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金と米国債務の相関関係について

 

金価格と米国債務規模の相関関係は銀価格よりも強いようですとブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが述べています。
 
「金と米国政府の債務との相関関係、そして銀や物価連動債のような投資資産クラスのパフォーマンスと金の価格がどのように相関しているかを調べようとして、私たちは重要なことから目を離していたようです。
 
そしてこの事実に気が付いたのです。
 
ドイツは株価が上がるとザワークラウトの生産量が増えるということに。
 
あるいはその逆でサワークラフトの生産量が増加すると株価が上がっているのかもしれない。
 
キャベツの酢漬けを食べると、投資家はドイツ株に食欲をそそられるのかもしれません。
 
Dax指数とサワークラフトの生産量 出典元 ブリオンボールト
 
これが金価格や米国債との相関関係にとってどのような意味を持つかは分かりません。
 
そして、2023年にドイツの工場でどれだけのザワークラウトが漬けられ、瓶詰めにされ、缶詰にされたかという最新のデータもまだありません。
 
しかし、もしダックス指数との関係が強いのであれば、おそらくその量はきっと多いことでしょう。
 
もちろん、相関関係は因果関係ではありません。
 
そして、この事実には今後の投資のヒントはありません。
 
それでは、クッキーの値段が上がるとアメリカの消費者は買い物に出かけるのが大好きだということを誰が知っているでしょうか?
 
月次データに基づくと、米国の小売売上高は過去10年間で、チョコレート・チップ・クッキーの平均価格と0.91の相関関係を示しています。
 
この関係がどのように作用しているのか、私には想像がつきません。しかし、この数字は、2014年以降のすべての月における「r」係数を単純にとったもので、もしクッキーの価格と小売売上高が正確に一致して動けば、1.00となります。代わりにマイナス1.00と表示されれば、両者は正反対の動きをすることを意味します。
 
ということは、+0.91という数値は何かしらの意味があるのでしょう。過去10年間、米国の小売売上高と挽肉価格(0.82)、スライスベーコン(0.83)、ポテト(0.84)、さらには金地金価格(0.87)との相関関係よりも強いものとなっています。
 
実際、クッキーと小売価格の相関関係は非常に強く、金価格と米国連邦政府の負債総額、つまり米国納税者の負債総額との間のよく知られ、よく報道されている関係とほぼ一致しているのです。
 
金価格と米国債のチャート 出典元 Global Investors
 
多くのアナリスト、評論家は、金価格の推移とアメリカの国家債務の伸びを比較したがる傾向があります。
 
チャートでも見られるように、2000年以降、両者はともにかなり上昇しています。
 
「アメリカの国家債務は初めて34兆ドルを超え、国民一人当たり10万1000ドル、納税者一人あたり26万4000ドルに相当しています。」と このチャートを示して、US Global InvestorsのFrank Holmes氏は述べています。
 
「今世紀に入ってから、国家債務と金は0.9という強い正の相関係数を共有しています。簡単に言えば、両者は日々似たような動きをする傾向があるということです。
 
つまり、債務が上昇に向かうと考えるなら、金現物や金鉱株への投資を検討することは理にかなっているかもしれません。」と続けています。
 
シンプルです。しかし少しシンプルすぎるでしょうか。
 
数カ月から数年の間に、両方とも値上がりした2つのものは、エクセルの表計算ソフトで「=CORREL」を通すと、かなりの確率で正の相関関係を示します。
 
しかし、だからといって、その間に両者が一緒に動いたとは限らない。それどころか、逆に動くことの方が多いかもしれません。
 

金価格の相関表

この表は、ドル建ての金価格を月末のデータで、他のさまざまな投資資産や経済要因に対して算出したものです。
 
 
 
最初の列は「単純」相関を示しています。これは、ドル建て金価格と米国政府債務、およびリストアップしたさまざまな投資資産やその他の経済要因との過去120ヶ月間の相関関係を計算したものです。
 
対照的に、2つ目の列は、12ヶ月の各期間における相関関係を見ています。そして、過去10年間の平均的な12ヵ月間の数値が示されています。
 
そして3列目には、その平均相関の決定係数(R-square)が表示されています。これは、2つの事柄がどれだけ密接に相関しているかを確認するために、'r'を二重にチェックする、実に退屈な数値です。
 
しかし、ある統計専門家が言うように、別の言い方をすれば、「研究分野によっては、説明できないばらつきが本質的に大きいものがあるとのこと。このような分野では、R2値は低くなる。例えば、人間の行動を説明しようとする研究は、一般的にR2値が50%以下になるとのことです。
 
要するに、「人間は物理的なプロセスのようなものよりも予測するのが難しい」ということです。そして、金市場価格は、株式やビットコイン、あるいは米国連邦債務の大きささえもそうであるように、根底は非常に人間的なものなのなのです。
 
それでは、ナスダック総合指数と金を比較してみましょう。上の最初の欄では、金との相関関係は+0.91と強いものを見せています。しかし、これは金と同様に株式が長期的にどのように上昇したかを示しているに過ぎません。この10年間、ナスダック総合指数は金価格とほとんど相関関係がなかったのです。
 
実際、12ヶ月の中央値はわずかにマイナスとごくわずかでした。そして、決定係数(R-square)はゼロに近くなっています。
 
インベストペディアによれば、「金融の世界では、決定係数(R-square)が70%を超えると一般的に 相関性が高いとみなされ、40%を下回ると相関性が低いとみなされる。しかし、これは厳密なルールではなく、特定の分析に依存する。」とのこと。
 
しかし、ある統計専門家が言うように、別の言い方をすれば、「研究分野によっては、説明できないばらつきが本質的に大きいものもある。このような分野では、決定係数(R-square)は 低くなるはずです。例えば、人間の行動を説明しようとする研究は、一般的に決定係数(R-square)が50%以下になるとのこと。
 
要するに、「人間は物理的なプロセスのようなものよりも予測するのが難しい」ということです。そして、金市場価格は、株式やビットコイン、あるいは米国連邦債務の大きささえもそうであるように、根底は非常に人間的なものなのです。
 
さて、ナスダックと銀を対比してみよう。上の最初の欄で、銀のヘッドライン価格の金との相関は+0.85と良好で強力であるにもかかわらず、この数値は米国政府債務額やナスダック総合指数、消費者物価指数よりも低くなっています。
 
しかし、データを掘り下げると、銀と金価格の古くからの継続的な関係が浮かび上がってきます。12ヶ月の中央値で見ると、銀はサンプルの中で最も強い相関関係を示しており、金との決定係数(R-square)は他の何よりも群を抜いています。
 
次に強いのは実質金利、つまり10年物物価連動債のインフレペースを上回る金利です。金との12ヶ月の相関関係の平均値はマイナス0.64であり、金価格が例えばビットコインと示すものよりもはるかに強力な結びつきを示す強いマイナス値です。しかし、過去10年全体では、実質金利はコラム1で示したように結びつきをはるかに弱くしています。
 
実質利回りの金との強固な決定係数(R-square)は、この10年間の金の値動きの大きな変化を覆い隠しています。
 
それは、アナリスト、トレーダー、識者が強調し続ける変化です。
 
物価連動債(TIPS)の実質金利が急騰しているにもかかわらず、金がこの実質金利の急騰をしのぎ、すべての主要通貨に対して史上最高値を更新し、インフレを考慮した実質ベースでも史上最高値に近い水準を維持していることです。
 
インフレ後の米連邦準備制度理事会(FRB)の年平均金利と金の実質価格(2022年ドル)の比較。 出典元 ブリオンボールト
 
 
相関関係は時間の経過とともに変化します。また、相関関係が強固に保たれている場合でも、1つの時間枠で1つの指標だけを見ても、全体像はわかりません。
 
また、1つのものと他のものとの相関関係を見ることもできません。
 
例えば、米国株は、米国債との10年間の相関関係が金よりもわずかに強く、過去120ヶ月間の金の数値0.96に対して0.97となっています。
 
さらに特筆すべきは、過去10年間で、ナスダック総合指数の12ヶ月の米国債との相関の平均値は金よりも非常に強いことです。
 
金の0.50に対し、ナスダックは0.69であり、ナスダックと米国債の決定係数(R-square)は48%に達し、金と米国物価連動債(TIPS)の実質金利の12ヶ月間の決定係数(R-square)にさえ勝っています。
 
しかし、誰が米国政府の借金が膨らんでいるから米国株を買えと言っただろうか?
 
それでも、金価格と米国債の相関関係が続いていることは、研究する価値があるのです。USグローバル・インベスターズのフランク・ホームズが言うように、「今後数ヶ月、数年の金の方向性を知りたいのであれば、(米国債は)良い場所であると思います。」
 
ブリオンボールトの顧客も同意し始めています。弊社の最新の顧客アンケート結果によると、2024年の貴金属価格の最大の要因として、地金投資家は「金融政策」を25.0%として第一位に上げていました。
 
そして僅差で「地政学」が22.0%で続き、僅差の3位は「政府支出(および政府赤字の規模)」で20.8%であったのです。
 
これは、10年前に始まった年2回の調査で、過去最高の数値となっていました。
 
これらをまとめると、ブリオンボールトのユーザーによると、2024年の貴金属価格を大きく左右するのは、中央銀行であれ、財務省であれ、国防総省であれ(そして紛争)であれ、「政治」が圧倒的に勝っているとのことです。
 
そして、今のところ市場はこの分析に同意しているようです。
 

 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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