新たな金購入は過去21ヶ月で最高へ
1月に新規顧客による金購入は、2013年4月以来最高となりました。しかし、金相場上昇を利益確定時期と見た売却者数も急増し、金投資家インデックスは、過去5年間の最低水準へ留まることとなりました。ここで、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが解説しています。
個人投資家の金投資傾向を表す金投資家インデックスは、過去5年間で最も低い水準の昨年12月と同じ数値に留まることとなりました。そして、これは2015年の金投資への吹き込む向かい風を示唆しているかもしれません。
1月の金融市場や地政学リスクの高まりに関する主要メディアによる報道が、個人投資家にとって金を購入する良い機会と見えたと同時に、金相場上昇は、既存の顧客にとっては、金購入時期に応じて、利益確定、もしくは損切りの機会を与えることとなりました。
金投資家インデックスは、現物地金のオンラインサービスにおいては世界最大のブリオンボールトにおける個人投資家の実際の取引データを基に算出されています。
この数値が50の場合は、その月の購入者数と売却者数が完璧に一致したことを意味します。そして、金投資家インデックスは、2011年9月に71.7と最高値を記録し、2010年2月に48.8と最低となっています。
2015年1月は、前月から変わりなく50.5と、過去5年間で最も低い数値となりました。
これは、なぜなのでしょうか?2015年は、金相場の大幅な上昇で始まったのではなかったのでしょうか?昨今、地政学リスクは高まり、量的緩和やマイナス金利が再到来し、金融危機時のような混乱が起きつつあります。そして、金相場が暴落しバーゲンハンティング的金購入に投資家が殺到した2013年4月以来の高い水準で、1月には新規顧客数が大幅に増加しました。
しかし、これらのバーゲンハンティング的金購入を行った人々は、2011年から2014年の間に40%近い金相場の急落も経験したのでした。そのため、昨年11月から15%上昇した金相場は、未だそのピークからは低い水準であるのです。
そのため、2015年1月の金相場上昇は、多くの個人投資家は売却時期と判断したのでした。それは、トレーダーは利益確定をして再購入する機会とし、そして2011年以来の金相場の下げに落胆した投資家は、損切りの機会と見たのでした。
先月金保有量を減少させた全てのブリオンボールトの顧客において、保有する全ての金を売却した顧客は、現在15,000ドル以上の金を保有している顧客よりも、2倍近くが2013年の価格の急落中もしくはその後に初めて金を購入していたのです。
ブリオンボールト以外でも、似通ったパターンが見られます。米国造幣局では、1月の個人投資家やコレクターからの金貨の需要は、過去7年間で最も低い水準で、過去の最高を記録した2013年1月の3分の1に満たない水準であったとのことです。そのため、米国や英国の小売店は、マージンを切り崩し、かつて無い大きな割引を行っていました。
ブリオンボールトにおける新規顧客の傾向で顕著だったのは、150,000ドルをこえる多額の資金送金が多く見られたことでした。この規模は、平均的送金額の10倍であり、その送金数は昨年の月間平均と比較しても20%増となりました。
また、金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアにおいては、2011年夏以来の速いペースで残高が増加していました。
機関投資家が再び金に資金を移しているということは、バーゲンハンティング的購入をし、損切りをした個人投資家がその金を売却したというのは、再び間違いを犯しているということなのでしょうか?もしそうであるのであれば、2015年の金市場には向かい風が吹いていることを表しているのかもしれません。
先月初めてブリオンボールトへ資金を送金した顧客数は、2014年平均比較65%増となりました。しかし、重量においては、顧客保有の金の量は3ヶ月連続で減少しました。これは、金を売却して保有量を減らした顧客数も、前月比65%減で、2013年4月以来の高い水準となったためです。
ブリオンボールトのウェブサイトの顧客保有資産を表示するディリーレポートをご覧になって分かるように、ブリオンボールトで保管されている金地金の総量は、昨年10月の過去最高量であった、33.2トンから0.4トン(1.3%)減少しています。金価格は、この間上昇し、12月から1月までの2ヶ月間は、2011年8月以来2度目となる、ブリオンボールトの取引通貨(米国ドル、英国ドル、ユーロ)全てで月間価格が上昇しています。
価格が上昇し、需要が減少するというパターンは、金相場が30年来の規模で暴落した2013年初頭から続いている金投資の傾向です。これは、強気市場の傾向とはいえないでしょう。
弱気市場には何れ変化が訪れることでしょう。しかし、センチメントが弱気である場合、投資家はその市場から撤退することを考えてしまうのです。しかし、2015年初頭に、機関投資家は金投資への立ち位置を変えてきたようです。そのため、現在の市場の傾向にこだわること無く、金購入をした個人投資家の選択は、株式、債券、不動産が瀕しているリスクのための有効な保険であったと、後に証明されるかもしれません。