のマイナスとなっています。
 
S&P500種とナスダック総合指数は、木曜日に急落したにもかかわらず、それぞれ週間では1.6%と2.4%上昇し、クリスマス前以来の最高の上げ幅を記録していました。しかし、米国指数先物は月曜日のニューヨークのオープニングを前に下落していました。この2つの指数は、今年に入りそれおぞれ5.6%と9.9%の下落となっています。
 
それに対し、ドル建ての金価格は前年末1820ドルと本日とほぼ同水準となっています。
 
一方、ユーロ建ての金価格は、欧州中央銀行理事会のKlaas Knot氏が、19カ国からなる通貨圏が 年内にコロナ危機後の最初の利上げに踏み切るとの見通しを示したことから、0.4%上昇してトロイオンスあたり1585ユーロを付けていました。
 
ユーロ圏の債券利回りはこれを受けてさらに上昇し、ドイツの10年物国債金利は先週2019年5月から続くマイナス利回りから転換し、本日も引き続き0.24%を維持していました。先週のマイナス金利をプラスへと転換させた動きは、ラガルドECB総裁が木曜日の金融政策決定会合で現状維持を決定した後の記者会見で、2022年の利上げは「ほぼありそうにない」というこれまでの発言を繰り返さなかったことが背景となっていました。
 
また、英国ポンド建て金相場は、先週イングランド銀行が2会合連続で利上げを行い政策金利を0.5%とした後に10年物英国国債利回りが達した2019年来の高さの年率1.40%を維持する中で、月曜日も上昇し、0.5%高の1週間ぶりの高値となるトロイオンスあたり1342ポンドとなっていました。ちなみに、イングランド銀行の金融政策委員会のメンバー9人中4人は0.75%への利上げを高インフレを理由に支持していました。
 
そのような中、月曜日に発表された住宅ローン会社では英国有数のハリファックスが月曜日に発表したデータによると、 英国の住宅価格は先月過去最高を記録していました。
 
金の世界最大の消費国である中国の上海黄金交易所(SGE)の金価格は、中国が旧正月の一週間の休暇から戻り、ロンドン相場に対してトロイオンスあたり5ドルのプレミアムを付けていました。これは、2021年の年間平均プレミアムとほぼ同水準となります。
 
北京で開幕した冬季オリンピックの初日金曜日に、中国とロシアの首脳は、ウクライナと台湾をめぐる米国と北大西洋条約機構の対立を乗り越え、欧米の干渉と支配に対すべくさらに協力することを約束し、「 ノーリミット」パートナーシップを宣言していました。
 
「実質金利はマイナスのままであり、貿易と地政学的リスクの高まりは 金をサポートする可能性がある」と、地金市場のマーケットメーカーのHSBCのアナリスト、ジェームズ・スティール氏は、業界団体のロンドン貴金属市場協会が発表した新しい2022年予測調査の中で述べていました。
 
そして、「金融市場の不安定さや不確実性が高まれば、金にとって好材料となる。」と続けています。
 
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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