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逃避先を求める資産の行方

安全に資産を保有する場所は、どこなのでしょうか。

「かつて、人々はドイツおよび米国債は、資産を保全するには妥当な投資手段ではないと考えたものです。」とブリオンボールトの顧客は語りました。そして、「近い将来に、資産を保全するために投資先を探し、限られた場所へ殺到することとなるでしょう。」と続けたのです。ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュは、ここでこのような資産の行方について解説しています。

金・銀を購入することは模様眺めとなっているようですが、資産を逃避するための国債購入はすでに始まっています。フランス、オランダ、オーストリア、フィンランドの国債利回りは、ドイツ国債同様に大きく下げています。

「国債利回りは歪められているため、経済指標とは調和しないものとなっています。」とMonument SecuritiesのMarc Ostwald氏は、ブルームバーグにコメントしています。

確定利付債券において、利回りは価格と逆の動きをします。フランスの10年物国債の利回りは下げ、年率2.35%と史上最低値を付けました。これは、すでに最低賃金を引き上げ、国有企業のトップの最高賃金を最低賃金の20倍までとすることを提案している、新しい社会党党首オランド大統領が、投資家にとっては、そのリターンを高める、もしくはを投資元本を保証するものであると考えているからかもしれません。

しかし、おそらくこれは、すでにドイツ、米国、英国債を制限上限まで購入しているために、やむなく購入しているためだと思われます。そうでなければ、1.57%という利回りの英国債よりも売られているということは、理解し難いものがあります。この利回りは、現在の年間インフレ率の半分にも至らず、1750年以来英国によって支払われてきた平均利回りの3分の1でもあるのです。

しかし実際は、供給は需要に対し十分なものでないのが現状です。それは、戦時を除く期間に、西欧諸国や日本によって積み上げられた債務規模が、膨大なものとなっているにもかかわらずです。資金を管理する人々や企業の経理担当者は、銀行に余剰資金を置くことを避けています。それは、銀行がいつ破綻するかもしれないためです。そして、ユーロ危機が株式市場に及ぼしている影響を見ると、株式の購入も躊躇せざるを得ないのです。ビジネスへの投資は、ビジネス環境を信じなければできるものではありません。コモディティにおいても、中国の需要の先行きが明かでない現在、21世紀初頭のような安易さはありません。

こうして、世界の貯蓄は、通貨の代替であると同時に通貨と近い働きをする、安全であると思われる国の支払い義務を信用し、その国債をその行き先として選択しているのです。しかし、これらの国々は、戦時を除いて、記録的な規模の債務を保有しています。しかし、銀行とは異なり、少なくともこれらの国々は12ヵ月後に存在していると考えられているのです。

こうして需要が急増しているために、その供給を明らかに上回っているのです。そのために、先月末にドイツの2年物国債の利回りがゼロとなったり、米国10年物国債利回りが1.57%と低率となるといった、異常な状況を作り出しています。

ケインズ派の経済学者は、大きな政府は、この需要と供給の差を埋めるために、記録的な債務規模に積み増すべく、更なる国債を発行すべきたと考えています。

「現在の世界経済において明かな状況は、資産の逃避先としての、安全な(もしくは安全と考えられる)金融資産が十分にないということです。」とカルフォルニア大学バークレー校のBrad Delong教授は今年3月に述べています。そして、「それぞれの時代の米国政府は、世界経済に価値を与える、新たな国債を作り出します。」と続けています。

これを言い換えると、「大きく膨らんだ家庭の債務が連邦政府の債務へと移行しているのは、債務を制限するものではなく、プラスであると言えるでしょう。」とノーベル賞受賞プリンストン大学Paul Krugman教授はニューヨークタイムズに述べています。

多くの人々は、政府の公的債務が世界経済に価値を与えたということ、もしくは、債務にさらに新しい債務を積み増すことが経済の回復の助けになるというに概念に驚きを覚えることでしょう。しかし、このような概念を理解しかねる人々は、すでに金を購入し、過去数十年にわたり、公的債務規模が膨らむ中、当然のように上昇してきた金価格が、欧州債務危機によって金への需要は高まるはずでありながらも、下落するのを他の資産同様に受け入ざるを得ないのです。もしくは、米国債を市場で空売りするという選択もないわけではありません。

しかし、もしここで空売りをするようなことがあれば、Juggernaut(止めることのできない巨大な力)の前に歩み出しているようなものです。それはなぜかというと、「市場の自由」がもたらした5年前に始まった金融危機を恐れるがために、国債という、安全とみなされる国家の支払い義務へと資金は現在逃避しているのです。

それでは、これらの安全であると考えられている国々がその義務を果たせないことになった場合は、いったいどうなるのでしょうか...。

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エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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