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第一四半期金需給:金の需要は中国の需要増を欧米の投資資金流出で相殺し、供給量はリサイクル量と産出量共に増加

最新の金需給レポートによると、金の需要は今年第一四半期にOTC取引を除くと前年同期比5%減の1102トンとなっていたが、OTC取引*を含むと3%増の1238トンであったことが明らかとなった。
 
需要の詳細を見ると、世界最大の金消費国の中国の宝飾品、金貨、小型の地金の需要は、前年同期比12.7%増と、前週発表されていた中国黄金協会のデータと一致していた。
 
「しかし、欧米市場では、継続的な需要があったものの、利益確定の売却に相殺されていた。」とレポートは述べていた。
 
米国、ドイツ、スイス、英国、カナダにおける金貨と小型の地金の需要は、第1四半期に前年同期比40%減し、オーストラリアではゼロ、そしてフランスでは2四半期連続でマイナスとなっていた。
 
さらに、金を裏付けとするETF信託ファンド商品からの継続的な資金流出に加え、北米と西ヨーロッパでは、1月から3月までの間に合計84トン以上の金投資の売りがあったことから、貴金属専門アナリストのMetals Focusがまとめた鉱業団体の ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の新たなレポートでは、世界の金産出量とリサイクル量を合わせた供給量に6.8%追加するものとなっていた。
 
欧米の金ETF、金貨、小型地金需要 出典元 ブリオンボールト
そのような中、本来金産出量とリサイクル量で占める金の供給量は、1-3月期において2016年以降で最も高い第1四半期の合計を記録し、記録的な高値が中古品やスクラップのリサイクルに拍車をかけ、好調な鉱山生産高がこのセクターの通年の供給量を記録する勢いとなっていることが明らかとなっていた。
 
WGCが発表した数値によると、宝飾品と技術用金属の再販量は前年比12.5%増となり、世界的なコロナ危機の対応のために導入されたロックダウンが解除され、その危機的な経済低迷と当時の史上最高値の金価格の中で消費者が金を売却して現金を調達することが可能となった2020年第3四半期以来の高水準を記録していた。
 
一方、鉱山供給量は前年同期比4.4%増となり、2年連続で第1四半期の記録となり、2024年には2018年の通年のピークである3,656トンを上回ることを示唆することとなった。
 
カナダ、ガーナ、インドネシアでの産出量が2桁成長したことに牽引され、世界最大の鉱業国である中国の生産量も5%ほど増加していることからも、鉱山生産量の増加は、これまでのところ、欧米の上場会社の株式市場価値を押し上げるには至らず、2024年の現在までの上昇率は8.0%と、金地金現物価格の上昇率の半分に留まっている。
 
WGCが今週発表した金の需給動向のデータを作成しているコンサルタント会社である専門アナリストのMetals Focusは、「さらに良好な価格環境の中で...追加的供給増が今後1から2年の間に見られることになるだろう」と述べ、「主に北米が牽引している」と続けている。
 
金のリサイクル量と金産出量の推移 出典元 ワールドゴールドカウンシル
 
 
この最新レポートによると、2024年の第一四半期には、「ほとんど全ての市場や地域で(中古金流通量の)増加が見られた。」とのこと。
 
「しかし、(世界的なリサイクル量の)増加は、金価格の上昇から予想されるよりも緩やかなものであった」と述べており、タイでの急激な増加ですらも、まだ「パンデミック時のレベルを下回っている」一方で、第2の消費市場のインドやヨーロッパ全体では、「売り惜しみの報告はほとんどなかった」とのこと。一方で、欧米経済圏では、金貨や小さな小売投資用の地金の純需要が、金地金の利益確定の動きから減少しているとのこと。
 
WGCは、米国におけるリサイクル量は「僅かに増加したのみであった」とし、世界金融危機の際の金価格高騰の際の「cash4gold(金の現金化)」現象とは対照的であったとし、この春の新記録的な高値からも宝飾店が余剰在庫を売却したため、「小売の流れよりも取引の動きが上昇の背景にあった」と述べている。
 
しかし、世界第一位の金消費国である中国では、宝飾品の新規購入の鈍化を反映し、消費者の売却がより顕著に増加していた。実際、「一部の中小の加工会社は操業を停止し、休暇をとっていた」と 中国黄金協会は先週報告していた。これは、「急速に上昇する金価格が、購入希望者の間で様子見感を高めている」ためであり、中国の金貨、小型の地金、ETF、銀アプリ、投機的な金需要が急増しているにもかかわらず、宝飾品のサプライチェーン全体の需要が鈍化している。
 
金鉱会社の産出量に関しては、「新しいプロジェクトは長い鉱山寿命を持ち、コスト競争力がある傾向がある」とMetals Focusは述べている。
 
記録的な高コストでも、2023年の第4四半期には、業界の利益率は46.9%に達していた。しかし、S&Pグローバルのコモディティ・インサイトのアナリストは、今後5年間で欧米の大手上場鉱山会社のAll In Sustaining Costs(AISC)**が低下し、「将来の(株式市場の)パフォーマンスを上昇させるきっかけを提供する」と予測しているが、一株当たりの金生産量は、過去15年間でほぼ半減しているとMetals Focusは指摘している。
 
「いくつかの金鉱会社は、再び新しい株式を発行し、株主ん利益をさらに希薄化している」と述べている。
 
*OTC取引とその他のカテゴリーの数値は、データ入手が容易ではない中央銀行の需要も含む店頭市場の需要、商品取引所における在庫の変動、製造された在庫における統計上の残差も含まれる。そこで、総供給量と総需要量の差。
**鉱山の生産性を表す指標。採掘費用、精練費用、鉱区のロイヤリティなど生産1単位当たりに掛かる直接費の合計であるCash Costsに探査・剥土費用、閉山後処理費用を含むもの。

ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュ、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。

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